表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/43

第42話 ギルドランク

今話より『第2章 名声』開始です!

どうぞよろしくお願いします!

<三人称視点>


 優希たちがユヅネを取り戻してから数日。

 彼らの最寄りのギルド協会にて。


「支部長、本部()より通知が届いております」


「……はあ、あのじじい共か。これだから嫌いなんだよな」


 本部からの通達に、協会関東支部長であり、優希の元親友の一条が(なげ)く。

 通知を届けたのは、こちらも優希の知り合い、協会に勤める「京子さん」だ。


「そう仰らずに。こちらです」


「ったく。……うん、うん。あーはいはい。まあ、そうだろうな。俺に責任が乗っかってくるわな」


 一条はざっと内容を流し読みし、予想通りだったことに納得する。


「いかがいたしましょう」


「ふむ、一旦置いといてくれ。あれに返事をしたところでまともなことにはならん」


「ですが……」


「いいんだ。ところで、あいつらの動向は?」


 一条が椅子を座り直し、京子に問う。


「はい。明星さん達でしたら、三日月さんとBランク昇格試験を行っているかと」


「はやいな」


 それなりに多忙であるがゆえに調べ切れてはいないが、一条はこの協会に来るたびに優希の様子を聞いていた。


「ふふっ。嬉しそうなお顔をされてますね」


「そんなわけないだろう。至って普通だ」


 京子に指摘された瞬間に、キリッとした表情に戻す一条。

 実際に彼の顔は緩んでいた。


「……ふう。やっぱり本部()にはジャブをいれるか」


「?」


 協会も一枚岩ではないようだ。







<優希視点>


「明星くん! 決めてくれ(フィニッシュ)!」


 パーティーリーダーの指示を受け、俺が前に出る。


「はいっ! はあああっ!!」


 思いっきり振るった剣はザシュン! と気持ちの良い音を立て、ボスの首を見事に切り落とす。


 夜香の大きな活躍もあり、無事ボスは討伐だ。


「君達、本当に強いなあ。これなら文句なし! どころか、またぜひ一緒に潜らせてほしいよ! てことで、協会には“合格”で報告しておくよ」


「「ありがとうございます!」」


 今回のパーティーリーダーである知的な男性、『安藤さん』にそう告げられる。


 ユヅネを含め、俺たちが潜っていたのはBランクダンジョン。

 俺と夜香は、Bランク本昇格のためのダンジョンに来ていた。


 そして、活躍を認められたので、今日からは晴れてBランク探索者となる。


「あんたら最近出来たギルドなんだって? 疑わしい気持ちもあったけど、これなら期待だね。ていうか、私達もうかうかしてられないんじゃないか?」


「おっとと。これは頑張らないとね、ははは」


 リーダーの隣のがっしりとした女性が、安藤さんを軽くどつく。

 女性は、安藤さんのギルドの副リーダーだ。


 今回の探索は、俺たち『マイベース・ライフ』と安藤さん率いる上位(ハイランク)ギルド『賢明の使徒』による、二ギルド合同で行われた。


 合計人数はユヅネを含めて十五人。


 Bランクダンジョンは、Cランク以下とは一線を(かく)す難易度であり、基本的には大型ギルド、もしくは複数のギルドで探索することが推奨されている。


 そうなれば当然、一人一人の報酬が減るのだが、難易度が高い分、発掘物の価値も跳ね上がる。


 結果的には、少人数でCランクに潜る場合とほとんど変わりはないのだ。


「では、帰りましょう」


「「「はい!」」」


 ギルドリーダー、か。


 安藤さんは一見少々頼りなさそうだが、ダンジョンに関する知識とずば抜けた対応力を持ち、こうして付いて来る者が大勢いる。


 目の前のこの光景が、安藤さんをギルドリーダーたる様を表していた。


 正直、ノリと勢いで創設してしまったばかりに、今の俺にはギルドに関する知識もそれほどなく、イマイチ“リーダー”というものを掴めていない。


 自惚(うぬぼ)れではないが、一対一なら安藤さんにも勝てるとは思う。

 それでも、ギルドリーダーとしては安藤さんの方が圧倒的に上だ。


 単純な強さだけではないんだな。


 今回の安藤さんのような人柄の良さ、チンピラ達の時にお世話になった佐藤さんのように周りを見る力……。


 リーダーにも色々形がある、と改めて勉強になった一日だった。







 協会で探索者カードをBランクに更新してもらった後、俺たちはいつものように外食に行く。


 今日()昇格した日なんだ、たまには良いだろう。

 

 え、いつもじゃないかって?

