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20話 鍛冶師の願い2


 グリンピアは歴史が古く、その地下には迷路のような無数の通路が張り巡らされている。


 地下はいくつかのエリアに分けられ、連絡用通路、地下墓地、避難用通路、地下倉庫などと役割が分けられているそうだ。


 そして、多くの者は地下に技術書が隠されていると考えた。


 実際、二つの技術書が地下から発見されたので、残りも地下にあると考えるのは自然だろう。


 僕らはナナミを同行させ、薄暗い通路へと足を踏み入れた。


「悪いっすね。無理言ったみたいで」

「いいよ別に。それよりも問題は隠されている場所、だいたいの目星は付けているのかな」

「そんなものないっす! 直感を信じて探すっすよ!」

「ナルホド」


 ナナミは満面の笑みでサムズアップする。

 それだけで大きな胸がぷるんと揺れた。


 おまけにファスナーがお腹の辺りまで下ろされていて、白い谷間と黒い下着がちらちら見える。


 正直、目に毒だ。


「アキト、あまり見てはいけません」

「ごめん。つい、そっちに向いちゃって」


 アマネがジト目でむくれている。


 そんなつもりはないのだけれど、胸元を見せられていると目が勝手に追ってしまう。


 できれば前をきっちり閉めてももらいたいが、汗っかきで暑いからと、やんわりと拒否されてしまっている。


「またパパに色目使ってるなの。こんなもの見せるな、なの」

「あ、止めるっすよ……あんっ」


 エミリが杖でナナミの胸をぐりぐりする。

 柔らかいものがぐにゅりと形を変え、ナナミが色っぽい声を出す。


 心なしかアマネの顔が険しくなった気がした。


「さーて、行くっすよ!」


 意気揚々とナナミは先を行く。


 実は彼女、メリクリウスの弟子の子孫なのだとか。

 技術書の捜索は彼女の一族の悲願、彼女もずっと探し続けていたそうだ。


 それに加え、店の経営が悪化しているというのも探索を推し進める理由だろう。


 向かい側の店がオープンしたことで、売り上げが激減し、経営が危うくなっているというのだ。


 ――今よりも優れた商品を作れば、お客さんは必ず戻ってくるっす。


 ナナミはそう言っていた。


「その技術書というのはまだあるのでしょうか」

「どうだろ。見つければ噂で聞こえると思うし、それがないってことはまだどこかにあるんじゃないかな」

「もし見つからなかったら?」

「諦めてもらうしかないね。可哀想だけど」


 彼女とは話をして、技術書が見つからなくても半額にすると約束をとりつけている。

 期間は最長で一ヶ月、その間になにも見つからなければ探索は終了だ。


 可哀想だけど、彼女にずっと付き合うわけにはいかない。


 どこかで折り合いをつけてもらわないと。





「ほい、ほいほい、ほいほいほい!」


 ばすんっ、ばすんっ、強烈な打撃音を響かせ、ハンマーを持ったナナミはブタモグラを単独で圧倒する。


 僕らはその様子を見ているだけ。

 あまりの暇さにエミリは獣状態となり、アマネの腕の中で昼寝を始めてしまった。


「いやぁ、いい汗掻いたっす」

「ナナミって強いクラスだよね」

「分かるっすか。そうなんす、ウチは虎槌ってクラスを持ってましてね、近接戦闘は得意なんすよ。前衛ならウチにお任せっす」


 虎槌はハンマー系のレアクラスだ。

 位置的には剣王の一つ下にある剣師くらい。


 力と防御力に秀でた、優秀な前衛クラスだ。


「でもさ、一人でこれだけやれるなら、手伝いなんて必要なかったんじゃ」

「それがそうもいかないんすよ。ウチ、暗い場所苦手で、誰かが一緒でないと足がすくんでダメなんす。おまけに道を覚えるのもダメで、油断するとすぐ迷子になるっすよ」

「確かに一人は厳しいね」


 進行速度はかなり速い為、ひとまずの目標としている地下倉庫までは、そんなにかからず到達できることだろう。


 ちなみに地上から、連絡用通路→地下倉庫→避難用通路&シェルター→地下墓地の順で深くなっていくそうだ。


「魔物がいるとは思わなかったな」

「地面の中に生息するブタモグラとかいるっすからね。あと、ジャイアントミミズとかスカルマウスとか結構色々出てくるっすよ」

「「「へ~」」」


 僕らは探索を再開する。



 ◇



 地下倉庫エリアに到着。

 これといって目立った成果もなく、僕らは休息をとっていた。


「焦りは禁物っす。そう簡単に見つかるとは思っていないっすよ」

「はいこれ」

「ありがとうっす」


 スープを入れた器をナナミに渡す。

 隣にいるアマネが同じく、チーズを載せて炙ったパンを渡す。


「あむっ、おいちいなの! ママが作るとなんでもご馳走なの!」

「ふふ、ありがとう」

「えへへ。お膝に乗ってもいい?」

「はい」


 アマネの膝に乗ったエミリはご満悦だ。

 耳がぴこぴこ動き、ふさふさ尻尾が揺れ動く。


 小さな手でパンを引っ張れば、チーズがとろーりと伸びた。


「地下にいるけど気分とか悪くなってないかい」

「この通り元気なの」


 おでこを触ってあげれば、エミリは顔がほころぶ。


 はねっ毛がぴょこぴょこ動いた。


「エミリちゃん可愛いっすよね。ウチ、こういうモフモフした尻尾大好きっす」

「触らないでなの。目がエロいなの!」

「よいではないかよいではないか、ぐへへ」

「この虎おっぱい、ド変態なの!」


 ぎゃーぎゃー、二人が騒ぎ出して食事は賑やかだ。





「ほーい、どっこいせ!」


 避難用エリアに到達。


 複数いた大きな鼠は壁にめり込み絶命する。


「よわよわっすね」

「雑魚ナメクジなの」

「おお、いいっすねそれ。お前らは今から雑魚ナメクジっす!」

「そうだそうだ」


 ナナミとエミリがはしゃいでいる。

 実はこの二人、かなり馬が合うようだ。


「そろそろ疲れたよね。僕が代わりに戦うよ」

「いやいや、剣もないのにそんなこと」

「問題ないよ。こうみえて格闘戦も一応できるんだ」


 拳王のアイラに基礎は教わったからね。


 どうすれば荷物持ちのまま強くなれるのか、試行錯誤して身につけた技術だ。

 まぁ、本家本元のアイラにはまったく敵わないけど。


「グモォオオオオ!」


 ミノタウロスが出現する。


 へぇ、地下にもいるんだ。

 知らなかった。


 ――刹那に肉薄、僕の足が顔面を蹴り上げた。


 どすん。

 巨体が床に倒れる。


「今のはなんですか。アキトが消えました」

「瞬歩だよ。まさかできるとは思わなかった」


 アイラが得意としていた戦闘技術。


 今の僕ならもしかしたらと思ったのだけれど。

 やってみると簡単にできてしまった。


 なんだかんだ積み重ねた努力は無駄じゃなかったんだな。


 僕は次々に現れる魔物をたたき伏せた。


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― 新着の感想 ―
[一言] この探している技術書の価値の対価を払えるのかね?
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