<第6話> 出会い
ミカサ中心部は天まで届きそうなくらい高いビルが密集していて都会にも関わらず緑豊かで空気がとても澄んでいる。歩く人たちも色とりどりのきれいな格好をしたスーツ姿の男性や女性が全員で土で汚れたような薄汚い格好している人はいなかった。僕だけが貧乏人でこの人たちから白い目で見られているようなそんな気分さえ感じてしまう。
ミカサの中心部から少し離れた場所に市街地がある。僕とエリザベスはバイクに乗り細い路地を抜けとある小さな制服屋に着いた。エリザベスが扉を開けるとドアの上部分についている鈴が鳴って奥から店の主と思われるおばあちゃんがやって来た。
「いらっしゃいエリザベス。何の用だい?」
「こいつの制服を作って欲しいんだ。できれば明日までに」
「そんな無茶なことを!制服を作るのに最低でも3日かかるんだよ」
何度も何度もお願いするエリザベス。エリザベスはなんとしても明日には入学させたいらしい。僕もエリザベスに続いて何度も頭を下げた。するとおばあちゃんが
「1から作るのはさすがに半日じゃできないよ、でもこの子の制服のサイズが家の倉庫にあるならばそれを渡すことができるが?それならどうよ」
エリザベスはその提案に首を縦に振った。僕も再びお辞儀をして礼を言う。
おばあちゃんは再び奥のほうへ消えて僕のサイズにあう制服を探しに行ってくれた。
するとおばあちゃんがやってきて
「少し大きめだけどこれなら着れないことはないわ」
実際に箱から取り出して制服を見てみた。特に変わった様子はなく学生ボタンと白いYシャツ、学ランが入っていて普通の男子制服である。襟のところにミカサ中の校章と思われる緑のピンバッジが付いている。僕が試しに着てみたところおばあちゃんの言う通り袖が若干長く指が隠れてしまう。ズボンも地面についていて下をめくると埃で白くなっていた。でも着れないことはないので僕はこの制服を着ることを決めた。そのほかにも僕のサイズに合いそうなシャツやズボンをエリザベスは購入しこの店を後にした。
「お金は僕が払わなくていいのか」とエリザベスに質問すると
「あんたが考えることではない」と返して来た。そしてすぐに薄汚いTシャツを脱いでうす水色の新しいシャツに着替える。
僕は再びバイクの後部座席に乗り細い路地から大きな道路に合流した。
大きな路地出てすぐにバイクは止まった。今度は写真屋だ
「いらっしゃい。あ!エリザベスさん!」眼鏡をかけた優しそうな兄さんだ
「こいつの写真撮って欲しいんだけど!」と言って人差し指を向ける
「分かりました!どうぞー」
僕はわけも分からず目の前にあった丸椅子に指示通りに座って
「あご引いてねー」
パシャ!
「もう一枚ー」
パシャ!
「はいおしまいー」
写真やが言うには出来上がるのは後日のことらしい。エリザベス曰く学生証を作るために必要だとか。代金を支払うためにエリザベスは財布から硬貨を取りだして
「ありがとうございましたー」
僕とエリザベスはここに用が済んでこの店を後にした。再びバイクに乗り市街地を駆け巡る。
このあたりの街は僕の住んでいたジョウホクとは違く家や店、道路などがきちんと整理されていて行きかう人々はみんなそれなりに裕福で一人でふらついてる子供や路上に倒れこんでいる中年、怒号が飛び交う喧嘩なんて到底見かけそうにはないと思った。5年前住んでいたカドガウラもこんな感じだったかな。どこか懐かしい気持ちになる。
そんな思いに更けているとエリザベスが、
「着いたぞ」
そう言ってバイクから降りる。僕も続いてバイクから降りると
その中央に花を咲かせていない桜の木が両サイドに決められた間隔で植えられている。桜の花びらは散り散りと少ないが落ちていて木はしっかりとした緑色で夏に向けて力を蓄えてるような気がした。その奥を進むと「私立ミカサ中学校」と「私立ミカサ高等学校」と書かれた門に巨大な建物が5棟あった。
僕はいままでたくさんの学校を見てきたがこんなに大きな学校は始めて見る。思わず息をのんだ。
明日からこんな立派な学校に通うのか。少し心配になって来た。
するとエリザベスが
「ここで待ってなこの学校を案内するやつ呼んでくるから」
そう言ってバイクに乗って校門の中に入っていった。
突然一人になった僕は近くにあったベンチで一人座っていた。
そしたら校門からあの制服屋で見た学ランを着た学生が出てくるのが見える。その男子は一緒にいた友達と仲良くふざけ合いながらワイワイ楽しく下校している。その時初めてこの学校の女子制服を見た。紺色がベースで胸元にはやはり緑の校章が付いている。女子は校門前で誰かを待っている。恋人かそれとも友達か
校門から出てくる様々な生徒をじっと観察しながらいつになったら案内人が来るのかと疑い深く待っている。
エリザベスが行ってから30分経った。「さすがに遅すぎないか?」僕はあまりにもこの時間が退屈だったのでベンチに座ったまま顔を伏せてしまった。
「三木ハルト君だよね?」エリザベスよりもずっと若い女性の声が右耳から聞こえてくる。
「はい」と言って顔を上げ右に振り向くと僕の座っているベンチの横には
服を着ててもわかるきめ細やかな細い手足、髪は肩にかからない程度でポニーテールで若干青の入ったYシャツ、華奢な体なのに女性らしいボディライン胸の大きさがYシャツ越しでもわかる。目鼻立ちがとてもくっきりしていてとてもかわいらしい20代前半の女性がいた。
「私ミキ君を案内する白石ルナって言います。遅れてごめんね。」
彼女の笑った顔は今まで抱いていた新たな土地での不安を一気に吹き飛ばしてくれた。
その時の僕は恥ずかしい気持ちを隠そうと必死だったが顔は真っ赤になっている。