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67話 僕とアへ顔をさらす竜騎士


 魔族との戦いの歴史は非常に長い。


 幾度も休戦協定を結び、その度に破り破られてきた。

 それでも着実に戦いのない期間は延びていた。


 今回の休戦においても五十年もの間、ちょっとした小競り合いを除き平和な時代が継続されたのだ。


 では、なぜ争いが完全になくならないのか。


 その理由はすでにはっきりしている。

 魔族の目的はヒューマンを根絶やしにし、魔族による魔族の為の管理社会を形成することだ。

 調和を保とうとする人類側と、単一種族による完全支配を望む魔族側では根本から相容れないのである。


 加え邪神の存在が彼らをより強固なものとしていた。


 邪神とは魔族の神。絶対的支配者にして信仰の柱であり象徴だ。邪神ある限り魔族は人類へ歩み寄ることはないと言われていた。


「――邪神が復活した今はチャンスでもあるんだね」

「実際、倒したところで素直に話を聞くのかって疑問マンだがな。四天王を見たことあんだろ。どいつもこいつも我が強くてキャラ濃すぎマンだし」

「四天王は例外だ。あれらは邪神の側近となるべくして育てられた、それぞれが一騎当千の鬼神。かくいう儂も追い返すのがやっとの相手だ」


 深い山道を歩きながら僕らは会話をする。


 話を行う相手は主に、ムスペルダムの英雄ウォーレンとリューカーシャの英雄オズヌ。

 アマネもエミリもいるが、二人は先ほど捕まえた山猫に夢中で話自体聞いていない。


「オズヌよ、このようにのんびりしておっていいのか。貴殿の国では今頃、魔族と激しい攻防を繰り返しておるのだろう?」

「気にすんな。我が国の兵は俺ちゃんがいなくとも立派にやってら。自国にはパーティーメンバーも置いてきてっし、魔族とドンパチやんのは日常茶飯事マンだぜ」

「相変わらずお気楽だな」

「絶大なる信頼と言ってくれよ」


 ニシシと笑うオズヌ。

 彼とはここに至るまでに何度も話をしたが、気さくな性格で信用を大事にする気持ちの良い青年だ。


 ちなみに結婚していて、国に美人の奥さんとめちゃくちゃ可愛い赤ん坊がいるとか。

 変な対抗心を燃やして僕に「俺ちゃんの嫁の方が可愛い」とか言い出したのには困った。


 不意にエミリが僕らへ質問する。


「ところで、これ、どこへ向かってるなの?」

「リューカーシャだよ。この先にいる連合軍を助力することが今回の目的だ。すでに魔族と交戦中だからね」

「エミリが飛んでってブレスしてくるなの」

「やめて。敵味方一緒に吹き飛ぶ」


 その巨体からエルダードラゴンは何をしても範囲攻撃となる。

 敵味方入り乱れる戦場で、見分けながら攻撃するなんてエミリにできるとは思えない。


 悲惨な焼け野原がいくつもできるだけだ。


 もちろん使えるときには使って貰いたい力ではあるが。


「あ」

「逃がしちゃったなの」


 アマネの腕から山猫が抜け出し逃走する。


 二人は残念そうな表情となってしゅんとした。

 どれだけ猫と戯れたかったのだろう。


 仕方ないなとばかりに、エミリが獣に変化してアマネに抱きかかえられた。


「エミリは私の癒しです。モフモフ」

「えへへ~、ママの腕の中気持ちいいなの」


 エミリがアマネの顔をペロペロなめていた。


 くっ、羨ましい。

 僕も可愛い獣に変化して顔中なめ回したい人生だった。



 ◇



 リューカーシャへ入り、辺境で最も栄えている街へ到着する。


 ここの名物はジャンク市場である。

 壊れた遺物より生きた部品を取り出し活用する、技術屋が多く集まる場所だ。


 その為、珍しいものも多く中には掘り出し物の遺物もあるとか。


 大通りを歩く僕らはついキョロキョロしてしまう。


「ドワーフが多いなの」

「あいつらは知識に貪欲で手先が器用だからな。すげぇ発見も大きなトラブルもたいていドワーフが関係してるんだぜ。悪気がないってのが一番問題マンだが」

「否定はせん。興味のある事柄に集中しすぎるきらいがあるのは事実だからな」


 僕とアマネは会話を聞きつつ街の風景を眺めていた。


 店先に並ぶのはパーツの山だ。

 中にはどうしてこんなものが、と言いたくなるような品も普通に置かれている。


 それらに群がるドワーフも奇妙な光景の一つだ。


 くいくい、エミリにズボンを引っ張られた。


 道の先でちょっとした騒ぎが起きているらしく、人だかりの中心で男女が揉めている。


「触んなよ! ぶっ殺すぞ!」

「なんだよつれねぇじゃねぇか。俺達と楽しいことしてぇんだろ」

「は? んなわけねぇだろ。人を探してるから声をかけただけだクソ野郎。それと、いっとくが俺は男だ。気持ち悪ぃんだよ」


 槍を持った女性が無精髭を生やした男三人を威嚇する。

 傍には彼女の仲間らしき青年もいるが、なぜか助勢することもなく真っ白な状態でボーっと呆けていた。


 助けた方がいいよね?


