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8話 剣聖と竜騎士の落ちて行く日々1

総合日間11位とジャンル別日間5位になりました!

読んでくださる皆様のおかげです!ありがとうございます!


 国王の前で、片膝を突き頭を垂れる。


「よくぞあの難題をこなした。褒めてつかわす」

「勿体なきお言葉、感謝いたします」

「さすがは我が国を代表する最強のパーティーだ」


 剣聖のジュリエッタが返事する。


 俺はその後ろで、いちいち挨拶がなげぇんだよクソジジイ、などと考えていた。


 どうしてこう王族や貴族ってのは話が長いんだ。

 気が短い俺には耐えがたい時間だ。


 この先も同じことが続くと思うとうんざりする。


「さて、貴殿らに悪い知らせがある。先日、ダルハバス国のオーブが魔族によって破壊された」


 謁見の間がざわつく。


 ジュリエッタやアイラにエマも動揺していた。

 反対に俺は、興味がないので特にリアクションもとらなかった。


 オーブってのは邪神の力を封じた石だったはず。


 それが全て壊されると邪神が復活するって話だ。


 邪神がヤバい存在ってのはそこらのガキでも知ってる。

 千年前にも復活して、この大陸は至る所で地獄と化したってな。


 けど、実際に見たわけじゃねぇし、まだ復活もしていない。


 そんなのにびびってもな。


 つーか、今の時代には俺がいるから余裕じゃね?


 天才にして最強の、このライ様にかかれば、邪神なんてクソ雑魚だ。

 むしろ封印を解いて殺してやってもいい。


 何やっても死なねぇ邪神をぶっ殺せば、一瞬で伝説だ。


「ですが陛下、オーブはまだ四つあります」

「うむ、そこで其方達に頼みたい。我が国のオーブを守り、邪神の復活を阻止してもらえぬか」


 ジュリエッタは「御意」と返事する。


 ようやく話が終わった、と思ったところでジジイが妙なことを言い出した。


「ところで、連れていた青年はどうした」

「あの、誰のことでしょうか」

「一緒にいただろう、アキトという青年が」


 俺達は顔を見合わす。


 国王がたかが荷物持ちに興味を示すなんて珍しい。


 ぶっ殺したあいつは、冴えないどこにでもいそうな愚図だったはずだ。


 ジュリエッタは数秒ほど黙り、恐る恐る答えた。


「なぜ気にされているのでしょうか」

「余はあの者をいたく気に入ってな。ほれ、以前庭の池で我が娘が溺れかけたことがあっただろう。あの者は真っ先に飛び込み助けてくれた」

「そ、そのようなこともありましたね」

「アキトはどうした? 幼なじみだったのだろう?」

「彼は……パーティーを抜けました」

「抜けた?」


 国王は眉間に皺を寄せ、怪訝な表情となる。


「残念だな。貴殿とあの者の恋路を密かに応援しておったのだが」

「私とアキトを、陛下が……」


 彼女は震えるような声で返事をする。


 なんなんだ。

 もしかして殺したらヤバい奴だったのか。


 とにかく念の為に、こいつら三人にはあのことを口止めしとくか。



 ◇



 テーブルに足を乗せて酒を飲む。

 で、空いている片手は女の肩にのせる。


 俺のいつものスタイル。


「あの反応、明らかに良くないよね」

「黙ってればいいんじゃね。ぶっ殺したのはバレてねぇみたいだし」

「でも、陛下はアキトのことを気に入っていたみたいだし」

「うるせぇな。だったら殺さなけりゃよかっただろ」

「だってそれはライが!」


 はぁ? 俺がなんだ?


