2.変身
私は病院を退院した。
今は高校生活を過ごしている。
あれからと言うものの、私にだけ召集命令がかからなくなっていた。
消されるのは確定なんだろうか。
だけど、自分自身には変化はないように思える。
ドーン!
校庭から爆音。窓から外を見ると、砂塵が立ち込めていた。
「なんだなんだ?」
クラスメイトたちが窓の外を見るために集まってくる。
やがて砂塵が収まり、黒い影が見え始める。
「あれは!」
そいつは私に何かを植えつけた張本人だった。
黒いチーターのような怪物。
「なんだよあれ!?」
「ドラマの撮影か?」
私は教室を飛び出すと、校庭へ駆けつけた。
「貴様……!」
私は怪物に飛びかかる。
その刹那、周囲の時間が止まった。
「……?」
「よせ、同胞よ」
私の攻撃を怪物が受け止める。
「同胞?」
「そうだ」
拳を放す怪物。
「我はアニマール星の宇宙警察だ」
「あ? 渋谷は貴様が破壊したんじゃないのか?」
「あれは我が着いた時には既に崩壊していた。そこへ貴様が現れたのだ」
「私の体に何をした?」
「お前には潜在的なパワーが眠っていた。だから、我はお前を選んだ。まさか適合するとは思わなかったがな」
「どういうことだよ?」
「お前はアニマル戦士となったのだ」
「アニマル戦士?」
「そうだ。今のお前なら変身ができるはずだ」
「変身だ?」
「ああ」
「よくわかんないけど、あんたは悪いやつじゃないんだな? 信じていいんだな?」
「さっきも言っただろう? 我は宇宙警察だ、と」
「なんだよ、その宇宙警察って?」
「銀河系の治安を維持する組織だ」
「ふん! そんなの聞いたこともない」
「それはそうだろうな。地球とは親交がなかったからな。だが、今回の一件で地球も治安維持リストに登録された。しかし、銀河系にこのような美しい星があるとは知らなかった。偶然見つけたところだが、実に面白い」
「で、変身がどうとか言ってたが?」
「実践でな」
「は?」
宇宙警察を名乗るものは飛び立ち、時間が動き出す。
「うがああああ!」
背後に何かの気配。
振り返ると、昆虫のような怪物がいた。
怪物はこちらに向かって接近してくる。
「うわ!?」
私は怪物の攻撃をかわす。
「変身って言ったって、一体どうやって!?」
怪物が容赦なく襲いかかってくる。
バック転で攻撃をかわした。
それでも攻撃を止めることなく襲ってくる怪物。
私は攻撃をかわし、反撃するが、しかし、強固な体にはダメージ一つ与えられない。寧ろこちらの拳が痛い。
「痛……!」
どうする? このままでは学校やみんなが!
私は攻撃をかわしつつ考える。
このまま防戦一方の戦いをしていても埒が明かない。
この状況を打開しないとな。
私は辺りを見渡す。
周囲に使えるものは、ない!
ブン!
油断が生まれ、攻撃を食らった。
「ぐは!」
私は空き教室のガラスを突き破って床に転がった。
「くっ!」
ボロボロになった体を覚束無い足取りで起こす。
「負けらんねえ!」
その刹那、私の体に変化が。
突然と尻尾が生え、チーターのような姿に変わる。
「こ……これは……?」
私は自分の体を改めた。
あいつが言ってたのはこのことか。面白い。
私は窓から飛び出した。
「うゎりゃああああ!」
途轍もない速度で怪物に接近し、乱打を浴びせる。
怪物はあっという間にグロッキーと化す。
「とどめ!」
鋭利な右手の爪で怪物を切り裂いた。
怪物は緑色の血しぶきを上げて倒れ、動かなくなった。
そこへ、精鋭部隊がやってきて、私は囲まれた。
私は飛び上がり、校舎の裏手へ回り込み、元の姿になった。
裏側から校舎内に戻り、教室へと向かう。
クラスメイトは何事もなかったかのうように、授業を受けていた。