<第9話> 同居生活
僕は黙って白石さんの後をついていき校門からでて歩いて10分足らずの5、6階建て位のマンションがある。白石さんと僕が中に入り再びエレベータに乗ると今度は下ではなく上に動き出した。
5階についてすこし廊下を歩くと扉がある。にしてもこのマンション立地も立地だが外装だけ言うならばとても綺麗で家賃もそれなりにするところなんだろうなとは思った。こんなところに住むのはちょっと申し訳ない気持ちになっていく。今度は名札ではなくバックから鍵を出して扉を開ける。白石さんが電気をつけるとそこには普通の女子が住んでそうな部屋である。木でできたテーブルに40インチくらいの薄型テレビとその台、薄水色のソファーとよくわからないキャラクターのぬいぐるみが山のように積まれている。新居とは程遠い生活感の感じられるザ・女の子の部屋だ
あれ?僕の思っていた家とは違う。こういうのって最低限の生活ができる家具だけってもんじゃないの?
「ここがミキ君の住まいだよ!」
「え?どう見ても誰か住んでいるじゃないですか!!」
「エリザベスに聞いてないの?私と一緒に暮らすって!!」
「聞いてないですよ!白石さんと一緒に住むなんて!!」
年頃の僕にはさすがに刺激が強すぎる。最初は冗談だと思っていたが白石さんの真剣な顔はどう見てもこれは事実であった。抑え込もうとしても頭の中では白石さんが夜になると人が変わったように甘えてきてご飯を口に運んでくれる、、、、あかん!!そんなわけがない彼女は真面目な人だぞ。でも脳みその中ではピンクっぽいニャンニャンが浮かんでいる。こんな美女とあぁぁ、、、
「大丈夫ミキ君のスペースも作っといたから」
冷静に考えてこれはおかしいと思うだけどエリザベスに反論することもできずだからと言って僕に新しい住まいを探す力なんてあるわけでもなかったので仕方なく白石さんに「お願いします」と頭を下げて白石さんとの共同生活がスタートした。
後でどうして僕との共同生活を受け入れたか聞いてみよう。
その夜僕と白石さんはリビングにある小さなテーブルで僕を迎える歓迎会をやった。
「乾杯ー!!!」
テーブルに並べられていた食事は唐揚げや色とりどりなサラダ、白いご飯があって久しぶりに豪華な食卓を見た。僕は皿から唐揚げを一つ取りご飯と一緒に食べる。
「美味い!!」
こんな美味しい食事は5年ぶりだ。しかも白石さんの手作りということもあってそのおいしさはさらにプラスされている。暖かい環境はある意味とても新鮮である。毎日薄汚れたパンを食べていた自分にとって感動と呼ぶことしかできない。
「ミキ君どうして泣いてるの?」
「何でもないです、、」
「えー気になる!!!」
僕は白石さんに少しでもかっこいいところを見せたいしこれ以上心配もさせたくない。白石さんに住ませてもらっている以上僕はミカサでエリザベスに密かに誓った優秀な戦士にならなければと思った。白石さんを喜ばせることで恩を返そう!こうすることしか他に方法はない。
「ミキ君って前どこに住んでたの?」
「僕は前ジョウホクっていうところに住んでたんです。こことは全然違くて驚くことばかりですよ」
白石さんは僕がなんで泣いていたのかをすべて察して顔を僕の目の前まで寄せてくる。あまりにも距離が近すぎて頬赤くしてしまう。白石さんから放たれる何とも言えない甘い香りは僕の心臓の波打つ感覚が狭くなっていく
「大丈夫。ここではたくさんの楽しいことが待っているから」
そう慰めて白石さんは「ごちそうさまー」と言ってキッチンへ向かい片付けの準備をした。
時計の針は夜の10時を指している。すると白石さんが
「明日学校行くんだよね?朝早いからそろそろ寝ないとね」
「私の部屋で一緒に寝る?私も明日朝早いから」
波打つ感覚が素早くなっていくがさすがにそれは遠慮した。白石さんは自分の寝室に入っていき僕は彼女から毛布だけ貸してもらいリビングのソファで横になる。
「明日どんな1日になるのだろう」
僕は明日の学校生活が待ち遠しくて目が潰れないままだった。