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<第17話> 個性探し

僕はアラームの音でソファから起き上がり毛布をたたんで部屋の電気をつけた。外はまだ薄暗く鳥の鳴き声がちらほら聞こえてくる。昨日食べたミカンが頭の中でうじゃうじゃと湧いてきてどこか気持ちが悪い。



「おはよう、、、」



白石さんが目を半分閉じたまま話しかけてきた。白石さんのすっぴん姿を初めて見た。肌はとてもきめ細かくて美しくすっぴんと普段あまり変わらないようにも見える。僕も続くように「おはようございます」と返す。白石さんが手首についているヘアゴムで髪を縛りキッチンに向かい弁当の支度を始める。



「ハルト君今日は一緒に出ようー」



白石さんは早く起きた僕のために朝食も作ってくれた。目玉焼きとベーコンでどこにでもある普通の朝食だがいつものこと、、、美味い!!そのあとに続く言葉を失うほど美味い!!朝食を終えると白石さんから弁当を渡されて、



「ハートはさすがにやめといたよー!アブトル行くんでしょ?頑張って!」



僕はその優しい言葉にうっとりしながら返事をし制服に着替えて白石さんと一緒に家を出た。



学校に着くと白石さんは昇降口に向かうというので正門前で別れて僕は直接階段を上りアブトルのエントランスへ向かった。




朝のアブトルはあまり人がいなく演習ルームがどこも開いているので快適だ。とりあえず1番近かった第1演習ルームに今日は入ってみよう。昨日と同様レプリカに佐倉カイセイの過去全戦闘データを読み込ませてあいつの動きに近くなるようにプログラムしてもらう。もちろん佐倉カイセイの使っているABDも全て。するとレプリカは体格だけでなく佐倉カイセイの使っている武器まで完全に再現してくれる。、、、よしインストールが完了したみたいだ早速始めてみよう。、、、実際に試合を始めてみると昨日戦ったレプリカとは圧倒的にスピードが違くライデンで攻撃を防ごうとしてもそれを全てすり抜けて急所を確実についてくる。やはり佐倉カイセイは強い。ころころ武器を変形させて精神を惑わしてくるこれも一種の彼の戦い方なのだろう。



今日もこのレプリカと何十試合と繰り返して一本も勝ち取ることはなかった。だが成果は何も得られなっかたわけでもない。佐倉カイセイには攻撃バリエーションが非常に多いとはいえある程度パターン化された変形を行って攻撃してくることが分かった。試合を何度も何度も積み重ねていけば佐倉カイセイは攻略できる!少し自信が持ってるようになった。、、、試合を終えて演習ルームの扉を開けて外へ出ると僕の前に見知らぬ人が立っている。



「ん?こいつどっかで見たことあるな、、、あ。佐倉カイセイと戦ってボコボコにされてたやつか」



そう言ってきたので僕は「何の用?」と言い返したら



「馬鹿にしてないって。佐倉カイセイに立ち向かうだけすごいだろ」



よく見るとその人は自分よりも身長は高く半袖を最大限まで巻き上げタンクトップみたいになっている。碇の刺繍が似合いそうなほどの仕上がった上腕二頭筋。1階のジャンプでABDなしでも1メートル半は軽々飛び越えられそうな太ももを持つ足。その顔はいかつく坊主頭から少し髪が生えたような姿をしている。



「もしかして朝練初めてか?」



「そうだよー」



少し話してみると名前は竹下ミツルというらしくて僕と同じく正隊員を目指す準隊員だ。この誰もいない朝に演習ルームを借りてウエイト系のトレーニングや対人戦の練習をしている。



「ミキ。どんな武器使ってるか俺に見してくれよ」



そう竹下が取り出したのはとても大きくごつごつしていて試しに竹下から武器を借りて持ってみると非常に重く振り回すことなんて到底できない。名前はコンゴウと言う武器でDH種のハンマーに該当するらしい。竹下はそのハンマーを苦しい顔を見せずに簡単に振り回す。すごい!準隊員のなかにも個性的な武器を使って努力している人たちがたくさんいるんだなと感じた。それと同時にたかが2週間で強くなれるのかという不安も湧き上がって来た。



