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<第59話> 後悔とトラウマ 

「そっと静かに開けて、、、」



プシュー!!



「エイジ!どれくらい魚詰められる??」



「2ケースくらいならいけそう!!」



「了解!僕もその後に続くよ!!」



最初は地獄を具現化したようなジョウホクの大地を生き残るためにや無負えず盗みを始めた。2人で一緒に作戦を考え任務を遂行するまでのプロセスが今まで生きてきた中で一番の快感である。昼間のうちに経路や警備の様子などの下調べを行い。夜に作戦計画を立てる。深夜になって人々が眠りに入るころ僕たちは現場へ向かい倉庫や店などにある食料を次々と盗んでいった。



「ミキ?魚詰めたか??」



「OK!!そろそろ出よう!!」



ジョウホクはそもそも電気水道ガスなどのライフラインが充実しているとは言えない。警備はものすごく甘々で一応警備員はいるが動いていない同然だ。こうやって真正面から市場を抜けても案外気付かれない。スポットライトをギンギンに輝かせる中を全速力で走る興奮は今でも忘れない。闇市場は警察に窃盗事件を報告すると自分たちの違法営業がバレることが分かっているので顔がバレたとしても通報はしてこない。この場を巻いてしまえばこっちの勝ちだ!



ヤベ!!懐中電灯のライトがこっちにどんどん近づいてくる!!



「どうするどうする!!!エイちゃん!!」



「おいここで何をやっている!!」



ウウーーーーー!!!



「逃げるの一択だろおおおおお!!!」



来た道同様のルートを辿り全速力で3人で追いかける警備員から必死に逃げる。僕たちの方が体力があるみたいで後ろを振り返ったときには彼らの姿はもうない。



「よし巻いたみたいだな、、、」



「あれ見ろよミキ、、、」



前には数人の警備員、後ろを振り返って迂回をしようとしたが裏にも警備員!



「大人しく自首しろ!ここで何をしている!!」



「ミキ!お前ならどうする?」



「強行突破しかないでしょ!!!」



「いいか?掛け声を合わせるぞ!1からカウントして3のタイミングで前にタックルするぞ!」



「OK!!」



「行くぞ!! 1! 2!、、、」



「3!!!!」



前にいた警備員の体に2人で猛タックルする!!3人で作った壁も隙間に力が加わり穴が開くように2人の体は前へ前へと進んでいく!!



僕らは光輝く照明に照らされたコンクリートの上を全力で走り抜け奥の有刺鉄線にしがみついた。

上へ上へと登っていくうちに有刺鉄線の棘が手に刺さり手のひらは真っ赤に染まっていた。しかしこの時あまりにも興奮していたのでその痛みすら感じることはなかった。



「エイちゃん!急げ!」



「手が痛てぇ、、、」



「そんな場合じゃないよ!!もう向かってきてるよ!!」



「おい!!降りなさい!!話を聞かせてもらうぞ!!」



「早く!!エイちゃん!!」



「俺を置いていけ!盗みならミキでもできるだろ!」



「いや!エイちゃんがいないとこの先、、、どうやって生きていけばいいんだよ!!」



エイジの足を警備員が今にも掴もうとしている。僕は血まみれのエイジの手を掴み勢いよく引き上げた!すると彼の体は有刺鉄線の上を飛び越える。



「ありがとう、、、」



「早くバイクに急ごう!!」



有刺鉄線の奥にある白いコンクリート壁を飛び越えその奥には事前に用意しておいたエイジのバイクがある。エイジは急いでそちらに向かいカギを刺してエンジンは回転させた。



ブルルルンンー!!!



「ミキ!俺のお腹に掴まれよ!!行くぜ!!」



イヤッフゥーーー!!!!



ウウウウウウウーーーーーー!!!



サイレンが鳴り響く闇市場、真夜中に照らすスポットライトが僕たちの乗ってるバイクを照らし出す。まるで僕たちが主人公になった心地がした。それと同時にこれが僕たちの犯した初めての罪でもある!





誰も走っていない8番街の幹線道路をバイクで爆走している。自宅がどこかも分からず行く当ても分からずただただ爽快感に浸りたいために走らせていた



「なぁミキ、、、これからは相棒って呼んでいいか?」



「ああ!いいよ!よろしくね相棒!!」



辺りは電気が全くついておらず星空は一つ一つの粒が空一面に見え美しすぎるくらいの満月が地面を光り照らす素晴らしい夜だった。



この事件をきっかけに地元8番街では口コミで「N°8(ナンバーエイト)」を名乗る盗賊集団が現れたと噂されるようになった。僕たちはたまたま見つけた空き家にひっそりと暮らしながら奪った食料を生活に使ったり売りさばいたりして生計を立てていた。僕の予想通り警察がこの窃盗事件に介入できず闇市場が真相を隠蔽し始めた。正確にいうと「N°8」は僕たちが名付けた名前ではない。誰かがそう呼んだもので実際にどういうことをやっている集団なのかは知っている人はいなかった。



僕たちは食料を盗むのに飽き足らずセントラルクロスのど真ん中にある金融機関を次々襲ったり、繁華街で最も儲かっていたであろう風俗店の金目の物を奪ったり今思うとかなりの悪さをしていた。顔もバレたりしたがその度に拠点を変え大人しく身を潜めたりしてやり過ごす。毎日毎日緊張感こそあったけど相棒がいたからこの時はジョウホクにいた時最も楽しかったかもしれない。



