<第16話> 禁断の果実
地下3階にある演習ルームに到着した。18時には演習ルームのパソコンモニターで作戦の様子が配信されるみたいなのでその間たまたま空いている第16演習ルームに入り佐倉カイセイを倒すためのトレーニングをすることにした。
今回は別の武器を触ってみようと思ったのでSHではなくDHの武器をロッカーの中からゴソゴソとかき分けて武器を取り出してみる。
、、、持ち手は細長いがその上部に大きな鎌のようなものが付いている。この武器はJ-1908と呼ばれ大きな鎌の形がJの文字に見えることからJと呼ばれるようになったそうだ。持ってみると比較的に軽く特に変わった性能はないがアビスよりも攻撃に勢いがあるのにも関わらずアビスと同じくらいの重さということで使いやすいと思った、、、が僕はこの武器が個人的に合わないかなと思った。僕の性格上両手で持つ武器よりも軽くて扱いやすいものが良いなと感じた。
軽そうな武器をロッカーの中から無我夢中に探しているとGN種のハンドガン・ウォーエンダーを発見した。エリザベスの持っているハンドガンとは全然違う。トリガーを引いてみると銃口からものすごい勢いで光線が噴出して反動が大きく体が反り返ってしまった。この武器はどうやら一発一発当てることに重点を置いていて当たれば高威力の武器だが非常に弾速が遅く弾数が少ないため慣れるまでものすごい時間がかかる超上級者向けの武器だ。残り2週間しかないので磨くのにはあまりにも時間がかかるのでウォーエンダーは諦め別の武器を探した。
軽めの武器とロッカーを豪快に漁っているとOT種に属するサッカーボールと同じくらいの球体が出てきた。これはコメットと言うらしくこれをターゲットに向けて投げるとその方向に落ちることなく真っすぐ飛んでいきターゲットの周りをグルグル回って妨害しつつコメット自身が四方八方から光線銃を放つ。バーテックスにはあまり向かないがジュウシンの動きを妨げたり罠を張ったりするときに使える優秀な武器だとは思う。
今日も自分に向いてそうな武器が見つからなかったのですべての武器を元ある場所へ整理整頓してライデンを取り出す。ルーム内のコンピュータを起動してバーテックス専用の人型レプリカが見つかったのでルーム中央にだしてみる。するとパソコンモニターには読み込む選手を選択してくださいと書かれていて。とりあえず過去の佐倉カイセイの戦闘データを全てコンピューターに読み込ませた。中央のレプリカにデータインストールが成功するとレプリカの両手に佐倉カイセイが使っている刃剣を持ち始めて体格も全て佐倉カイセイに合わせられていた。早速戦闘を始めて見よう!!
、、、レプリカだとはいえめちゃくちゃ強い。自分が戦いやすいように佐倉カイセイ特有の変形武器などはダウンロードを止め体格などの身体的ステータスしかレプリカに反映させてないがこっちの動きを全て予測してガードや回避してさらに僕に動きの粗が見つかればすきをついて攻撃してだいたい倒される。あのレプリカに何十試合と挑んだが一度も勝てない。
気が付くと6時を回っていた。慌てて練習を一時中断して演習ルーム内のコンピュータで1801小隊の配信を開いて見てみる。
1801小隊の目の前にいるのは会議でも言っていたトカゲのような形をしているジュウシン。特徴はしっぽに放電機関を持っているらしくそれを地面に直接差し込むことによって生物や人間、建物を内部から破壊していくという恐ろしい怪物だ。基本作戦では安全に作戦を遂行しなければならないのでこの放電を起こす前に倒すとエリザベスは言っていた。
佐倉カイセイが勢いよくジュウシンに近づいていきある程度離れたところから手裏剣を投げた。ジュウシンは手裏剣を確認して強靭な脚力で手裏剣をかわして佐野カイセイに牙を向けて突進してくる。
ーバヒューン!!。
高台からものすごい音がする。その方向にいたのは河野ちゃんだ。さっき担いでいたスナイパーライフルをジュウシンにむけて発砲している。ジュウシンの頬の部分にヒット成功。だがジュウシンは佐倉カイセイと河野ちゃんに向けて口にエネルギーをため込んで
ズバババーン!!!!!
