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第9話 夢の職業「探索者」

 ゴブリンキングを倒し、ユヅネと約束を交わしたあの日から一週間ほど。


「うおっ! 兄ちゃん、すげえなこの発掘物の量! 一体どこの者だい!」


「ふっ、今はただのしがない探索者ですよ。まあいずれ……」


「?」


「“最強”になりますがね」


「???」


 完全に決まった。


「……恥ずかしいです、優希様」


「なにっ!」


「は、はは……。面白いお客さん、だな」


 たしかに、おじさんも引き気味かもしれない。

 そう思うと急に恥ずかしくなった俺は、普段の態度に戻す。


「じゃあ、あの、売却……お、お願いします」 


「お、おうよ……」


「はあ」


 ユヅネの、少し微笑んだような顔でついたため息が場に行き渡る。


 ふと、周りを見渡してみれば、


「はいはい、今日は武器安くしてるよー!」

「そこのお姉さん、この装備なんて似合うんじゃないですか?」

「はい、承りました! ありがとうございます!」


 今日も大いに賑わっているなあ。


 ここは『ダンジョン市場(いちば)』。


 俺たちは、ここ一週間にダンジョンで得た魔石や素材を売却するべく、ダンジョンでの発掘物を取引するこの場所に足を運んでいた。

 

 あれからユヅネと共にダンジョンに潜り、俺たちは多くのダンジョン発掘物を得ていた。


 あの時は付いて来てしまったので仕方が無かったが、ユヅネも探索者カードを発行して正式にダンジョン探索が可能になった。


 もっとも、ユヅネは「探索者」ではなく「探索付随者」という立場。


 その違いは制限の緩さ。

 探索者にはランクごとに制限が設けらており、上位ダンジョンに潜るには功績を残さなければいけないが、探索付随者は制限がない。


 その代わり、付随者は報酬を受け取れないなどの決まりはある。

 よって、今ではほとんど付随者として資格を発行する者はいない。


 だが、ユヅネは「わたしの分も全て優希様の物になるとは、なんだか夫婦みたいですね!」とむしろ喜んでいた。


 俺もユヅネと一緒に暮らしていくので、互いに良い関係だ。

 ユヅネにとっては、ぴったりの役割だろう。


 そして、この一週間。

 俺はFランク探索者のため、規定によってF・Eランクダンジョンにしか潜ることが出来ない。


 しかし、今回はそれが逆に功を奏した。


「こりゃ、結構な額になりそうだなあ」


「まあ、人がいなかったので」


 一般的に、探索者専業で生計を立てるには、最低でもDランクは必要だと言われている。

 ほとんどのF・Eランクの者は兼業で探索者をやっているのだ。


 つまり、募集があっても集まりは良くない。


 俺たちはその人気の無さの隙を付いて、どんどんと効率よく短時間で攻略していった。

 それこそ一日にいくつものダンジョンをこなすペースで。


 その成果がこれだ。


「ほらよ、兄ちゃん。一つ一つの値段は高くないが、よくぞこんなに集めたもんだ」


 おじさんに手で促されたので、会計スペースに『探索者カード』をかざした。

 そこには、驚愕の数字があった。


「!!」


 探索者カードに付属されている D-Payダンジョンペイ

 今増えた額は、


「に、二十万!」


 俺にとっては超のつくほどの大金だぞ!

 F・Eランクダンジョンのみ、しかも一週間でこの稼ぎは相当凄い!


 これが本来の夢の職業「探索者」か!

 やったよ、天国の母さん、父さん……。


「ユヅネ、欲しい物はあるか?」


「お菓子をいっぱい!」


「よーし、わかったぞー」


 ユヅネを撫でてやる。

 こいつのおかげでもあるからな、たったの約九割ほどは。


 俺たちのやり取りを前に、おじさんは微笑ましい顔だ。


「ははっ、可愛い妹さんじゃねえか」


「妹というか……そうですね。可愛い奴です。ありがとうございました」


 関係については誤魔化したが、可愛いというのは本心。

 その言葉に、ユヅネはちょっと顔を赤らめて照れた。


「おう、今度も贔屓(ひいき)にしてくれよ!」


 俺たちは一礼をして、その場を後にする。


 そしてそのまま、人気(ひとけ)のないところまで歩いて来た。


 さてと。


「……いつものですか?」


 ふふん、悪いか。

 そう、いつものだ。


「ステータス」


-----------------------

ステータス

名前:明星優希


職業:なし


レベル:32


攻撃力:176

防御力:169

素早さ:171

魔力 :170


スキル:【遅咲き】


ギフト:【下剋上】

-----------------------


 おほー!

 うんうん、何度見ても素晴らしいね。


 F・Eランクの魔物相手なので、レベルは一つしか上がっていない。

 それでも、ずっとオール1だった俺には、何度見ても飽きないステータス。


 そしてどうやら、レベルが上がるほど、レベルアップした時のステータス上昇は大きくなるらしい。

 なので【下剋上】の効果もあって、たった1レベルでそれぞれ45程伸びたのだ。


 つまり、チンピラ達のレベル13(ぶん)ぐらいは上がったことになる。

 改めてすごいな、【下剋上】。


 最近は、こうしてステータスを覗くことが趣味だったりする。


 その度に「ニヤニヤして気持ち悪いです」と、横からユヅネの()のツッコミが入るのだが。

 

「優希様が嬉しければ、わたしも嬉しいです」


「そうか、この可愛い奴め。よし、次は……あ。まずい」


「どうされました?」


 しまった。

 魔石の売却は半分にするはずが、調子に乗って全部売却してしまった……。


「なんてバカな事を」


 最近うまくいきすぎて、完全に調子に乗ってたみたいだ。


「ふんふふんふ~ん、お菓子いっぱい食べられるかな~」


 まあ、いいか。

 隣で鼻歌を歌う、ユヅネの嬉しそうな顔を見てるとまた頑張れる。


 とりあえずお金は溜まった。

 また必死に集めた物を、次こそ()()()に持って行こう!


 そんな決意を持って、俺は今日も探索へと(おもむ)く。


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