<第57話> 旧友
藍田塾からABDや戦闘服、その他アタッチメントなどを持って急ぎ足で2階の1801小隊隊員室に向かう。一昨日に中学校は夏休みに突入し8月31日まで学校で授業を行うことはない。しかしアブトルは平常運行なので家でゆっくりしている暇や遊びに行く時間なんてない。2階メインエントランスはいつも以上に人が行き交い混みあっているのでその側をすり抜けようと思っても人にどうしても当たってしまう。
ゴツッ!
「すみませんー」
白衣を着た研究員らしき人と衝突したことにより手からスッとすり抜けるように落ちたのはライデンの柄部分を落としてしまった。
「あのー落ちましたよ!」
「ああ!ありがとうございます!!」
急いでライデンの柄部分を取り2階メイントランスをサッと抜けた。現在10時15分、12時集合なので1時間前には準備を終えて作戦開始の準備をしたい。
「ここを、、、右、、、次を右、、、左行って、、、」
ナナミの言われた通り道を辿り隊員室へ向かおうとする。しかし隊員室への道は複雑で目印なんてないし壁の色や見た目が変わるわけがない。扉の前に番号は書いてあるが似たような番号ばかりなのであまりあてにできない。
何度もこの迷宮を迷いながら試行錯誤を繰り返していると、、、やっと1801小隊隊員室に到着した。後々時計を見たが迷路に迷い込んでいた時間は30分以上かかっていたようだ。
急いで隊員証を扉にかざし全身を使って扉を押すと隊員室はすでに電気をついており河野ちゃん、佐倉カイセイ、ナナミが戦闘服の格好でそれぞれ好きなことをしていた。
「おはよう!ミキ君。あと5分で私たち現場に向かうよ!急いで!」
「ミキ、、、その様子だと道に迷ったな。最初は仕方ないよ」
「ミッキー!本当ごめん!ジュースで勘弁して!」
3人と会話している時間すらないので急いでロッカーへ向かい手に持っているABDや戦闘服を無理やり詰め込んだ。整理整頓は後でやろう、、、
早速バーテックスでも使った黒ベースの青と緑配色のトレーナーとズボンを着てそれとつま先からかかとにかけて青から緑に変化するスニーカーを履き準備完了。
「ミキ君準備いい?さあ行きますか!」
河野ちゃんがそう言い立ち上がるとそれに続いて佐倉カイセイやナナミも立ち上がった。隊員室の扉を施錠して河野ちゃんに続いてテクテク歩いていく。僕は行く場所が気になってナナミに聞いてみた
「ナナミ!これどこに向かっているか分かる?」
「ん?合同演習ルームだよ!ミッキーもしかしたら初めてかも!」
4人はエレベーターへ乗り河野ちゃんが地下3階を押すと下へ動き始めた。地下3階はいつも練習している演習ルームがあるところだ。地下3階のエントランスを左へ抜けるとたくさんの塾が見える。その奥へ向かうと交差点にぶつかる。そこを右に曲がりその後も進んでいくと、、、
「ミキ君!ここだよ第1合同演習ルーム!今回の合同練習は1802小隊と私たちでタッグを組んでジュウシンを倒す訓練をする場所だよ」
河野ちゃんが扉の前に再び隊員証をかざすとドアのロックが外れた音がした。その扉を開くと中は演習ルームの3倍以上広いかつ高低差のある入り組んだ地形が完全に再現されている。一面真っ白だが障害物や高台を区別するため灰色に塗り分けられている。ここは完全に本番を想定した訓練施設だ。
その部屋の右奥に扉がありそこに入っていくとわずかな休憩スペースがある。そこにあるテーブルの上に水筒などの荷物を置いて合同演習ルームを出て隣の管理室へ向かった
ウイーン!
