助けるとは
説明も終わり、街に向かう二人。2時間ほど歩き、街の壁も見えてきて近いのだと言う事がよくわかるところだ。
道の上で一人の女の子が外獣に襲われてた。
数は5体ほどだろうか。女の子はしゃがみ込み、怯えている。
「あやや、あそこに見えるは女の子!しかも外獣に襲われてるではありませんか!」
「本当ね。しかもあれはゴブリンね。5体とは言え気をつけた方が良いわ。」
「強いのですか?」
「強いとは少し違うわね。レベル5くらいの冒険者でも3体は同時に相手出来るくらいだから。でも不利になったら仲間を大量に呼ぶのよ。それも10体や20体じゃ温いくらいにね。」
「では、呼ばれる前に倒せば?」
「無理ね。ゴブリンは臆病な性格故に、戦闘力の計測ができる種族。しかも、本能でよ。」
そう言うとミスティアは剣を抜き、
「だから私の方があの娘を危険に晒さないで倒して見せる!」
とゴブリンに向かって突進して行った。
「さあ、来なさい!この雑魚どもが!このミスティア様が華麗に倒してあげる!」
そう言うと、まず一体目を袈裟斬りで倒す。続いて返す刃で2体目、3体目と続け様に斬って行く。4体目を斬ろうとしたとき、
「ゴブァーーーーー!」
と叫び声が上がると同時に5体のゴブリンが現れる。
「変ですね?五体だけ?ミスティアさんの話では20体以上呼ぶらしいですが?」
その異常はミスティアも理解していた。
「五体しか増えない?何故?……ま、あまり増えないならその方が楽ね!」
ミスティアは取り敢えず一番近いゴブリンにむかい、唐竹に斬ろうと太刀を振りかぶる。しかし、
「な……!硬い!」
と皮膚を少し斬って終わる。すると、拳がミスティアに向かってくる。
「カハッ!つ、強い!何故!」
咄嗟に籠手でガードするも、吹き飛ばされる。それもそのはず、ミスティアは知らなかったが、このゴブリンは普通のゴブリンでは無い。
「まさか、ハイゴブリン!レベル30でも逃げることを選ぶやつじゃない!」
(そしてそのハイゴブリンが5体も!勝てないわね。これは。)
悲嘆にくれているが、ゴブリンは待たない。もう一発食らわせようとまた拳を振り上げる。
(終わった、私の人生。娘さんも守れなかった!畜生!)
目を固く瞑り、自分の人生の最後を迎えようと覚悟を決める。しかし、いつまで待ってもその時は来ない。我慢出来なくなり目を開けると、
「以外と強いみたいですね。この連中。後は僕がやります。」
司がハイゴブリンの拳を指で押さえていた。
「あ、あんたの事忘れてたわ。ごめん。」
「忘れるのは酷くないですか?頼りにしてくださいよっと!」
司も拳を振るうとハイゴブリンは霧散してしまった。その調子で2体目3体目と血の海に沈めると、同じようにハイゴブリンが大量に湧く。50体位だろうか。数えるのも億劫になりそうな数だ。
しかし何体現れてもミスティアは恐怖を感じなかった。
「こいつなら全部倒せそうね。私はあの女の子を助けてくる!」
そう言うと間も手刀や、肘など体の部位を使っての攻撃一発で死体を増やし、血の海をより広くして行く。残り五体と言ったところで、
「ゴブルルルルルルル!」
と叫び声が上がる。
「あ、ゴブリンとハイゴブリン?では声が違うんですね。しかも、渋い声でした。」
と、司は場違いな感想を浮かべる。
その一瞬後、王冠を頭に乗せたハイゴブリンよりも大きなゴブリンが現れる。
「ゴブリンキング!レベル70くらいでやっと倒せるくらいの奴よ!気をつけて!」
ミスティアが叫ぶが、司は気にしない。
「ああ、このゴブリン達の親玉ですか。では敬意を表してこの技で潰してあげます。」
ゴブリンキングが棍棒を振り上げると、司は逆に腕をダランとぶら下げる。
「な……!やる気あるのあいつ!」
ミスティアは少し怒る。
同時にゴブリンキングも無礼な態度に怒ったのか、両手で棍棒を振り下ろす。しかし、
振り下ろした所に司はいない。何処かと思い見回すと、
「では終わりです。賽の河原で悔い続けていて下さい。閃。」
と、手刀を横に振る。それだけでゴブリンキングは胴体と腰、頭が離れる。
ゴブリンキングの悲鳴も何も上がらなかった。
ゴブリンキングか死んだ。その事実を認めた他のゴブリン達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
ゴブリンキングとの戦闘も終わり、女の子も10分ほどで落ち着いたようで、
「助けていただきありがとうございます!この度は何とお礼を言えばいいのか!」
と感謝を表す。
その時は言葉では
「いえいえ、こんなの朝飯前です!英語で言うとピースオブケーキです!」
と司は言う。まるで気にしていないかのように。
「ところで、街に向かっているなら、すぐそこですし、送ってあげましょう。」
と司は提案する。心の中では
(この子のフラグを建てるためには街まで送った方が良いですよね?取り敢えず紳士的に行きましょう。ハーレムとか作ってみたかったんですよね。)
と考えていた。しかしそんな希望を打ち砕く声が遠くから聞こえてくる。
「おーーい!大丈夫か?お前ゴブリンに襲われてたよな?」
「あ、大丈夫よ、彼らに助けてもらったから。」
「いえいえ、この程度。何ともありません。ところで貴方は?」
「恋人を、助けていただきありがとうございます。それでは申し訳ありませんが、この辺で俺たちは失礼させていただきます。」
と立ち上がると、二人は街に仲睦まじい会話をしながら戻って行く。
ミスティアは
「ゴブリンキングの王冠!これ10万ハラで売れるのよね!結構な収入になったわ!」
とはしゃいでいた。
気づけば空は真っ赤に焼けていた。夕焼け空だ。その色は美しい。そんな空に
「リア充爆発しろーー!」
司の悲しい叫びが消えて行く。