<第45話> バーテックストライアングル
次の日の放課後、「菅原アツヤ」について新しい戦闘データを取りに藍田塾へ向かった。説明していなかったが演習ルームでレプリカにインストールしていた過去の戦闘記録は一度藍田塾で調べたものを分析してダウンロードしている。追加で練習プログラムを入れたいなら塾に行って相談しなければならない。「菅原アツヤ」は次のバーテックス対戦相手である。
藍田塾に入るといつもいるはずの白石さんは受付の席を外していた。代わりにその隣に座る佐倉カイセイのオペレーター「新座」が僕の担当をしてくれた。
「ミキ君どうされましたか??」
「菅原アツヤについて過去の戦闘データを取りに来ました」
「なるほど!こちら側で調べておきますね。時間少しかかるけどいいかな?」
「分かりました、、、、ところで白石さんはどこへ行ったのですか??」
「白石さん??今日新しく入ってくる隊員の手続きをしているけど??」
「誰ですか?名前分かりますか??」
「確か、、、神田アオイって言ってたような気がしますよー」
白石さんの新しい担当選手にアオイが入って来たのか。アオイはかなり強いので藍田塾でも看板張れるほど優秀な選手になってくれるだろう。
「ああそうだ!白石さんからミキ君に渡してほしいものがあるって」
新座さんが渡してきたのは「バーテックスID」と書かれた携帯電話くらいの小型デバイスだ。
「これはバーテックスの戦績や状況などのバーテックスに関するすべての情報を見ることができる「バーテックスID」っていう端末だよ。ここに<SUB 1st>って書いてあるでしょ??これが現在のミキ君のバーテックストライアングルの階級クラス。バーテックストライアングルっていうのは<バーテックスオバーロード>を頂点にしてその下が<クイーン>,<ルーク>,<ビショップ>,<ナイト>,<ポーン>と続く。ここまでが正隊員。この下の<SUB> 1から6までは準隊員。ミキ君の場合はペナルティによって強制的に<SUB 1st>まで昇格してて試合のマッチングも正隊員としか当たらないようになっている。ここのBP<バトルポイント>がマックスになると上の階級に昇格して0になると下の階級に降格する。だけどミキ君は最後の関門まで到達しているから負けてもBPは減らない。正隊員に1勝すれば<ポーン>に昇格できるっていうこと!」
僕は「バーテックスID」の使い方も兼ねて佐倉カイセイの階級が知りたくなり検索欄から名前を撃ちこんでみた。
「佐倉君の戦績ね!これを使って説明するよ!一番左が勝利数と敗北数に勝率。それと階級もね!ちなみに佐倉君は<ルーク>だよ。右にはランキング、、、現在佐倉君は学年5位にアブトル内で29位だね。だいたい階級区分はアブトル内のランキングで<バーテックスオーバーロード>と<クイーン>はそれぞれ10人<ルーク>,<ビショップ>,<ナイト>がそれぞれ20人ずつ。それ以外はみんな<ポーン>だよ!上級生もいるからトップを狙うのは厳しいけど中学1年生でも<ナイト>選手はいるからミキ君も上を目指して頑張ってね!」
「あれ??ミキ君??」
アオイとの面談が終えた白石さんが新座産の机の方へやって来た。
「新座さん説明してくれたんですか!ありがとうございます!そう次の対戦相手の菅原君は学年2位で<クイーン>級の慶優館看板選手だから!!本当に強いよ!!頑張ろう!!」
「頑張ります!!」
「よし!菅原アツヤ選手の戦闘データダウンロード完了したよ。はい。これで頑張って!!」
新座さんから戦闘データを入れたUSBを受け取り藍田塾を出るとエリザベスと会話しているアオイを発見した
「じゃあアオイ。今度はABDを作りに行くか」
「わかりました」
「、、、あんたか。とっとと演習ルームに行って「見切り」の練習でもしろよ」