「ちっす。こちらの事情で3分ほど合同演習の開始が遅れると見込んでいる。先に1802小隊が奥で待機しているから挨拶しとけ」
そこに現れたのはエリザベス、彼女も準備に忙しいのか一言僕たちに伝えると急いで別の部屋に向かっていった。4人は指令室の後ろ通路を通る。右を見てみるとあの指令室にもあったほど大きな巨大スクリーン、複数の巨大コンピューターにオペレーターが使うであろうディスプレイなど様々な機材が揃っていた。部屋の中が暗いのでアニメで見たことのある如何にも指令室って感じの所だ。そこの中央部に3人が固まって何か話しているように見える、、、
よく見てみるとそこには白石さんと佐倉カイセイの専属新座さん、河野ちゃんの専属と思われる栄進の若い男の人3人に他見たことない4人の計7人で何かについて話し合いをしていた。今回の合同演習にあたってオペレーター同士で連携を取れるように確認しているのだろう。
すると白石さんがこちらの様子に気が付いて笑顔になり手を振ってくる。僕はそれの返事としてウインクしながら手を振り返していると
「ミッキー、、、あの人と仲いいんだね。いいなぁ、、、」
ナナミの顔を伺ってみるとどこか寂しそうな表情を浮かべていた。
奥の待機室に向かうとそこには1802小隊と思われる4人の男女の姿がいた。河野ちゃんの話によると2組の男女2人と4組の男女2人に構成されていてそこそこ強いんだとか、、、
「こんちわー4人とも!話は聞いてるよ!三木ハルト君でしょ?私も藤原君との試合生中継で見てたから、、、」
すると隊員の女性がこちらに話しかけてすぐ僕の目の前に行き上目遣いで話しかけてくる
「私、1802小隊の隊長の朝比奈サヤカって言います。よろしくね!!」
「どうもー」
「なんかナナミちゃん雰囲気変わった??久しぶりに見たら前より何か女の子らしくなったような、、、」
「、、、あんたの言うほど私は変わってませんけど」
「ふーん、、、そう振る舞っても心の奥底は丸見えだけどね」
「カイセイとマイちゃん!相変わらず仲いいねぇ!もう付き合っちゃえば?」
「おいサヤカ!俺はマイのこと好きではねーし!友達だとは思ってるけど、、、」
「ねぇーサヤカちゃん冗談はやめてよ!私カイセイのことはライクだよ!!」
「、、、(マイ俺のことライクなのか?)」
「はぁ、、、」
相変わらず佐倉カイセイは分かりやすすぎる。僕は耳元で彼にフォローしておいた
「こんなところでラブって言うわけないだろ!アホか!彼女は賢いんだぞ、、、お前を困らせようとしているだけかもしれない」
それを言うと佐倉カイセイの気持ちは晴れクールに見せてはいるがハイテンションになっているのは一瞬で分かった。本当はこいつは分かりやすすぎる。賢いのかバカなのか分からない。
「まぁ!とりあえず1時間後にお互い頑張りましょう!」
するとサヤカは隊員の他3人を連れてきて僕の目の前にやって来た。どうやら一人一人自己紹介を始めていった。4組の二人の自己紹介を終えたあと奥からオレンジ色の戦闘服を着た僕と同じくらいの身長の小柄の男がこっちへ向かっていくそうして彼が口を開いた
「ミキ!俺のこと覚えているか?エイジだよ、四方エイジだ!」
「、、、全く。誰ですか?」
「ああ!覚えてねぇか!こういえば分かるかな?5年前ジョウホクの公園でよく遊んだじゃん!近くの店で悪さしとった時に叱られてずっと鼻水垂らして泣いていた泣き虫のやつ!!それ俺だよ!」
「あああああ!!あの時のエイちゃん!!生きてたのかあああ!!」
「お前も死んでたと思ったよ!生きてて何よりだ!感動の再会ってやつだな!ヘヘへへッ!」
今日にしてようやくジョウホク時代の旧友に再会することができた。彼は一体あの後どのようにして生活していたのだろうか?