放電を作戦で聞いていたしっぽからではなく口から出していた。しかも一瞬ではなく15~20秒にわたってひたすら口から噴射している。
、、、だが外壁に一切被害がない。なんと河野ちゃんが左手に水色の球体を持っていてそこから出る水色の光がが自分と佐倉カイセイさらに壁をしっかりガードしたのだった。
その隙に山崎ナナミがジュウシンに向かって走って行き両耳につけていたイヤリングの左耳だけ外しジュウシンの真上に向かって投げる。すると山崎ナナミの耳についているイヤリングがピンクに発光してジュウシンの真上空中にテレポートした。山崎ナナミがジュウシンのいる真下にアビスを向けて思いっきり投げた同時に佐野カイセイが合図をして壁に刺さっている手裏剣を呼び戻した。
ジュウシンは口からの放電をやめ自分の体を守るべく尻尾を地面と接続して放電を開始したが真上からアビス斜め後ろから手裏剣がジュウシンに向かってやってきてかわすこともできず手裏剣は左足と尻尾を引き裂いてアビスはジュウシンの脳天を勝ち割った。ジュウシンは悲鳴を上げ体が青白く輝き自爆した。
僕はこの討伐作戦を見て正隊員は思っていたよりもずっと優秀でありさらに個性のあるスキル。この二つを持ち合わせていなければならないと確信した。僕もできるだけ早く正隊員として認めてもらいできるだけ早く自分に合ったスタイルを見つけなければと思うようになっていた。
僕はこの後もレプリカとひたすら試合を行う。結局レプリカに今日は1度も勝つことは無かった。、、、気が付いた時には閉館の夜10時になっている。
「ハルト君お疲れ様ー」
演習ルームから出ていくと扉のまえには白石さんがいる。僕に気を使ってあえて演習ルームに入らず扉の前に待っていたようだ。
「白石さんもお疲れ様です」
「いいのいいの!私ずっと指令室にいただけだから」
「、、、あのジュウシン尻尾からではなく口から放電してましたけど、、」
「そうね最近ジュウシンも変わってきているのよね。だから河野さんみたいなシールドを張ってくれる隊員が1人でもいると安心できるの」
僕はふと白石さんに一つ質問してみようと思って
「どうしたら僕に個性がでると思いますか?」
と聞かれて白石さんは「うーん、、、」と考えた挙句
「あ!!!忘れてた!ハルト君専用のABD作ってもらおうよ!佐倉君に勝つためにはまずそこから始めなきゃ!」
そう言ってすぐ白石さんは携帯電話を取り出し誰かと通話し始めた。電話の相手は男性のようだ。
「アポとれたよ!明日開発・製作所に行ってみよう」
僕は白石さんと二人でアブトルを後にした。
家で夕食をとっていると冷蔵庫からオレンジ色の球とは言えないでこぼこして粒粒の入った気味の悪いものを持ってきた。
「これ何ですか?」と質問すると白石さんは丁寧に
「これはミカンっていうの。食べてみて!甘くておいしいよー」
白石さんは粒粒の殻を取り去ってそのうち10分の1くらいのひとかけらを僕に渡してきた。僕は恐る恐る口に運んでみると。
美味い。このみずみずしさ噛むと口の中に甘い液体が広がる。その液体はどこにも穢れはなく緑のある小さな小川に湧き出る水のように流ちょうにさらさらとのどに流れていく。このミカンという食べ物は遠く忘れられた場所の記憶を一部蘇らせる魔法を持っているような根拠もないのにそう感じざるおえなかった。
「白石さん。あなたはどこからやって来たのですか?」
なぜかミカンというものを食べたのち洗礼を浴びたように生まれ変わってしまった僕は理由もわからず蘇った記憶をそのまま音読するかのように言った。
「私はこのミカンがたくさん採れるミカンの国からやって来たんだよ」
そう白石さんが僕に笑顔で言うと僕はミカンを握りしめその言葉は事実なのか心のなかで再確認する。だが白石さんの雰囲気から嘘をつく大人の風は吹いていない。だがなぜこのミカンという食べ物をいままでずっと知らなかったのか。
僕はなぜか急に白石さんを信じられなくなり彼女は一体何者なんだと深く疑ってしまった。