「僕はライデンを使ってるよー」と言い武器を見せてると竹下が武器と僕の目をじっと見比べながら



「お前。これよりもっと向いてる武器他にあるんじゃねーか?」



竹下は僕にアドバイスしてライデンを返した。



「どういうこと?」



「ライデンとお前はパズルでいうとピース同士はまってはいるけどその中には少し隙間がある。ミキのもつ凹凸をしっかり埋めてくれる武器はたくさんのピースが入った箱にまだ埋まっているんじゃないか?」



そう言われてなんだかわかるような気がした。僕は武器たちの中から消去法で自分に合いそうだからライデンを選んでいるだけで最高の武器に出会ったわけではない。



「ミキが自分とばっちり合うピースを見つけたとききっと佐倉カイセイに勝てると思う」



竹下の目はなんだか透き通っていて僕の何かが見えているんじゃないかと思う。竹下曰く当の本人もまだ自分に合った戦闘スタイルを模索している途中で武器を手に取った時その武器が持ち主にふさわしいか感じ取れるようにいつの間にかなったみたいだ。すると朝一発目のチャイムがアブトルにも流れる。すると竹下が別れ際に、



「ミキ!明日の朝も来ててくれよな!」



と言ってきたので



「うん!絶対に行く」



僕は初めて心の底から分かり合えそうな友達と出会えたような気がした。その後竹下とはずっと一緒に戦っていく仲間でもあり親友になっていくのだがこれはまだ先の話である。竹下は僕の隣のクラスで会おうと思えばいつでも会える状況であった。僕は急いで教室に行き机に座って待っている。



「んじゃ出席取るよ、、、ナナミまた来てねーのかよ!」



相変わらず2個前の席は空いている。特に何もなくホームルームは終わったようだ。



授業間の休憩時間に河野ちゃんに昨日の作戦お疲れ様と言いに河野ちゃんがいるロッカーへ向かう。そこには河野ちゃんと佐倉カイセイが二人で仲良く会話をしていた。河野ちゃんが佐倉カイセイのロッカーに隠してあるスルメイカを頂戴とおねだりしている。その時の佐倉カイセイは俺に見せる表情とは別、笑顔で河野ちゃんの口に運んでいる。要するにあーんってやつだ。あいつの言っていた「特殊推薦は周りからチヤホヤされる、、、」のチヤホヤしているの主語は河野ちゃんのことじゃねーのかよっと突っ込みたくなった。、、、佐倉カイセイがこっちに気付いてどこかへ行ってしまう。



「待ってよーカイセイー」



河野ちゃんが佐倉カイセイを追いかけた。佐倉カイセイも面白いところがあるんだなぁと彼にどこか同情する気持ちが芽生えた。あいつはただの悪いやつではない。



そんなこともあったが普通に授業前にはもどってきて1時間目から6時間目までみっちり授業をした。



「んじゃ。今日も終わりまた明日」



エリザベスがそういうとみんな騒がしくなり教室を出たりする人も現れ解散した。白石さんが今日も僕に近づいてきて



「約束通り開発・製作所に行ってみよーよ!!」



と言い白石さんの後ろへついていきアブトルエントランス奥のエレベータに着いた。





エレベータに入ると白石さんは地下4階のボタンを押す。地下4階に着くとそこに広がっていたのは小さく区切られた窓ガラスから除くことができる研究所がたくさん存在する一つの街のような状態になっていた。ABD開発部という場所に白石さんは向かっていきそこの扉の前についているインターフォンで



「藍田塾の白石ですー」と言うと扉のロックが外れ35ルームに向かってくださいとアナウンスが入った。



「失礼しますー」と白石さんが扉を開けるとそこにいたのは



少し太めで青とオレンジの繋ぎをきた見た目優しそうなお兄さんが椅子に座ってコンピュータを注視していた。こちらに気付いて振り向くとパソコンを閉じて



「あ。白石さんお久しぶりですー」と言い僕の顔を見て



「初めましてミキ君。僕の名前は門脇。ABD開発部に所属する君のためにABDを作る担当だよー」



優しく迎えられて僕はこの人だったら自分にピッタリな戦闘スタイルを見つけてもらえるのではないかと少し嬉しい気持ちになった。

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