異世界転生し公爵の家督を継いだブスの私。ヒロインでも悪役令嬢でもないのに勝手にイキられ自爆されるのだが……
私は前世男だった。それは覚えている。
そしてブスをブスと言って泣かせてしまった為に、罰としてブスになって産まれたのだと、この祈祷師は言っている。父はこの無礼な祈祷師に憤怒し国外追放した。これは事実無根だ。私はそんな事言っていない。
ともあれ、私は神仏を信じる訳ではないが、事実転生しているので、つまりは仏教的に輪廻転生して修行しなおせと言う事なのだろう……か? 理由はさっぱりわからん。なので考えるのを私は止めた……。
最初、帝国軍元帥の父は男子を欲しがって残念がったが、以降の意味で結果オーライ。滅茶苦茶可愛がってくれて私は厳しい訓練の中すくすく育った。
最終的に私の背は196cmに。体系はぽっちゃりと言うか筋肉質で、顔面は四角い。これでもまだ年頃な16歳である……。
しかし生理痛は想像を絶する程私をイラつかせ、訓練で勢い余ってソードマスター幾人を素手で叩きのめしてしまい、無事“女オーガ”の渾名を授かる……。
父は喜んだ。女の子なのに“その内、髭がはえだすぞ!”とか言いふらしていて迷惑している……。
そうして晩婚高齢出産だった両親は安心して早々に隠居し、無理やり元服させられた私は公爵家の家督を継ぐ事になった。
なんと帝国至上初の女元帥で、史上最年少の元帥なのだと言う……。
そんなこんなで超有名人になってしまったと思っていたのだが、事件は起きた。
「貴方の彼氏なんだけど、私と結婚するの。しかも私のお腹にはもう跡継ぎもいるわ! あなたはもう用済みよ? 早くこの屋敷から出て行きなさ~い!」
上から目線でニタァ~と笑う鼻につく淑女。隣の紳士は取り乱している。当たり前だ。私は淑女に言い放つ。
「そいつ、私の彼氏じゃないんだけど……」
「……え?」
「誰だと思ってたの?」
「え……公爵様じゃ……ないの?」
隣の紳士は叫んだ。
「い、今すぐ謝れ! 土下座しろ! 早く!」
「な、なんでよ!? 私は名門ビッグモンド伯爵家の女なのよ!?」
「ば、馬鹿! 早くしろ! 彼女が誰だかわかって言ってるのか!?」
「な、なによ!」
はぁ~……。私は深く溜息をついて言った。
「いいよ、今回は見逃す。ただし教育はしっかりしなさい」
「──か、畏まりました! 閣下!」
淑女は訳がわからないと叫び散らす。
「はぁ? なんで!? なんで謝らなきゃいけないの!? 何で何で!?」
「何度も言ってるじゃないか! 俺は公爵様じゃないって! 俺は何度もウッドスプーン子爵だって!」
「はぁ~~~!? 子爵ぅ!? 格下じゃない!」
「そうだよ! もう100回位言ってるのに君が聞く耳持たずに無理やりっ!」
無理やりかよ、何がどうなって……。私は頭をかく。
「それに彼女は帝国軍元帥、泣く子も千尋の谷に突き落とす、譜代の名門ムスケリオン公爵のガブリエラ様だぞぉぉぉ!!」
「…………う、うえぇぇぇぇえええええっ!? うぇぇぇえええ!?」
頭を抱えるビッグモンド伯爵家の御令嬢。若さゆえの過ちか? どんだけ家庭教師の授業をさぼったんだよ……。16歳の私が言えた話ではないが、この御令嬢は相当アホだった……。それに、私は泣かなくても子供は千尋の谷に突き落としません。
ともあれ、以降ビッグモンド伯爵家、ウッドスプーン子爵家両家総出で私に盛大に詫びて来る事に。無論ビッグモンド伯爵家は思わぬ出来ちゃった騒動に激怒し、ウッドスプーン子爵家は淑女に冷ややかな視線を送った。
二人はその後仕方なく結婚したらしいが、結局夫婦仲は険悪。両家は厳格に話し合って、現在教皇様に離婚許可をお願いしているらしいとの事。産まれた子の親権はどうなるのだろうか? 両家はいずれ、私がその子の養育後見人に是非なって欲しいとぬかす。
正直断りたい……。そうだ、両親の所へ送ろう。
──と、言う具合に、私はヒロイン属性でも悪役令嬢属性でもないのに勝手にイキられて、勝手に自爆される悲劇の女公爵帝国軍元帥なのである。
そんな私の名は、ムスケリオン公爵のガブリエラ。以後、お見知りおきを。
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