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それは陰陽師くずれの男たちだった。
(こんな時に)
三人の男たちはマリノたちの逃げ道を塞ぎ、すぐに襲いかかってきた。
マリノは司の身体を抱いたまま飛び上がろうとした。だが、一瞬、動くのが遅れ、飛び上がった足に男たちが投げつけた呪符が貼り付く。ビリビリとした感覚、途端に身体が重くなり思うように動かなくなる。
次々と男たちの呪符が身体に纏わりついていく。
(まずい)
そう感じた時には既に遅かった。意識がぼんやりとしてくる。
その時、大きな衝撃音と共にその一帯に強い風が吹き、そして、一瞬の間に男たちは吹き飛ばされてその場に倒れた。
頭上に大きな力を感じて見上げると、そこに現れたのは六花だった。マリノに貼り付いた呪符が千切れて消えていく。身体が一気に軽くなる。
(呪符なしで?)
そのマリノの思いに気づいたのか、六花はツンとした表情のままーー
「呪符はただの増幅器のようなものだ。いざという時は呪符を使わないほうが力を制御しやすい」
「あなた、強かったのね」
男たちが倒れているのを見下ろしながらマリノは言った。
「こいつらが弱いのだ。お前もちゃんと力の使い方を覚えろ」
「殺したの?」
「いや、殺す必要はない。だが、こいつらの霊力は食わせてもらう」
「食う?」
「私の呪符の力に貰い受ける。こいつらは当分、霊力を使うことは出来ないだろう」
そう言って六花は不敵に笑った。
そして、一枚の呪符を頭上にかかげる。呪符が強い光を放ちマリノたちを包み込む。気づくとそこは既に町中から離れ、あの山小屋へと転送されていた。
腕の中で司の身体がピクリと動く。
「大丈夫?」
マリノは声をかけた。
司はその声に答えるかのようにゆっくりと瞼を開けた。だが、一方でその身体が淡い光に包まれていく。それはかつて夏希が消え去っていく時の姿によく似ていた。
マリノはハッとして、さらに声をかける。
「司ちゃん、しっかりして」
司の唇がわずかに動く。
「……お姉ちゃん……ありがと」
弱々しいか細い声で司が呟く。
六花がそっと近づき、司の額に手を当てる。その顔が少し明るく変化したような気がした。その目にわずかに涙が見えた。
そして、彼女の姿は消えていった。
マリノの腕の中には何も残されていなかった。
「どうして? どうして消えたの? あいつを殺したのは私であの子じゃないのに」
「同じことだ。復讐を果たす必要がないという事実に安心したのだろう」
「安心?」
「この娘はやはり妖かしとして生きるよりも人間として死していくことが似合っているのだ」
「納得出来ないわ」
「おまえの納得など必要ない」
「……それはそうでしょうけど」
「これでいい。これがあの娘にとって最善のことだ」
その六花の言葉はマリノにも理解出来た。
マリノはそっと胸の前で手を合わせた。




