<第13話> 嫉妬
佐倉カイセイ
僕よりも10㎝ほど背が高く日々訓練しているのか筋肉がしっかりついているにも関わらず全体的にすらっとした細い体格。彼の両手に持っている武器はABDのサイドについている6枚の赤く光る刃を任意の枚数手に取りその刃を組み合わせることで武器をその場で作り戦闘の状況に応じてスタイルを変えていく戦法なのだろう。目は切り長で鼻は高く美形と言えるだろう。髪型は流行りのマッシュヘアーってやつだ。その容姿からかモニターの奥には多くの女性観戦者が黒いうちわを持って黄色い声をあげている。新人と正隊員の試合とあって多くのアブトル隊員がこぞって注目しているようだ。
戦闘開始のブザーが鳴った。
佐倉カイセイが何もしないで棒立ちしている。
僕は真っ先にライデンを横に振り真空波を出す。それと同時に波の背後に居合わせてダッシュし佐倉カイセイの目の前まで詰める。
僕は縦にライデンを振り佐野カイセイの頭に向かって叩く。やったか??
「おいおい新人。正隊員を舐めないでくれる?」
佐倉カイセイ右手の剣に刃を追加で2枚装着して一枚板のシールドに変形。左手で持ってた剣の刃を全て太ももにある黒いサポーターへ差し込んで
ーおらおら!!新人さんよー!
左足で思いっきり僕の腹を蹴った。左脛には赤い刃が突き出していて左足丸ごと武器と化していた。ライデンで出した真空波や直接攻撃は右手のシールドですべて防いでいる。
うわあああああああ!!!!
僕の腹は左足の赤い刃に貫かれて終了のブザーが鳴った。
「特殊推薦枠思ってるほど強くないな。期待して損したな」
まだ終わったわけではない。まだまだ打開のチャンスはある。僕はすぐに立ち上がり2本目に備える。
2本目。戦闘開始のブザーが鳴り始める。僕は佐倉カイセイの様子を見て彼の行動パターンを全て把握することから始めた。
「生存時間稼ごうってか?そうはさせないぞ」
すると佐倉カイセイ足のサポーターから2枚の刃を回収して左手に剣を持つ。右手を一枚板のシールドから1枚ABDに戻して3枚の刃で手裏剣のようなものに変形。
素早い動きで一瞬にして僕の前まで詰めてくる。あのスピードただABDをつけただけでこの速さなわけがない。彼のスピードは積み重なる努力で最大限のスピードを生み出しているのだ。考えている隙の間に僕の数倍以上の速さで空間を切るように攻めてくる。
左手の剣で縦横無尽かまいたちのように素早く切り刻む。僕はなんとかライデンを構えなんとか攻撃を防ぐ。
その時右手に持っていた手裏剣を僕の目の前で投げてきた!手裏剣は僕の顔の前で回転し始めて。その側をすり抜けた。なんとか避けてみせたが、、、その後ろから。
ーーーヴン!!
僕の首の後ろで回転音が鳴り。僕の首は無残に切り裂かれた。
「もう終わりかよ」
僕が倒れている合間佐倉カイセイが投げた手裏剣が右手に帰ってきてボソッと言った。終了のブザーが鳴る。
僕は最後の1戦に備えた。この時点で僕の負けは確定している。
3戦目の開始ブザーが鳴り始める。僕は慎重に佐倉カイセイがもつ変形武器をすべて見るためにしぶとく耐える作戦でいこうと決めた。向こうから直接攻められないように一定の間隔を空けて戦うようにする。
佐倉カイセイは両手の武器を6枚の刃に戻して手裏剣に変形しこっちに向かって2つ投げてくる。
「1つは手裏剣か、、」
僕は正面に来た手裏剣2つを回避してすぐ背後を確認。背後の手裏剣をなんなくかわした。
「推薦枠。学習能力だけは早いじゃねぇか」
すると佐倉カイセイ右手を剣に左手をABDに戻した。
「これは剣とキックブレード、、、」
さっき同様佐倉カイセイが詰めてくる。僕は佐野カイセイの詰めるタイミングに合わせて後ろに移動。一定の間隔を保ち続けた。
「ちょこちょこ動き回るなよ!雑魚が!!」
佐倉カイセイの平常心が少し乱れ始めてきた。佐倉カイセイ焦ってか両手の武器の選択に迷っていた。その中には剣、手裏剣、シールドの他に出すものが無くなったのだろうか。
「これで全部か!!」
佐倉カイセイが変形できる武器は多くても4種類。佐倉カイセイは戦闘に応じてその武器を使い分けている。もちろんその中に選択し刃を組み合わせる時間も含まれている。だから彼を何かしらの方法で翻弄させればこっちのペースに持っていける!
