3.名前
私は新聞を読んでいる。
昨日の事件は……記事にはなっていない。
そりゃそうだ。極秘精鋭部隊の事件だ。そんなのが公になったら、極秘の意味がなくなる。それに、宇宙人の存在が世間に明るみに出てしまう。
ピリリリリ!
召集命令。
私は基地へ向かった。
「うん、みんな集まったな?」
隊長がメンバーを一人一人確認する。
「昨日、城之内の学校にこのようなものが現れた」
隊長がモニターに写真を出す。
「一見、チーターにも見えるが、星人だ。目撃したらやつを生け捕りにしろ」
まずい。それは非常にまずい。
「うん? どうした、城之内?」
「え?」
どうやら顔に出ていたみたいだ。
「なんでもないです」
「いいなみんな! 殺したりはせず、生け捕りにするんだ!」
隊員たちが「はい!」と返事をした。
「城之内、さっきからどうした?」
隊長にだけは言おうか。いや、ダメだ。
「な、なんでもないですよ? で、生け捕りですよね?」
「ああ、そうだ」
「でも、生け捕りにして何をしようと?」
「人間に害がないかの調査だな」
ふう、よかった。
「それじゃ、解散!」
ピュウピュウ!
と、警報が鳴る。
「緊急指令! 東京・杉並に星人出現! 直ちに現場へ急行せよ! 繰り返す! 東京……!」
私たちチームは杉並へと急行した。
蜂型の怪物が人々を襲っていた。
「キャアアアア!」
悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。
チームは特殊拳銃を取り出し、応戦する。
「止まれ!」
怪物はこちらに気づくと、襲いかかってきた。
隊員が一人、針で体を刺される。
「う!」
「大丈夫か!?」
刺された隊員は無言で襲いかかってきた。
やつの毒牙にかかると操られるのか。
「やつは私が!」
私は襲いくる隊員の攻撃をかわし、怪物に接近する。
針をかわし、足払いをかけてすっ転ばせた。
怪物は起き上がり、怒り狂って私に襲いかかる。
私は跳びのき、距離を取った。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」
挑発して誰もいないところに誘い込む。
ここでなら、変身ができる。
私は例の姿に変身した。
シャキン!
指先から爪が飛び出す。
「わりゃあ!」
私は怪物を切り裂いた。
緑色の血しぶきが上がる。
怪物が反撃をしてくる。
「どわ!」
吹っ飛んだ私の体がドラム缶へと突っ込み、倒して地面に転がった。
「おい! チーターと蜂が戦ってるぞ!」
チームのメンバーが集まってくる。
私は立ち上がり、途轍もない速度で敵に急接近する。
「は!」
怪物の後ろへ抜けながら、その体を真っ二つに引き裂いた。
真っ二つになった怪物の体が地面に崩れる。
「おい! 早く生け捕りにするぞ!」
チームに囲まれた私。
「ふ!」
私は上空へ飛び上がり、その場を離れた。
その後、基地では──。
「やつは怪物と戦っていました。味方なのではないでしょうか?」
「そう考えるのは早計だ」
「ですが、やつは我々を見ても攻撃してきませんでした!」
「とりあえず、やつのコードネームを決めよう。城之内、何がいい?」
「わ、私に振るんですか? えっと……それじゃあ、チータスで」
安直だったかな。
「いいだろう。今後、やつのことをチータスと呼ぶ」
あの姿の名前が決まり、メンバーは解散した。