戦いの始まり
最初の、『桃園の誓い編』、書くのがめんどくせえから、先に黄巾の乱編書くわ!!
でえ丈夫だ!!!!後で書く!
でも黄巾の乱編の方がずっとおもろいよ!!
ーー184年・并州の港ーー
并州。
中華で最北端の州であり、漢民族、匈奴、高句麗などの様々な民族が約400年に渡って争いを続けている。
馬の名産地であり優秀な兵士を多数輩出している、後漢王朝の異民族対策の第一防衛ラインだ。
また、黄河に面しており、洛陽とも近いため物流が活発であり、日夜数千の武具や食料が取引されている。
その物流の拠点であるこの港は、とても活気にあふれている。
筋骨隆々とした男達が荷物を運び出し、港町の露店街は賑やかで、多種多様な物品が売られている。
今日は気持ちの良い晴天で、黄河の濁流の上を水鳥が群れをなして飛んでいる。
ある男は新鮮な野菜を売り、ある男は白銀の剣を売り、ある男は青銅の壺を布で拭いていた。
大量の物資を運ぶ洛陽船は広大な黄河流域を駆け巡り、住民の生活を支えている。
後漢王朝は腐敗の真っ只中なものの、ここにはまだその手が伸びていないらしい。
もちろん黄巾賊の襲撃などもあるが、それは他の州とは比べ物にならないくらいの精鋭騎馬軍団が難なく防いでいるのだ。
そして、この港には輸送船の他にもたくさんの種類の船が来る。
例えば、人を運ぶ船なども。
港の船の乗り場では、数十人の従業員がそこらじゅうを右往左往する中、一際目立つ二人がいた。
一人は14歳くらいの、身長146センチくらいの幼い少女だった。
容姿は腰まである長い艶のある銀髪で、薄桃色の小さな唇に白く柔らかそうな肌、宝石のように輝いている瑠璃色の瞳、スッと通った鼻先にぞくっときちゃいそうな顎のライン。
その頭頂部の可愛らしいアホ毛は黄河流域の風に揺れていた。
服装は灰色の煤けたローブを着ており、その下には小さい漢服と半パンを装備。
腰には子供用の実剣が。
ローブさえ綺麗であれば完璧とも言えるほどの美少女は、何やらこれからの船旅にワクワクしている様子だった。
彼女の名は李粛。
字は季文。
并州五原郡の出身で、并州の騎馬隊の副団長にして并州刺史・丁原建陽の部下である。
もう一人は青い模様の無い漢服を身に纏い、腰には日本刀のような刀を下げた、無気力な目をしたツンツン頭の青年だ。
身長はこの時代では異次元の196センチはある。
彼は李粛とは対照的に、つまらなそうに後頭部をポリポリとかいている。
李粛はクルクル回りながらはしゃいだ声で叫んだ。
「見てください呂布さん!!海ですよ海!!」
その声に呂布と呼ばれた青年は気怠げにこう返す。
「海じゃなくて黄河、つまりただのでけえ河だ。てゆーか、河ではしゃぐって、李粛、お前21歳だろーが」
間違いを指摘された李粛の顔はみるみるうちに真っ赤になり、そして直後に言い訳のように言葉が出てきた。
「ふえ!?えっ、いやっ、知ってます!!呂布さんを試したんです!!」
「はいはいそれはご大層なことで」
「あっ〜!!無視しましたね!!軽くあしらいましたね!!ぶん殴ってもよろしいですか!?」
足元でギャーギャーと喚く李粛の頭を片手で押さえつつ、呂布は遠くの露店に目を向けていた。
干し葡萄などが吊るされている、現代でいうところのスイーツ屋に近いか。
彼は李粛に脛をポカポカ優しく蹴られながらその干し葡萄を売っている店へと歩み寄り、店主に金を払って一房購入。
甘い匂いのする干し葡萄を一粒毟り取り、涙目になって暴れる李粛の小さな口へその干し葡萄をねじ込む。
「これでも食っとけよ」
「人の話をーーむぎゅう!?」
李粛の口の中から干し葡萄を摘んでいた指を引っ張り出して、呂布は呆れたようにため息をついてから、
「・・・・美味いか?それ」
「・・・・あと八粒ください」
甘党で少し甘えん坊なのが李粛の特徴だ。
追加で八粒干し葡萄が押し込まれる。
李粛は幸せそうな顔でムグムグとその白くてプニプニしてそうな頬をハムスターのようにしながら干し葡萄を味わった。