この辺りからあちらこちらで「N°8」を名乗る少年少女が多く登場する。誰が本当の「N°8」か勝負をつけるために一騎打ちを行ったりして覇権戦争を行ってたみたいだが当の二人には全くもって興味なかった。偽の「N°8」が僕たちの後を追っているとは聞いてたが手がかりが全くないのか僕たちと接触することはなかった。



こういう日々がずっと続けばいいと思ってたがその日常に突然終止符が打たれる。



ある4番街の隠れ家での出来事



「ミキ、、、もうこういうのヤメにしないか?」



「どうしてだよ!!ここまで上手くいってるじゃん!!」



「、、、実はさ仕事見つかったんだよ。しかもジョウホクを出れるみたいだぞ!!」



「そんな仕事怪しいな。一体どんな仕事なんだよ!!」



「それが非公開なんだよ、、、とりあえず住むところと毎日食料は確保されているらしい。なぁミキこんなこと辞めて一緒に行こうよ!!」



「辞めた方がいいよエイちゃん!!そんな美味しい仕事が僕らに舞い込んでくるわけないだろ!!」



「そうかもしれない!!でもその千載一遇のチャンスに乗っかるのも今しかないんだよ!!」



「エイちゃんのことそんな簡単の嘘に乗っかるやつだと思わなかったよ!目を覚ましてよ、、、普通に考えてそんなことあり得るわけないだろ!僕たち特殊な能力もないただの盗人だよ!」



「ああぁ、、、分かったよこれは俺一人で行くよ。お前が何て言おうとも俺は新しい仕事につく。これ以上罪を増やすのも嫌だから。残念だけど今日でお前とコンビは解散だ。一生信じられる奴だと思ったけど正直失望したよ、、、お前出会った時と変わっちまったよな。昔は例えどん底に落ちようともそれが悪いことであってもわずかなチャンスを掴もうと必死にもがいてたのに今は、、、あの時のお前はどこへいっちまったんだよ、、、目を覚ますべきなのはお前なのでは、、、」



「何言ってんだ!!こっちから願い下げだ!外の世界で楽しくやりなよ!!あと二度と僕の目の前に現るな!!」



僕は勢いよく扉を閉め4番街の空き家を全速力で離れていった。これがエイジとの初めての喧嘩でありこれが最後のエイジとの会話だと思っていた内容だ。




最初は怒って飛び出したはずなのに時が流れるにつれ怒りは後悔へと変わり気が付くと目は涙で溢れていた。僕は急いでエイジのいるであろう空き家に急いで駆けつけた。今なら彼と話し合って引き留めることもできるし仲直りできる。やはりエイジと一緒じゃなきゃダメだ!




「、、、、嘘だろ」



なぜか4番街の空き家近くに人だかりができていた。その時やじ馬が様子を見に来ているとは分かったがもしかしたらエイジが危険な目に遭っていると思って、、、



人と人の隙間をすり抜けどんどん前へ進んでいく。人の肉に押しつぶされそうになりながらもエイジの様子が気になり空き家の方へ真っすぐ抜けていくと



「、、、!!!」



空き家の近くには1台の収容車と思われる車に空き家から手足を縛られて運ばれたのは意識を失ったエイジだった。その隣に複数の人が付いていてその人たちは背中に銃を背負っていた。体を動かせなくなったエイジを大人二人がかりで収容車に運び座らせた。



僕は思わず収容車に向かって走り出す!!



「エイちゃんは!!お前たちエイちゃんに何するんだよ!!エイちゃんを返せよおおおお!!!」



すると黒服のサングラスをかけた男がそっと僕に返答した



「君はまだ知らなくていい。彼は知り過ぎた、、、知らなくてもいいことまでな」



「どういうことだよおおお!!エイちゃんはどうなるのおお!!おい聞いてんのかよおおおお!!!」



「、、、、」



バタッ!!



収容車の後部扉を閉め黒服の男がエンジンを掛けると車は動きだす。その進路を妨害するやじ馬たちはそこを避けていき収容車は遠くへ行ってしまった、、、



「エイちゃん!!!!エイちゃんを返せよおおおおおおおおおおお!!!!!!」



すると一人のやじ馬の声がそっと耳に入ってくる



「あの子最後にミキっていう子に会いたいって言って駄々こねたらしいよ、、、その時に銃声が響いたのよね、、、あの子大丈夫かしら?」



「どういうことだよおお!!おい知ってるのかああ!!」



やじ馬の首を抑え全力で睨みつけた



「これ以上は知らない!!!私が見た時にはそうなっていたの!!!」



「、、、クソおおおおお!!!」



僕はその場で倒れこみアスファルトの上で何度も何度も拳や頭をぶつけていた!



「エイちゃん!!エイちゃん!!、、、、エイちゃああああんん!!!!!!!!」



この事件をきっかけに僕は大人が信じられなくなった。純粋な子供たちは大人たちに騙されて攫われたという大部分はこの出来事が占めている。他にも人間不信になる出来事はたくさんあったがジョウホクにいたときはこのトラウマを抱えながら生活していたといっても過言ではない、、、



僕はそれ以来泥棒をしたことにものすごく後悔しあの時エイジの言う通りに仕事についていればよかったと思うようになった。その後僕はもちろん盗みを辞めて6番街のちゃんとした廃品回収の仕事を発見し応募してみたら受かった。1日働いてもパン1切れしか買えない安月給だが安定して生活できるだけまだマシだ。



そして「N°8」は未だに語り継がれ彼らの真相は英雄なのか悪なのか現在でも議論される伝説の存在と化していた。

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