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<第1話> 何を信じますか?

2015年5月10日



ウゥゥゥー!!


キンキンキンキン!


「政府から緊急避難命令が発令されました身の回りの安全を最優先し直ちに避難してください」


そのサイレンに僕は起き上がる。目を凝らしながら窓を開けると住宅街の遠くは真っ赤な火の海に染まっていた。僕はこの状況を整理することができずすぐに階段を降りて父さんと母さんのところへ向かう


「父さん!母さん!どうなってるんだよ!」


「父さんにも分からん!サイレンを聞いてとても危険な状況ってことしか分からない!」




母さんが家の安全を確認して玄関の扉を開ける。なぜか深夜なのに明るい。よく見てみるとそれは街灯ではなく家が磨いて輝きだすように明るい炎が噴き出している。


「すぐに出るぞ!」


父さんはそう言ってすぐに玄関へ行った。僕もその後ろをついていく。


家を出ると辺りは騒がしい。僕らと同じように近所のおばあちゃんや若い会社員までその状況を理解できずに近くの人に確認しているがもちろんこの状況を理解している人なんているわけがない。会社員はこんな真夜中なのにスーツ姿、夜も寝てないので態度が少し荒々しく見える。再び奥を眺めると学校のある方向は黒い影に覆われている、炎の勢いが予想以上に激しく天まで炭に変えてしまうような様子だ。



「なんなんだよ、、、」


僕は周囲の状況を冷静に考えるようになってから目には絶望が映し出されるようになり石のように固まり動けなくなっていた。それを見た母さんは僕の裾を引っ張って行く道を先導してくれる。


それに吊られるまま両親についていく。



、、、気が付くと家もすっかり見えなくなり僕たち家族が辿り付いたのは大きな公園だ。非常事態なので大勢の住人、派遣された自衛隊、警察官もいた。やはり誰も現在の状況を詳しく説明できる人はここに存在しておらず警察官までパニック状態だ。警察官も焦る一般市民に質問攻めに遭い行動範囲を制限され住人を保護とかそんな状況ではない。なんとか市民の囲みから抜け出しそ警察官がメガホンを僕たちに向け



「子供はいませんか?子供は優先的に避難させます!」


すると母さんが手を上げ全力でアピールする


「うちの子がいます!はい、ここに!」


それに気づいた警官が左手をこちらに招き僕を呼び出した。


「ハルト行きなさい!!」


父さんが僕に何の迷いを見せずに腕を組みながら言い出した。


「父さんと母さんも一緒に行こうよ!」と返すと


「それはダメだ。心配するな。ハルトが先に行った後、父さんと母さんも続いて行くから」


母さんは僕の手を握り大人たちを避けていき警官へ押し出した。公園にいた大人たちは


「どうして子供を優先するの??」


「私たちにも避難させる権利はあるでしょ!!!」


批判と怒号の嵐が吹きわたる。市民からでる熱気と燃え盛る炎によって僕の周りは非常に熱くなり首元から汗がじわじわと湧き出ている。民衆からも汗じみた蒸気をむんむんと感じた。すると母さんはつないでいた手を離して一言。



「ハルト!!お父さんとお母さんは後から行くからね!すぐ迎えに行くから」


心配性な僕にとって家族と一瞬でも別れることはとても辛い。それだけ両親は僕のことをとても愛してくれて僕も父さんも母さんも好きだったから



僕は警察官に


「父さんと母さんは大丈夫なの?」


と聞くとそれを聞いた警察官は僕を励ますような口調で


「大丈夫!お父さんとお母さんは君の後に避難させる、安心して!」


僕は両親の言葉、警察官の言葉を信じて迷彩柄の車に乗り込んだ。中はとても広々としていて両サイドに簡単なつくりのベンチがある。僕がベンチに座る様子を両親は1フレームも見逃さず見守っている。



運転席には迷彩柄の服を着ている大柄のお兄さんがいた。間違いなく自衛隊の人だろう。その人がエンジンをかけると車は動きだす。周囲を見回せば僕と同じように家族とは離れ離れになった子供たちが多く乗っている。同じように家族と突然別れを告げられて車内は泣いている子供たちの声で騒がしい。僕は後部座席から後ろの小窓をずっと覗きこみ両親が遠ざかるのを泣きながら眺めていた。



ピカッ!


すると両親のいる公園は突然青い光に覆われる!その瞬間激しい熱風が襲う。


「どうなっている!!」


不信に思った自衛隊の人が車から出るとさっきいた公園は地獄のように燃え上がっていた。


「、、、、!!!なんだよあれは!!!」



僕は衝撃の光景に思わず腰を抜かしてしまいズボンは濡れてしまった。ゆっくり立ち上がりその様子をじっくり車の後ろ窓から再びのぞき込むと



そこには3Mくらいの輝く犬の姿をしている怪物がこっちを向いて牙を見せてよだれを垂らしている。その顔は人間を殺すことに快楽を得ている野生の本能そのものである。だが僕はその姿に美しいと感じ神にさえ見えようになっていた。それだけこの地獄のような描写に白い怪物はひと際輝いて映し出される。


「父さん!!母さん!!」


叫んでも叫んでも!!僕はあまりのショックで声も出せない。


父さん母さんいやその公園にいた全ての人間は残骸すら残すことなく白い光の中に入っていきそのまま消えてなくなってしまった。


「父さん、、、母さん!!」


「はぁはぁはぁ、、、、」


両親の名前を呼ぶことしか僕にはできない。それすらも届かず両親に何もしてあげることができなかった。周りの子供たちも衝撃が強すぎて外を直視出来なくなっている。



その姿に自衛隊の人が怯えてすぐ運転席に戻ろうとした。その時


そいつは頬まで裂けた大きな口を開けて口の中が青く輝きだす。その瞬間僕の目に青い光が焼き付く。


ぎゃあああああああああああああああ!




目を覚ますと僕は草の上でうつぶせになっていた。後ろには迷彩の車がありエンジンから火が出ていて近くの木に燃え映っている。


、、、う、、うわあああああああああああああああああ!!!!


中の様子を確認しなくても窓から顔出している子供らしきものは黒く焦げていてその形は向かい側に座っていた女の子だと一目で分かってしまった。僕は後ろを向いても絶望に満ちたガラクタしかないと思ったので下を向いたまま念頭に後ろを向くなと意識し続けてただ前へ歩き続けるしかなかった。



どこまでいったか分からない。ようやく道路が見えてきた。奥にガードレールがありさらに奥にはうっすらと町が見える。だがその町は緑あふれるカドガウラの街並みとは違く全体的に色と色が混ざり合いその配色が絶妙に不快感を覚える。決して美しい大地とは呼べない。そんな大地とは対照的に空では朝日が昇り太陽は僕に皮肉を語り掛けるようにその日の朝日は美しかった。



僕の脳裏にはあの白い化け物が未だに映し出される。やつを見たとき何もすることができなかった。両親を殺したことは許さない。だがあの化け物にどう立ち向かうかなんてわからない。僕には絶対無理だ。頭の中で負の思考が連鎖的に続き今でも僕を毎晩苦しみ続ける。寝れない日だってある。



僕はあの白い化け物に複雑な感情を今でも抱いている。

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