干されて凝縮された甘みが口いっぱいに広がり、自然と怒りが和らいでいく。
海の荒波が落ち着くように、地震がおさまるように、スッと。
あまりの美味しさに感想を漏らした。
「・・・美味しいです。怒りも収まりました」
「それは良かった」
二人は適当な会話を終えて船を待った。
ー
呂布。
字は奉先。
并州五原郡出身の丁原配下の武将。
その武勇は『万夫不当』と称されるほどであり、また、春秋戦国時代の武人・李広になぞらえられて『飛将軍』とあだ名だれる。
李粛とは親友の間柄で、8歳の頃からの付き合いである。
呂布が腰に下げている日本刀のようなフォルムをした刀の銘は『紅華』。
人類史上最高レベルの至上の逸品だ。
その切れ味山脈を裂くと伝えられている。
呂布奉先は今、親友の李粛と共に客船の部屋にいた。
四畳くらいだろうか。
木造の部屋にベッドが二つ。
小さい机には水の入った水筒が置かれており、部屋の隅には二人の刀が壁に寄りかかっていた。
暖かい風が窓から吹き込み、ベッドに寝転ぶ彼の漢服を揺らし、ただし静かに、船全体を包み込む。
李粛は買い込んだ饅頭を貪りながら、上層部から届いた手紙に目を通していた。
彼らはただ単に遊んでいるのではなく、仕事をしているのだ。
黄巾賊は太平道という宗教団体の信徒が暴徒化したものと言った。
その太平道を仕切っている張角という男に話をつけ、宗教内でも黄巾賊への対策準備を要請するというなんとも下っ端らしい仕事である。
ちなみにこの話は数年前からあるものの、後漢王朝の官僚らの何人かが太平道と癒着しているため進展しなかったのだ。
「・・・腐り切ってますね、僕たちの国・・・」
李粛はそう呆れたようにため息をつき、指についた餡子を舌で舐めとる。
ねえおじさんも君のこと舐めていい?
太平道の本拠地は涼州。
并州から船で一週間はかかる距離にあり、中華最北端の土地である。
涼州は并州以上に異民族との抗争が激しく、当然それと戦う駐屯している兵士たちも強者揃いである。
まあいくら兵士が精強でもそれを動かす政府が腐り切っているので話にならないのだが。
李粛と呂布は下っ端である。
現代の感覚で言うとパートみたいなものだ。
しかし流れてくる仕事というのは最前線で体を張るような辛いもの。
お偉いさんは自分たちの仕事の結果を安楽椅子に座って待っているのだ。
呂布はベッドから起き上がって、
「そして俺らは国を腐らせている奴らの犬畜生と来た
彼はそこで一旦言葉を区切り、李粛のそばにある皿に盛られた饅頭を一つ掴んで口に放り込んだ。
「結局俺らも同じなんだよな」
その言葉に李粛は唇をきゅっと結び、押し黙った。
なんでこの人は自分と違って才能に恵まれているのにこんなにも野心がないのだろう。
そう思った。
「とにかく、李粛、『交渉』の準備は?」
「出来てますよ」
李粛は得意げに笑って胸から梱包された何かを取り出した。
絶対いい匂いしそうだね、それ。
あれ?今一瞬李粛たんの胸板がチラッと見えた気がするんだけど、幻覚かな。
彼は梱包を解いてその中身を呂布に見せた。
それは剣だった。
柄が金色で龍と虎の彫刻が彫られており、刃は対照的に銀色で、五つの宝石が埋め込まれていた。
えも言われぬ神々しさを放つ短剣の銘は、『蝋楽』。
1000年前の春秋戦国時代の名刀である。
これが張角との、『交渉材料』である。
ー
涼州・太平道本拠地道場
「おやまあ、また交渉ですか?」
簡素な物置の中で、青年は部下に対して問うた。
その青年は狐のような目をしており、長髪で細身な優男だった。
彼こそが、太平道教祖・張角である。
彼は齢十九の頃に、山菜採りの最中、南華老仙という仙人と出会い、あらゆる妖術や儀式の方法が記された書物を受け取った。
二十の時に太平道を開き人々の信仰を集めて、妖術を以って人々を救っていた。
伝令の信徒は続けて、
「はい、張角様。四日後に張角様が要求した宝物を持って参上するとのことでございます」
「ご苦労。だが私は役人と話すのは少々気分が悪い。弟の張宝に変わりをさせなさい」