佐倉カイセイが選択したのは刃を2枚使い右手に剣左手にはABDのサイドから取り出したボールのようなものを持っている。
すると佐倉カイセイ近くに詰め寄る。僕は間隔を保ちながら後ろに下がる。その時左手のボールを僕に向けて投げてくる。僕は左にずれて避けようと思ったが。目の前でボールが分裂、範囲攻撃だ。その瞬間僕の体が動かなくなる。佐倉カイセイは動けなくなった僕の胸ぐらを掴んで
「俺はお前みたいな特殊推薦枠っていうのを理由に強くもないくせに周りからチヤホヤされているやつが大っ嫌いなんだよ!!」
「俺はつらい思いをたくさんしてきた。努力して正隊員になったんだ!お前の顔を見てるだけで腹が立つ!お前たちの存在自体が憎いんだよ!」
僕が河野ちゃんと楽しく話していた時こそこそ笑っているやつってもしかして佐倉カイセイなのではと思った。佐倉カイセイと同じクラスってことはその可能性は十分にある。彼が僕とここで戦いたかったのは僕の存在に嫉妬して実力差で締めるためだったのだろう。彼の言葉からそう解釈することもできる。だが僕は口も動かすことができないのでその真意について問いただすことはできなかった。
佐倉カイセイはゆっくりと右手の剣で僕の首をぶっ刺した。
3本すべての試合が終了して 0-3 佐倉カイセイ圧勝である。
試合が終わりモニターから人がどんどん離れていく。僕は地面から這い上がりあまりの悔しさから佐倉カイセイに近づいて
「2週間後再試合だ!!」
「お前本気で言ってるのか?2週間で仕上がるわけないだろう?」
「いや。仕上げて見せる!」
佐倉カイセイは笑いながら答えているが僕は真剣だ。佐倉カイセイは「分かったよ。勝つのはどう考えたって俺だけどね」と言い演習ルームを後にした。そこに白石さんが近づいてきて
「お疲れ様。良い試合だったよ」
「良い試だったって、、とんでもないです」
白石さんはそれ以上言うこともなかった。白石さんは腕時計を見てもう8時を回っていると僕に伝え「帰ろうか」と言う。僕はその言葉に頷きアブトルを出る準備を始めた。
白石さんが家で夕食の支度をしていると僕はリビングのソファで寝そべって考え事を始めた。どうやったら佐倉カイセイの変幻自在の武器を攻略できるか。佐倉カイセイの弱点はどこにあるのか。考えれば考えるほどその解決策を見つけるのは難しくやはり相手は正隊員だ弱点を探すのはとても難しい。僕はずっと佐野カイセイの素早い動きを分析し振り返っている。、、、どうやら夕飯の支度ができたみたいだ。
「ハルト君本気なの?2週間後って」
「僕は本気です。佐倉カイセイ絶対倒したいです!」
「私は応援する!ハルト君を全力でサポートするよ!」
「ありがとうございます、、、ところで白石さん、アブトルって何時まで空いてるんですか?」
「ん?今は夜の10時半まで空いてるよー」
「僕最後まで残ります!白石さん付き合ってもらえますか?」
「もちろん!私はハルト君の同居人兼担当サポーターなんだから」
僕は白石さんのやさしさにひたすら感謝した。そして料理は生姜焼き。相変わらずめちゃくちゃ美味い。
僕は夕食を食べ終え先に風呂に入り風呂から出ると隣の部屋からソファに毛布を運ぶ。
「佐倉カイセイの攻撃はここはこうであれはああやってこうする、、、」
僕はソファで寝そべりながら暗いリビングの中で目をつぶり佐倉カイセイを倒す方法をひたすら考えていた。