 だが、僕が動き出す前にオズヌが先に駆けだしていた。


「やめやめ、俺ちゃんが来たからには、このような無駄な争いは終わりマンだ」

「げ、あんたは英雄オズヌ」

「しつこいナンパ男は見るに耐えねぇマンんだよ。やるならスマートに筋を通せ。それともくだらない理由でボコボコマンにされたいのか。ん?」

「ひぇ、すんませんでした!」


 男達は分が悪いと悟り素早く逃げ出す。


 残された男女へオズヌが気遣って声をかけた。


「乱暴されてないか。この街は比較的治安は良いが、あんまり気を抜いているとああいった連中を引き寄せる。警戒心皆無マンは危険だぜ」

「ふっ!」

「っつ!?」


 女が槍を突き込み、反射的にオズヌが躱す。


 状況を飲み込めないまま三つ編みの男が動き、僕へと鋭い斬撃を振るった。

 ぎぃいいん。間に入ったウォーレンが盾で剣を防ぐ。


「なんのつもりだ若いの」

「そこを、どけ! そいつには恨みがあるのよ!」

「僕に?」

「この者は貴殿の知り合いか?」

「うーん、記憶にないけど」


 ウォーレンは盾で相手を弾き、男は空中でひらりと回転して着地した。


 戦い慣れている。

 しかもかなり強そうだ。 


 大通りで戦闘が始まり、人々は悲鳴をあげて逃げ出す。


「見つけたぞ蜜月組。この辺りに現れるって聞いて、急いできた甲斐があったぜ。おい、アキト。黙ってこの戦いから降りろ」


 頭の中に疑問符が大量に生産された。


 誰? なぜ? 

 どうして僕らを? なんなんだこの人達?


 見えぬ正体に僕らは激しい戸惑いを覚えた。


「君達は誰なんだ」

「はっ、この顔が分かんねぇのか」

「……アマネ、知ってる?」

「いえ」

「エミリも記憶にないなの」


 あれだけの美人を忘れるとはとても思えない。

 隣にいる男だって美男子だ。

 絶対忘れない自信がある。忘れる方が無理。


 きっと誰かと勘違いをしているんだ。

 でも、はっきり蜜月組って呼んだよね。じゃあやっぱり会ったことがあるのだろうか。


 だんだん自分の記憶力に不安が。


「ライとジュリエッタって鑑定に出てるなの」

「「え」」


 エミリの発言に僕とアマネは目を丸くする。


 あの二人があの二人??

 だって恰好は似てるけど、どう見ても別人だけど。性別が変わってるし。


「やっと気づいたか。クソ鈍感荷物持ちが」

「その口調、ライなのか」

「私だと一目で見抜けないなんて最低。貴方本当に幼なじみなの」

「ジュリエッタ……みたいだね」


 アマネが聖竜槍レイバーンを抜いて僕を守るようにして構える。


「貴方がたは大監獄に収監されたはず」

「抜け出したんだよ。それよりその槍、そいつは俺の物だろうが。なに勝手に使ってんだよクソアマ。返せよ」

「言っている意味が分かりません。これは国の物であり、私はお借りしているだけです。最初っから貴方の物ではないでしょうに」

「ごちゃごちゃうるせぇ。渡さねぇなら力尽くで奪う」


 ライの刹那に放った刺突をウォーレンが盾で弾く。


 後方に飛んだライに、オズヌが追随し鋭い蹴りを繰り出す。

 素早く槍の柄で蹴りを防ぐも、衝撃を逃がしきれずライは建物へと壁をぶち破って突っ込んだ。


「阿呆が。儂らがいるのを忘れたか」

「おうおう、元英雄の犯罪者。逆恨みはかっこ悪いマンだぜ。蜜月組は下がってな。ここは俺ちゃんのテリトリー、お庭で勝手されちゃ名が廃るってもんよ」


 ウォーレンとオズヌが僕らを守ってくれる。


 なんて心強い。そして、カッコイイ。

 二人とも僕が憧れる英雄像そのままだ。


 一方のジュリエッタは不敵な笑みを浮かべていた。


「ははっ、マジかよ。以前より力が溢れまくってるぜ」


 瓦礫を押し退けライは平然とした顔で出てくる。


 彼女はベロを出して寄り目となる。


「……なにを?」

「アへ顔を晒してんだよ」


 うん?

 アへ顔??


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― 新着の感想 ―
[一言] TSッ娘のアヘ顔……。 ( ☆∀☆) これからも頑張ってください!\(^o^)/
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