張宝は二人いる張角の弟の一人である。
彼もまた妖術を扱える、神算鬼謀に富んだ策士である。
交渉人としては張角以上の実力を持つ彼に任せれば必ずうまくいくだろう。
そして、戦争も。
伝令は礼を一つして蔵から去り、本道場のところへと戻って行った。
ー
時刻は午後6時。
徐々に夜空が広がっていく時間帯である。
しかしまだ全然明るい。
当時は夜に光を灯す機材はそこまでなかった。
松明が一般的だったらしいが、火事のリスクが高すぎるし、固定もできない。
今では当たり前のように普及している蝋燭は技術的に製造可能だが、当時はまだとても高価で、とても庶民や下っ端役人が買えるようなものではなかったのだ。
現代人が夜にやっている入浴や食事も、この時代では午後6時や午後7時位のまだ明るい時間帯にするのが当たり前だった。
客船の中の一室で、今まで本を読んでいた李粛は窓の外の光景を見てふと呟いた。
「もう夜も近いですね・・・僕お風呂に入ってきます」
「なあ李粛、この船に浴場なんてねえぞ?」
「マジですか」
「加えて言おう、この部屋に風呂場はない。あるのは身体拭く用のタオルと桶だけだ」
「それはつまり・・・」
その言葉の意味を理解した瞬間、李粛の体の隅から隅までが真っ赤になった。
恥辱100%の赤面である。
美少女がこういう顔をすると興奮しちゃうなあ。
「ぜっぜぜって絶対振り向くな!!」
「大丈夫だ問題ない。この超絶紳士呂布奉先そもそもお前を女として見ていない」
「〜〜〜〜っっっ!!??」
言葉にならない叫びをなんとか喉元で押さえつけながら、行き場のない怒りを震えとして外へ出していく李粛。
だが外に出た怒りもすぐに補充されていく。
彼女は試しに自分の身体を見下ろしてみる。
低身長で細い身体、申し訳程度の胸、貧相な脚。
まるで子供だ。
身体的にも精神的にも。
(「ぐうの音も出ない・・・!!!!)
一方呂布はさすが紳士。
ちゃんとそっぽを向いてあげている。
というかそもそもとして興味がない。
李粛はもう二十二だ。
もうちょい育ってもいいはずだが、14歳からなにも変わっていない。
まるで成長が止まったかのように。
ボケーと夕陽を眺めていると、背後から物音がする。
扉が開き、部屋の外への足音、チャポチャポと桶の水が揺れる音、桶を床に置く音。
そしてローブのボタンを外し、ベッドの上に置く音、スルスルと漢服を脱ぎズボンを下ろし下着を以下略。
李粛は長い銀髪を纏めると、タオルにお湯を染み込ませて絞り、自分の白く細い腕をそっと撫でる。
部屋にはタオルで身体を拭く音だけがなり、二人は沈黙していた。
その沈黙を気不味いと感じたのか、呂布はふと呟いた。
「これから戦争になるな」
その呟きに、李粛はピタリと手を止めた。
「どういうことですか?」
「漢王朝ももう寿命だ。少なくとも俺らが生きている時代には必ず乱世が来る。誰が天下を取るかじゃねえ、『どう生き残るか』だ」
「呂布さんは天下取りに参加しないんですか?」
その問いに、呂布が自嘲げに笑う。
まるで、自分にそんなことができるはずがないと言う様に。
「・・・俺はただ、守りてえモンを守りきれれば満足だ。そのためだったら、主君だろーが身分だろーがどーだっていいさ」
李粛は静かに、だがはっきりと聞こえる様に言った。
「・・・一つだけ、お願いしてもいいですか?」
「なんだ?」
「絶対に、死ぬんじゃねえぞ」
「お互い様だ、馬鹿野郎」
二人の旅は続く。
そして、洛陽では一人の男が重い腰を上げた。
彼は洛陽の夜景を肴に酒を飲みながら、うんしょと立ち上がると、口元を拭ってから、短く、はっきりと、天下に宣言した。
「もうそろそろで始まりやがるな、乱世が・・・」
漢は吸うと大きく息を吸う。
そして、
「いつか、この曹操孟徳が、この大地を掴んで動かしてやらあ!!!!!!」
読んでいただきありがトウソテウティス。
後、呂布の声は杉田智和さん、李粛は小原好美さんで脳内再生するとめちゃくちゃいいお