 細かい事は気にするなよ。


 でも、今はそれどころではなかった。


「ギルドランクかあ……」


「あんたって結構、分かりやすいわよね」


 まだ料理の来ていない机に(あご)を乗せていると、向かいの席に座る呆れたような目をした夜香からツッコミが入る。


 ちなみに、俺の隣はもちろんユヅネだ。

 あのキョウガとの一件以来、ユヅネは片時も俺の傍を離れようとしない。


 そして、ここは行きつけの焼肉店。

 そう、いつもの焼肉店だ。


 おっと、夜香との会話に意識を戻すか。


「まさか、ギルドにもランクがあるとは……」


「これならば、優希様もわたしも、大人しく誘われた大型ギルドに入っておくべきだったのでは……」


「私の立場わい」


 夜香のツッコミを完全にスルーするほど、俺とユヅネは()えていた。


「そもそも、普通設立の時に色々説明されない?」


「ユヅネ」

「優希様」


「お前ら絶対に聞いてなかったな」


 はい、仰る通りでございます。


 俺たちは協会にギルド設立の申請を行った際、あまりにもあっけなくそれが通ったことでうかれてしまい、(ろく)に説明を聞いていなかったらしい。


 これで俺たちもさらなる金持ちだ、と。


「この先、こんなのがリーダーで大丈夫かなあ……」


 頬杖(ほおづえ)をつく夜香に対しては、


「すみません」


 俺は謝ることしか出来ない。


「……まあでも、一から駆け上がっていくのも悪くはないかな」


「お! そうだよねー!」


「はあ、ほんと調子良いんだから」

 

 なんとか助かった、かな?


「じゃあ説明するわよ」


「「お願いします」」


 頭を下げた俺たちは、改めて夜香から『ギルドランク』について説明してもらった。


 現在、俺たちのギルドランクは一番下の『駆け出し(ビギナーランク)』。

 創設から間もないので当たり前だ。


 ランクは全六段階あり、一番上は世界で数えるほどしかいないという『グランドマスターランク』。


 その間は、順に駆け出し(ビギナーランク)下位(ローランク)中位(ミッドランク)上位(ハイランク)、マスターランク、グランドマスターランク、となっていくそう。


「中々に果てしない道のりだなあ」


「そうね。基本的には探索者個人の“探索者ランク”と同じように、納品でポイントを溜めていけば上がっていくわ。けど、一つ違う点があって」


「それは?」


「『ギルド依頼』っていうシステムがあるの。商人なり企業なり、あとは大手になれば直接協会からも、ギルドに依頼されることがあるのよ」


「ほうほう」


 協会で何度か見かけたが、俺には関係なさそうと思ってスルーしていたあれか。


「それを達成することで、ギルドランクにはポイントが入るわ。ランク上げの手段が増えるってことね。まあ、ギルドは大人数前提だから、探索者ランクよりも遥かに上がりにくいんだけどね」


「なるほど」


 概要は分かった。

 そして、俺がやってしまったことも理解した。


「だからみんな、すでにギルドランクが高い大手にいくのか~」


「そうよ。大手は企業スポンサーだったり、国からの支援なんかで、えぐいほど金が入ってくるからね。ようやく分かった?」


「はい……」


「ちなみに、あんたが断った『未開を求む者(アトランティス)』はマスターランクギルドよ」


「がーん!」

「ががーん!」


 俺に続いて、ユヅネも声に出してショックを受けた。

 そりゃあそんなとこに入れば、がっぽがっぽですからなあ。


「けど、私は感謝しているわよ」


「?」


「こんなならず者を入れてくれるところなんて、他にはないからね」


「……そうだな」


 ノリでショックを受けたりしているが、俺は後悔なんて一切していない。

 そんなことよりも、マイペースに、俺たちのやりたいようにやりたかったんだ。


「そうだな、って失礼ね!」


「自分が言ったんじゃん!」


「これもらいますねー」


 俺と夜香がわーぎゃーしている内に、ユヅネはぱくぱくと肉を口に運ぶ。


「それ私の!」

「それ俺の!」


「知りませーんだ」


 ま、なんだかんだこれで良かったんだよな。

 他のギルドに行けば、三人でこんなくだらないやり取りも出来なかっただろうし。


 だがそんな中で、夜香が一つ真面目に口を開いた。


「でも……そうね。もう少し欲しいかも」


「なにが?」


「探索者」


 この夜香の一言から、次の目標が定まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