〈十一〉狩り場の日々
日々は、狩りに追われるものとなった。
戦士たちは、狩り場を更に奥へ奥へとつめてゆく。それに従い獣も大きくなり、遭遇の頻度もましてゆく。
最初は赤ら顔でおそるおそるついてきた新参戦士たちもやがて要領をおぼえ、少人数(二十人程度)での狩りにもなれた様子で交じるようになった。
中でも出色なのはやはりヤムナである。
身体が大きくもの覚えも早いヤムナは、小動物の狩りなら一人でこなせるようになっていた。
さすがにまだコブイェックの狩りには参加させて貰えないが、熟練の戦士たちも、その働きぶりには一目置くほどだった。
日ごとに評価が上がる姿を、カサやその他の新米戦士たちはまぶしげに見つめている。
ヤムナはいつしか、彼らの誇りそのものとなっていた。
同期である事を誇りに思い、ヤムナが話しかけてくれば、誰もが顔を上気させて応える。
カサはその様子を遠巻きに見つめていたが、ヤムナに羨望の視線を向けるようになると、ヤムナも以後カサを小莫迦にするような態度は慎むようになった。
屈服させた、と見たのであろう。ヤムナは生来支配欲のつよい人間だ。屈服させてとりこむ、それがヤムナの人間関係の構築法なのだ。
ある時カサは、ブロナーにヤムナをどう思うか、聞いてみた。
「良い戦士だ。いつか立派な戦士長になるだろう」
と言い、しかし
「やや鼻持ちならん所もあるな。それで悶着を起こさねばよいが」
そう懸念すべき点もある事をつけ加える。
これには少し反発心がわいたが、もちろんブロナーに言いかえしたりはしなかった。
ただもやもやとしたものが頭の中に残り、ブロナーの言う「鼻持ちならない」部分について、いろいろと考えもした。
時は戦士たちの上を、順風に通り過ぎているように思えた。
だが抜けるような空を魅入られたように見上げるカサたちの足元で、凶暴な真っ黒い顎が血に飢えた口を空けて待ち受けていた。