表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の戦士  作者: ハシバミの花
第五章 流転
143/176

〈二十〉星月夜

 最後の夜。

 邑人たちは、それぞれの思惑を胸に、天幕の中の闇を見つめている。

 ラシェやヨッカといった、親密な者の身を心配する者たち。

 ソワクやラハムのような、来たる未来に考えを馳せる者たち。

 カバリやその手の者のような、カサたちに対して善からぬ感情を持つ者たち。

 エルやコールアのような、複雑な思いを持つ者たち。

 そして渦中のカサ。


 カサは、緊張に混乱する頭の中を、何とか整理しようとしている。

 恐れがあり、懸念があり、そして心残りがある。

 それらを処理できないまま、最後の夜になってしまった。

 もはや猶予は無く、明日朝には邑を発たねばならない。

――ラシェ……。

 涙にくれるカサの愛しい恋人。

 彼女の無事を願い、カサは長い夜を思い悩む。



 同時刻、ガタウの天幕。

 今日まで永く雌伏しつづけた男の、最後の情念。

 誰にも明かさず、内に秘めつづけた消ええぬ炎の残り火を、ガタウはついに燃やす機会を得たのだ。

――………。

 脳裏に誰かの名が浮かび上がりそうになる。

 女の名だ。

 だがその印象が、はっきりとした形を取る事はない。

 もう何十年も、ガタウはその女を記憶の壺に押しこめ、封をして生きてきた。

 巌のような彼の精神が、遥かな過去に愛した女などもはや思い出す事はないであろう。

 それがガタウという戦士であり、選んだ生き方なのだ。


 天幕の外で月が昇る。

 弱い光で、砂漠をあまねく照らしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