アオイの戦闘準備はエリザベスがサポートしてくれているのか。エリザベスは相当彼女を期待しているみたいだ。
僕はいつも利用している演習ルームに引きこもり菅原アツヤの戦闘ビデオを見て分析を始める。奥田ミヤビよりは少し小柄だがそれでも身長は170はとうに超えている。彼は数々の賞を貰っているスパースターレベルではなくもはやヒーローに近い。各地に遠征していて様々な土地のジュウシンを討伐している。所謂えりすぐりのエリートだ。
ABDは「オービット」という名前で自分の体に回り続ける「衛星」を纏わりつけて距離計算を正確に行いながら円軌道で進むビームを炸裂させる。さらにその軌道は横だけでなく縦、斜め、大小さまざまで隠れ起動と言われる見えないビームやイレギュラーで飛んでくる弾。スピードも様々とバリエーションが豊富。工夫次第で戦術を大きく変えられる最強クラスのABDだ。
さらにこのABDは攻撃面だけでなく纏わりついている衛星を空中で設置することで動かないビームトラップを作り出せる<アステロイドベルト>。さらに纏わりついている衛星自体がシールド効果がある。最終的にアブトル内でも最強とまで言われるクライマックス「スーパーノヴァ」は全エネルギーを放出することで相手選手ごと巨大爆発に巻き込むというチート技がある。ちなみにスーパーノヴァを食らってまともに生き残った選手はいない。
さすが<クイーン>級の選手。全てにおいて完璧と言わざるおえない。スーパーノヴァを行うまで倒すしかない。彼は1803小隊でミヤビと同じ隊である。
、、、と勝てる要素がどこにもないような気がするが。レプリカに戦闘データをインストールして早速実践を開始する。
ううう!!!一歩も近づけない!!
レプリカは一歩も動かないで多種多様の衛星をバンバン撃ってくる。止まることなく降り注ぐ衛星の雨にガードするのがやっと。様々な方向から飛んでくる弾を振り返りながらライデンで盾構える。攻撃なんてできるわけがない。その後さらに恐ろしいスーパーノヴァが来るのに!!
「仕方ない!システムオーバードライブ使うか!」
エネルギー体に変化しながらエネルギー弾をすり抜けていきレプリカまで詰め寄る!!するとレプリカが慌てる素振りを見せる!
「そういうことか!!」
菅原アツヤの戦法は自分の射程距離を常にキープしながら戦うからわけも分からない方法で詰め寄られたら自分の範囲で対処できなくなるのか!中距離で戦う選手の欠点である。近距離に詰められたら終わりってそういうことか!!
だが菅原アツヤは違う。近距離でも衛星軌道を用いて攻撃してくる。纏わりついてる衛星自体を回転させて実質剣の役割を持っている。全距離対応とかバカげてる!!!
シュパッ!!!ビビビビビ!!!!
一発の被弾が命取り。その後は隙を見せず怒涛のエネルギー弾のシャワーだ。僕はきれいさっぱり洗われて試合終了。強い、、、強すぎる、、、佐倉カイセイとか奥田ミヤビのレベルじゃない。クライマックス使われる前にこんなにボコボコにされるって、、、これが最強の戦士か、、、
その後何百回と挑戦したが全て敗北。バリエーションが多すぎてコツが掴めない。中長距離は相手側が有利。自分が得意なはずの近距離は太刀打ちできず。その後ろにスーパーノヴァが控えているのにも関わらず!バーテックスで初めてこいつには勝てないっていう相手を見つけてしまった。レベルが違いすぎる。<クイーン>クラスになるとどんな状況でも対応できるスキルを持ち合わせなければならない。バーテックスの恐ろしさを再認識した。
「ハルト君!!」
演習ルームへ白石さんがやって来た!
「第1種免許の試験日決まったよ!明後日3年1組の教室放課後で試験やるから!監督はエリザベスがやるらしいから準備よろしくね!」
バーテックスも大事だが試験も大事だ。今日はやめにして試験に集中しよう。




