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砂漠の戦士  作者: ハシバミの花
第四章 邑衆
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〈三十五〉抵触

 カサが槍の訓練をしていると、一人の男の子が寄ってきた。

 十歳前後だろうか、はにかみながら、こちらを見ている。カサの周りには、他にも子供がいたが、その子だけ目についたのには、理由がある。

 サルコリだったのだ。

 一目見て判る、ラシェが着ているようなボロに近い衣服。

 周りにいる子はみな仲間がいるのに、その子だけ誰とも遊んでいなかった。

 カサは手を止める。

 その時ちょうどガタウはおらず、やや早い休憩をとる事にした。

 カサは少年の傍にゆき、話しかける。

「どうしたの? こんな所に来て」

 少年ははにかむ。

 通常サルコリは、邑には近寄らない。

 カサたちのいるこの場所は邑から少し離れているが、サルコリが近づくような場所ではない。

「君は、サルコリだね」

「うん」

 少年はうなずく。

 涼しげな色の、綺麗な目をしている。

 カサは気がついた。

「君は、カリムかい?」

 少年は嬉しそうに、何度もうなずく。

「僕は、カサ」

 少年、カリムはうなずく。

「僕の事、知っているの?」

 うなずく。

「お姉さんに聞いたの?」

 うなずく。

 カサはなんだか嬉しくなり、カリムを抱き上げる。

 遠巻きに見ていた子供たちが、僕も私もと寄って来る。

 不用意にみなの前でカリムの姉の話をしてしまったことに気づく。カサは少し考え、

――どの道ウハサンに知られてしまっているし、今さら子供に知られても、何を困るっていうんだ。

「みんな。この子はカリム。僕の知っている人の弟なんだ」

 カサ開き直って言う。

 子供たちは戸惑っている。

 カリムは、どう見てもサルコリである。

 大人たちから、サルコリは穢れているから話しても近寄ってもいけないと言われているのだ。

 カリムも戸惑っている。

 同じように、ベネスに近づいてはいけないと言われていたからだ。

 だがこの日、カリムはここに来てしまった。

 姉が毎夜、寝る時に話してくれる戦士、その物語の主人公、カサをどうしても見たくなってしまったのだ。

 カリムも、カサがカリムを知っていた事に驚いている。

「ねえ。僕は今ちょっと手が離せないんだ。みんなカリムと遊んであげてよ」

 子供たちはしばらく迷っていたが、利発そうな年長の子が一人、

「いいよ」

 と言いだすと

「うん」

「遊んであげる」

 すぐに連なる。カサはカリムを下ろし、

「いっておいで」

 そう言うと、カリムは子供たちの輪の中に入ってゆく。

 小半刻(三十分弱)もしないうちに、カリムはみんなと仲良くなり、カサはホッとする。

――あとで送ってあげなくちゃな。

 ラシェに会う理由ができたような気がして、のん気にもほんの少し、胸が躍った。

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