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<第7話> 新しい居場所

僕は白石さんの手に惹かれるように後に続き新緑の香りがする並木道を抜けて私立ミカサ中・高等学校の校門の中に入った。やはり私立ということもあって校舎はシミ一つなく真っ白でできたばかりの新鮮な空気で鼻はいっぱいになる。



この学校は昇降口に入って靴から上履きに履き替えなければならない。


「はいどうぞー」



白石さんから渡されたのは学校の名前が入った赤いスリッパだった。僕は白石さんにお辞儀をしてありがたくそのスリッパをはかせてもらった。



昇降口を通ると廊下の窓から夕日が差し込んでいる。昨日見た夕日は破壊の中に輝く自然にどこか美しさを覚えたが今日のは一面白の人工物の中に白に反射されて明るく照らされている夕日は強調されて色彩として映えるなと感じる。廊下はとても長くどこを見ても同じ形状でどれがどの教室なのかパッと見では分からない。僕が白石さんに案内されたのは一番奥の教室だ。



「ここ教室だよ。どうぞじっくり見てってね」



授業が終わって誰もいなくなった教室だ、、、懐かしいなぁ。僕も5年前朝昼ここで何時間も拘束された後、授業から解放されクラスメイトや先生がいなくなってから校舎が閉まるまでずっと教室に残ってたな。たまに友達がいて先生の監視をかいくぐって机の上に座って嫌いな先生の悪口言ってたな。僕は気づいたときには涙を流していた。誰もいない教室は僕にとって最高の思い出だったから。



「大丈夫ミキ君?」


「気にしないでください、、」


「そういわれると気になっちゃうじゃーん」


白石さんの返しがいちいち可愛い。しかもこれが素の気持ちで出ているならば僕のように汚れている心と違って純白で清らかな心を持っているに違いない。例えそうじゃなくても僕と白石さんは全く別の人生を歩んできたそれだけは感じることはできる。僕は白石さんに泣いている姿をあまり見られたくなかったのですぐ涙を拭いた。



どうしても気になることがある。エリザベスの言っていた対ジュウシン特化施設があるようなことを。それを白石さんに伝えてみた。



「ミキ君のせっかちー」



僕が少し焦っていることは大人の女性にはお見通しだ。白石さんはそう答えて教室を後にした。




この学校の不思議なところは放課後とはいえ生徒が誰一人いないことだ。カドガウラにいたころは放課後誰かしらいてそいつと長話したり遊んだりしたことはあったはずだ。いったいどこにいるのだろう。



考え事をしていると2階の連絡通路を通っていた。ここに来ると白をベースとした景色とは一風変わって急にSFに出てくるような機械じみた壁があらわになっていく。その目の前には厳重に管理された大きな扉がある。白石さんが首にぶら下げている名札を扉中央部の黄色く点滅する場所にかざすと黄色から緑に変わり扉のロックが外れた音がした。


ガチャ



「ミキ君準備はいい?」


扉が開くとそこに待っていたのは、、、




「ようこそ!!私たちの誇るジュウシン対策研究所通称 ABToL(アブトルよ!!」


「ここでは学生から研究員まで様々な年齢、性別、職業で構成された超巨大組織だよ!」



「うわああ!なんだこれは!!」



学校の敷地とは思えない巨大なエントランスが広がっている。今まで見たのは私立なので少しきれいだが探せばどこにでもあるありきたりな学校風景だった。ここは違う。まず壁が大理石でできていて八角形の頂点に大きな柱が立っている。中央に受付窓口があり4人体制。こんな受付大企業でもあまり見ない。そこにはたくさんの人がそれぞれの目的のために合流をすり抜けるように様々な角度で交わる。僕は驚きのあまり口が開いたままだった。



奥には4台エレベーターがあり白石さんが左から2番目の扉のボタンを押す。待っている間エントランスをぐるっと見渡してみると天井はもの凄く高く数々の電球がこの階を照らしている。囲むようにモニターがあり現在の様子をリアルタイムで伝えているみたいだが何を表示しているのかはよくわからない。、、、さらにしばらく待つと扉が開いた。僕は白石さんの真後ろについていく。このエレベーターのボタンは2階から地下5階まであって建物のわりにたくさんのフロアがある。




白石さんは地下3階のボタンを押す。デパートのエレベーターみたいにスムーズに扉はしまり動き始める。




「地下3階 演習ルームです」



エレベーターのアナウンスが入ったあとその扉の先に広がっていたのは、剣を持った男性同士が激しく戦闘を繰り広げる様子を複数のモニター画面で観戦していたり。別のモニターはジュウシンに似た巨大生物と戦っている男性をスーツを着ている女性にチェックされていたりと。ここでは実践を模擬して日々練習している戦士がたくさんいるようだ。



意外だったのは人間通しで武器を持って殺し合いをしていることに驚きを隠せなくて




「これ殺し合ってるんですか!危険ですよ!!」


「驚かないでー。これは対ジュウシン演習とは別に「バーテックス」という対人戦スポーツもやってるんだよ!バーテックスは定期的に開催していてアブトルの最先端技術をスポンサーに公開して、スポンサーから頂いた資金を研究費や開発費に回してるんだー。バーテックスはいろいろな大手企業から注目を集めていて武器などを提供する電気・電子企業や戦闘服や機能性シューズなどを提供するアパレルブランド。選手をサポートするグッズやサービスを提供する企業。それらを広告や新聞・雑誌を通してバーテックスを宣伝するメディアなど、、、他にもたくさんの人たちが関わっているから強いと周りからチヤホヤされて大スターにもなれるチャンスだよ!!」



白石さん平気な顔ですごいことをさらっと言う。ここのトップ選手は多くの企業から支えられファンもたくさんいる要するにスターになれる。すごく恐ろしいことだ!




僕はアブトルのすごさに度肝を抜かした。

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