 つーか、俺は提案をしただけだろう。

 ベッドの上で「あいつ邪魔だから殺したらすっきりすんだろ」って言っただけだ。


 てめぇはよがりながら「そうする♡ アキトはもういらない♡」って自分で決めたんだろうが。


「アタシは殺すのは反対した。確かに足手まといだったが、それなりに役にはたっていたからな」

「雑用は優秀だったものねあの子。でも、相思相愛だったはずの幼なじみを殺すなんて、ひどいことするわよねぇ」

「だからそれはライが!」


 アイラは反対をしたと主張。

 エマは無関係を装う。

 ジュリエッタは責任転嫁。


 だんだんイライラしてきた。


 んな話どうだっていいんだよ。

 死んだ足手まといのことなんか。


 俺はテーブルを蹴り飛ばす。


 それだけで三人はびくりと震えて静になった。


「とりあえずオーブを守るぞ。死んだ奴のことなんかで、ごちゃごちゃ揉めるな。じゃないともう抱かねぇぞ」

「ごめんなさい! もうあんなことは言いません!」


 ククク、ちょれぇ。

 俺の前では女は簡単に股を開いて従う。


 ただの冒険者から国家を代表する英雄になったし、そろそろ俺の名を轟かすでかい活躍でもして、金やら爵位やらもらって女を抱きまくるか。


 世界が俺を中心に回っているってことを、世の中の馬鹿共はもっと知るべきだ。


 あー、気分が良くなってきた。

 宿に戻ってこいつらで気持ちよくなるか。



 ◇



 国王の話では『封印の神殿』という場所に、オーブは収められているらしい。


 ただ、面倒なことにその神殿は、険しい山の山頂にあるということだった。


「はぁ、はぁ、くそっ、なんで山なんか登らねぇといけねぇんだ」

「でも登らないとオーブを守れないし……足が重い」

「どうせすぐには魔族も来ないし、最初はジュリエッタだけでよかったんだ。アタシ達が同行する必要はなかっただろう」

「そうよ。ただでさえ賢者で体力ないのに、こんなところにまで引っ張ってきて、ふぅ、しんどい、もう無理」


 ちっ、エマが座り込んじまった。


 面倒だ、あいつは置いていく。

 どうせ後から勝手に付いてくるだろ。


「あれじゃない、神殿!」

「あん?」


 山頂に塔のような建物が見える。


 だが、確認した直後に建物が爆発した。


「なに、何が起きたの!?」

「とりあえず急ぐぞ」


 塔にたどり着くと、そこには紅いマントを羽織った大男がいた。


 そいつは縦長の紅い眼でこちらを見る。


 よく見れば右手には青い球が握られている。

 間違いないあれがオーブだ。


「おい、てめぇ。そいつをこっちによこせ」

「断る。これは我らが主様の力を封じた物、貴様ら下等生物には過ぎた代物だ」


 ミシッ。ピキ。


 奴は片手でオーブを割ろうとしている。


 やべぇ。

 あいつ、何者だ。


「させない!」


 ジュリエッタが距離を詰めて一閃。


 男は跳躍し、容易に躱して見せた。


「喰らえ、拳王撃!」

「ぬるい」

「!?」


 アイラの必殺の一撃が、片手で止められていた。


 発生した風圧が砂を舞い上げる。


「馬鹿な。アタシの拳が」

「魔族に、それも四天王である、この『灼熱のゴラリオス』に、たかがヒューマンの拳王ごときが敵うはずあるまい」

「ぎゃっ!?」


 べきっ。ぼぎ、ごぎ。


 アイラの拳は握りつぶされた。


 まさか魔族が、もう次のオーブを狙って動いていたとは。


 奴はアイラの髪を鷲掴みにした。


「まて、やめろ」

「敗北者に最大の屈辱を与える」


 ぶちぶちぶち。


 アイラの髪の毛が引き抜かれた。


 ばさばさっ、アイラの髪が風に乗って流される。


 俺は素早く動き出し、ゴラリオスに槍を突き出す。


「な、んだと!?」

「貴様もぬるい」


 素手で槍の矛先を握り止めやがった。


 がしっ。


「くははは、次は貴様だ」

「このっ、くそ、はなせ!」

「我が力で毛根を呪う」


 ぶちぶちぶちっ、俺の髪の毛が引き抜かれた。


「ぎゃぁぁあああああああっ!!」

「邪神様に捧げる! 憎きヒューマンの髪を!」


 奴の手から引き抜かれた髪が飛んでいく。


 俺の自慢の髪が……ちくしょう。


「よくもライの髪を!」


 ジュリエッタが首めがけて斬撃を放つ。


 だが、奴は瞬時に大剣を抜き、剣を弾いた。


「私の斬撃が! あがっ!?」


 奴はジュリエッタの首を掴む。


 だが、俺もアイラも呆然としていた。

 髪の毛を失ったショックで、立ち上がることさえできなかった。


「ぎゃぁぁああああああ!」

「三人目だ」


 髪を失ったジュリエッタが、白目を剥いて地面に倒れた。


「もう終わりか、つまらん」


 みし、ぼきっ。


「ぎゃぁぁあああっ!?」


 奴は俺の足の骨を踏みつけて砕く。


 激痛に悶えた。


「我が呪いで貴様らの毛根は封じられた。髪を取り戻したくば、このゴラリオスを殺す事だな。次会う時は、もう少し強くなっておけ。あまりに弱すぎて殺す気すら起きぬ」

「パラライズバインド!」

「む」


 地面から植物が伸び、奴を縛る。


 どうやらようやくエマが合流できたようだ。


「ほう、麻痺のある植物魔法か」

「もう動けないわよ。何者か知らないけど、賢者の魔法をなめない――」


 ぶちっ、ぶちぶち。


 あっさりと拘束を引きちぎる。


 エマは後ずさりした。


「貴様は、見逃してやろう。もう時間だ」


 ゴラリオスはオーブを天に掲げ、完全に砕いた。


 オーブは色を失い、灰のようにさらさらと風に乗って消える。


「二つ目、完了だ」


 灼熱のゴラリオスは、エマの横を堂々と通り過ぎ去って行く。


 あの魔族、ぜってーゆるさねぇ。

 四天王だかなんだか知らねぇが、俺は竜騎士のライ様だぞ。


 次、会った時は必ず殺す。


「ライ!」


 エマが駆け寄ってきた。


 ハイポーションをもらいダメージを回復する。


「うそだよな! 嘘だと言ってくれ!」

「いや! こんなのいやよ!」

「アタシの、アタシの髪が……」


 だが、いくら飲んでも髪の毛が戻ることはなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 髪だけを奪い、命までは奪わないところは優しいのだろうか…… いや、単に人間が絶望してるのを見て嘲笑いたいだけだなコイツ。
[一言] ゴラリオス愉快犯やろ
[良い点] 面白いなぁwwwwwwwwwwwwwwww
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