<第10話> 3年1組
、、、ググググウウウ!!!
周りを見渡せば地平線を遮るものは何もなく空は昨日のように黒い雲に覆われている。足首にかかるくらいの浅い水面下わずかな光を反射して鏡のように僕と白い悪魔を照らしている。
そうここにいるのは僕とあいつだけ。いよいよ決着の時だ。
僕はたまたま持っていた剣でやつの腹に飛び込、、、、
あおううううううう!!!!
あいつの口から噴き出した青い炎に全身まとわりつく。僕は少しづつ溶かすように痛みを与える炎に悲鳴をあげる
あああああ!!!っああああああ!!!
僕は悪魔を目の前にしてただもがき苦しむことしかできなかった、、、、
「はっ!!」
気が付いたときにはもう朝だ。確認してみるとやはり白石さんの家だ。体は冷たい汗に覆われて少し肌寒かった。あれは夢だったのか、、、
ソファから起き上がり毛布をたたんで床に落とした。目の前のテーブルには風呂敷に包まれたなにかとメモ書きがある。
「ミキ君 私は先にお仕事があるので家を出るよ。昼のお弁当を作ったから食べてね。あと戸締りよろしくね! 白石ルナ」
僕はこのメモを見て泣きそうになる。こんな神対応をしてくれる大人なんて今まで見たことないから。すべての大人がひどいことをするわけではない。中には優しい大人もいるんだ。そう思えるようになった。僕は白石さんが僕のために用意してくれた弁当を事前に用意したカバンに詰め込んだ。
クローゼットから僕の制服を取り出す。実際に着てみると新しいこともあってか関節部分は動かしにくく堅い素材なので着心地が良いとは言えない。だがこれを着ることで自分に誇りを持てるような気持ちになり僕のモチベーションとなる。ジョウホクにいた時と比べ前の僕より少し明るくなったことさえ感じるようになった。
僕は制服に着替えるとリビングや廊下の電気を確認して玄関の扉を閉じて鍵を閉める。こうして僕の新しい朝が始まったのだ。
昨日そんなにじっくり見ていなかったが辺りを見ると草木が多く生えていて前の通勤道中とは全く違う雰囲気を感じる。歩いて10分経つと学校前の並木道に着く。フレッシュな香りがする風を切り抜けるように登校している生徒がたくさんいる。これが久しぶりの学校かと思いワクワクで胸がいっぱいになっていた。僕は一呼吸をおいてまっすぐ正門をくぐる。
教室に来る前にいったん職員室に来てほしいって白石さんが昨日言ってたような気がする。僕は昇降口に入って持参したシューズに履き替え学校の地図を見ながらやっとの思いで職員室を見つけた。
「職員室とかどきどきするなぁ」
僕は手を震わせながら職員室の扉を開ける。すると目の前に扉を開けようとしている先生らしき人がいた。その人が僕の顔を見て
「あぁ特殊推薦の子ね、入って入って!」
そう言われて案内されたのは応接室だった。教師専用と思われる机は大量のプリント用紙とまとめてあるファイルが無造作に散らかっており職員室が整頓されているというイメージとはかけ離れていた。奥にある長くて黒いソファのある部屋に案内されて
「担任の先生もう少しで来るからちょっと待っててね」
と言われて僕はしばらく待ってみる。すると応接室の扉が開いて
「よっ 白石さんとの共同生活楽しんでるか?」
エリザベスだ。昨日の黄色のジャージとは違ってラフではあるが抑え目な色遣いで落ち着きのある服を着ていた。なんで共同生活知ってるんだ?
「まぁーミキの担任は私。3年1組だからクラス間違えないように」
エリザベスがミキって呼ぶのに少し違和感がある。ずっと僕のことあんたって呼んでたから
「は?ここは学校よ。生徒をあんた呼ばわりするわけにはいかないんだよ!」
「はぁもう時間かよー。だりーな」
学校のチャイムが鳴ったのとエリザベスが腕時計を見るのと同時に「ついてこい」と言ってきたので言う通りについて行った。
以前白石さんと来た時同様の見覚えのあるルートで廊下を歩いて行き奥のところ目の前に3年1組と書かれた表札がある。
「ここで待ってろ」
エリザベスが扉を開けると
「はーい席ついて!!ほらほらほら!」
騒がしかった生徒たちはエリザベスが来たことにピタリと話すのをやめた。
「今日は勘のいい奴なら気づいてると思うけどスカウト枠連れてきたから」
エリザベスが左を見てこっちに手招きしているので僕は動揺しながら教室に入った。
「ほら名前言ってあいさつしな」
そう言われるがまま
「三木ハルトです。よろしくお願いします。」そう言うと
「教科書とか机の中に入ってるから。席はあそこね」
エリザベスの指さした方向の席に向かった。エリザベスに隠れて見なかったがここから見るとエリザベスの隣に白石さんがいる。笑顔があいかわらず美しい。
「??」
僕はその方向の席に向かった。しかし空いている席が二つあってどっちが僕の席だか分からない。よくわからないのでとりあえず手前に座った。
「ミキ君後ろの席だよこっちこっちー」
どこからか声が聞こえる。僕に言ってるのかな。そのアドバイスを信じて後ろの席に座り直す。
「ミキ君ー。おーい聞こえてる?」
僕は右往左往首を回転しながら声の主を探す。その声の主はやっと僕の左に座っている女の子だと気づいた。こっちを向いて手を振っている。
「お隣さんどうし仲よくしよーね」
僕は「おう」と言葉を返した。




