<第60話> 合同演習①
「エイちゃん!!生きててよかった、、、あの時は本当にゴメン!!」
「いいんだよ!今思えば怪しい誘いをよく引き受けたと思うよ。まぁ結果オーライだけど」
「あの後エイちゃんはどうしたの??」
「俺はこの後アブトルにある付属小学校に通いながら正隊員目指してた。そして中学生になると同時に正隊員になった!アブトルが創立した時にも携わったよ!つまりアブトルの1期生だね」
あの時4番街の空き家にやって来た黒服の男たちはアブトルの元となった集団だったみたいだ。エイジはアブトル創立の初期メンバーとしてABDなど様々な開発に携わっていた。彼の言う1期生は今年の高3の代のことであり当時小学生のエイジは上級生に肩を並べるほど強かったともとれる。
「だけど今は俺より強いやついっぱい出てきちゃたからね、、、」
するとナナミが初期メンバーの単語を聞いて鋭く反応しエイジに強い口調で尋ねた
「イチゴを知ってる?後藤イチカ!!あんた初期メンバーなんでしょ!なんか知ってるでしょイチゴのこと!!」
「イチゴ!!!その呼び方、、、久しぶりに聞いたな。イチカがそう呼ぶ親友がいるって言ってた、それは君のことだったんだね」
「、、、何よ。イチゴのこと何か知ってるの??」
「ああ知ってるさ!!小学校時代彼女もアブトル創立に関わった初期メンバーなんだよ!彼女のお父さん、後藤マサキはアブトルのキーパーソン。その一人娘のイチカは戦闘でも学力でも俺より優秀だった。俺もイチカとは小学校時代から仲が良くて会話したことある。だけど、、まさかあんな事で、、、」
「何か知ってるんでしょ!!早く言いなさいよ!」
ナナミの顔が急に怖くなり辺りが緊張感に包まれる。追い込まれたエイジはゆっくりと話し始めた。
「俺も全ても知ってるわけではないが、、、唯一あの事件で知っていること、、、それは彼女の遺体はまだ発見されていない。彼女は名目上死んだことになっているが実際は行方不明、、、どこかで生きている可能性があるんだ!!」
「他は!!何かあるんでしょ!!!」
「それ以上は俺に聞くな!!初期メンバーだとは言え詳しいことまでは知らない!!、、、俺たちはイチカがどこかで生きていることを願うしかないんだ。俺たちがイチカを探そうとしたって見つかるわけがない、、、」
エイジがナナミの勢いに圧倒され一言つぶやくと彼女は下を向いて黙り込んでしまった。彼女がイチカを失った衝撃と悲しみは想像以上に大きく彼女にとってとても大切な人だったのだろうと思った。
「ミキ、後で彼女をフォローしといてくれ。イチカは彼女の親友なんだ」
「大丈夫、話はナナミから聞いている、、、」
「そろそろ時間だ!ABDを持って第1合同演習ルームに来なさい!!」
エリザベスが扉を開け戦闘準備のアナウンスを始めた。1801小隊,1802小隊ともに休憩室にあるABDを抱え隣の第1合同演習ルームに向かった。
第1合同演習ルームに向かうとさっき来た時と少し様子が変わっている。下を向いたまま微動だにしない漆黒のジュウシンが何体も存在していた。おそらくだが今回戦う敵はこいつに違いない。確か1801小隊の3人も言っていたジョウホク討伐作戦に初登場した新型「シャドーアサシン」であろう。
第1合同演習ルーム中に男性のアナウンス音が響き渡る。その声をよく聞いてみるとおそらくであろう理科の小嶋だろう。彼が1802小隊の指揮監督なのかもしれない。
「いいかい?これから君たちは目の前にいる新型「シャドーアサシン」のレプリカを6体を倒してもらう。かなり過酷なミッションになると予想される集中して演習に取り組め!さぁ通信機をセットして!!」
小嶋の言われた通り手元にある自分用の通信機を左耳に付けると、、、
「もしもしー?ハルト君聞こえてる??手振ったの気付いたぁ??」
この透き通った美しい声はもちろん白石さんだ。僕は快く彼女に返事をした
「気づきましたよー。そのお返ししたのは気づきましたか??」
「うん!!私正隊員としてやっと仕事出来てとてもウキウキが止まらないんだから!!」
「ミッキー、、、あの女との会話丸聞こえですけど。通信機はオペレーターだけじゃなくて他の隊員にも聞こえるからイチャイチャするなら私たちのことミュートにしてね、、、聞いてて耳障りだから」
「あ。ごめん」
「ミキ君作戦に集中して!そろそろ始まるよ!私たちは右サイドにいるジュウシン3体をできるだけ早く片付けて1802小隊のカバーに行けるようにする!カイセイは手前の標的を!ナナミちゃんは奥の2体同時にできれば!ミキ君はナナミちゃんとカイセイのカバーに入って!私は後ろから護衛射撃するから!」
1801小隊は河野ちゃんの提案した作戦に賛同し全員で「了解」と言った。「了解」の合図は正隊員基本事項の一つである。
「こちらエイジ!1802小隊は目標5分以内で3体討伐を狙う!万が一の時を考えミキのカバーをこちらまで視野を入れてほしい!河野隊長それはできるか??」
「OK!!ミッキー頼むよ!」
「分かった!!」
「戦闘開始まであと30秒!!それでは健闘を祈る!!」
第1合同演習ルームのフィールドは白黒ではあるが住宅地を模範とした長方形の巨大ブロックがあちこちに密集し高低差のあるリアルな戦いができる。どうやら一定の衝撃を与えると壊れるらしい。
僕は右手に持つABDを腰に巻くと、、、「ABDの装着が完了しました。ユーザー確認、、、1801小隊員三木ハルト。適正ユーザーです。ホストからの起動許可が下りました。ABDを起動してください」
「ABDを起動!!」
ABDを起動すると全身の熱循環が速くなり体が軽くなった気がする。エネルギーが付与された全身の筋肉はABD未使用よりはるかに向上し今までの人間には出来なかった俊敏性、瞬発力、パワー、耐久力、バランス力、特殊能力を実現させた!!
ポケットから折りたたまれたライデンを起動する。黒い柄部分から三日月のように反り立つ緑色の刃は人間の体だけではなくジュウシンの堅い装甲さえも引き裂く!
「こちら河野。みんな準備いい??、、、、作戦開始!!!」
ブーーーー!!!
1801小隊、1802小隊の合同演習スタート!!




