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第1話・さぁ魔改造の時間です

「では、これからお願いします、ヴェーテンテス・グラシエ」


 召喚主であるサリア・マグニスの声を聴きながら、俺は別の思考回路を高速回転させていた。


 【ノリで契約しちゃったけど……どういう状況なの今!?】


 こういう時は1つずつ考えて行こう。まず召喚の儀で俺が召喚されたことに対しての驚き方がなんか違う。普通獣とか用の魔術で人間が出てきたら、どういうことだ的な会話があるはずだし召喚主も一時中断するはずだ。

 なのに実際は奥のじいちゃんは天災級とか言ってたし、周りのみんなは恐怖を顔に浮かべていた。これってつまりありえない話だけど俺は今、魔物の姿をしているってことなのか?聞いてみよう。


『なぁサリア、いや、我が主?どっちでもいいんだけど、俺の事をわかる範囲で俺に説明してみてはくれないか?』


「……?わかりました。えっと、私の億倍近い魔力を持っていること。天災級魔狼種にしてはノリが軽い事。背中に乗ったら楽しそうなこと。なぜか召喚の儀を知っていることくらいですかね?あと名前で呼んでもらっていいですよ」


『ほう……それはまたなんというか』


「それがどうかしたんですか?ずいぶんと考え込んでますけど」


 なんで考え込んでるのが……って契約するとある程度は感情共有できるって書いてあったな。でもそんなことはどうでもいい。召喚前の俺はどういう感じだった?

 魔術研究開発所所長で、当然人間で、魔力量は近衛魔術師団長の100倍―――団長の魔力はサリアのだいたい万倍程―――くらいしかなかったはずだ。それがどうして、天災級魔狼種(推定)で、魔力量の桁が増えてんだろうな?


『ま、なんだかおもしろそうだしどうでもいっか』


「ならいいんですけど、私からもいろいろ質問したいんですけど」


「「そのまえにオレらがいろいろ聞きたいわ!!」」


 唐突に声を上げたのは周りにいた若いマグニス族たち。まぁ当然だろうな。天災級魔狼種が出てきてそれをあっさりと眷属化(テイム)したのだから。


『だ、そうだ。彼らは儀式を見守ってくれた同族の仲間だろう?軽く説明してやれよ』


「あっ!ごめんなさい、すっかり忘れてました」


 そういってサリアは思考での会話を辺りの人へ報告する。後ろにいたじいちゃんは族長らしい。彼は一通り聞くと頭を押さえ、唸る。


「『大丈夫か?族長殿』」


 少し心配なので中級魔術”シンキップ”―――思考を音として発する魔術。ぶっちゃけ今まで使い道がほとんどなかったけどこういう場面で使い道があったんだな―――を使用し族長へ声をかける。


「なんと!!マスター以外との会話すら可能だと!?さすがは天災級というべきか……」


 俺の声に反応したのはインテリっぽい彼―――後で聞いたがラトラスという名前らしい―――だ。感激しているようだが、そいつはいったん無視。


「あぁ、済まない。いろいろと考えたい。今日はここで一晩休んでから帰路へ着くとしよう。魔狼殿、後程話をしてもよろしいですかな?」


「『了解した』」


 なんだか俺は一方的に召喚されたんだが罪悪感を覚えてしまうな。外へ出ていく族長へ心の中で手を合わせておく。


「えっと、じゃあ私たちはそれまで親睦を深めましょうか!」


『お前、怖くないの?』


 それはさておきだ、この少女はどういう神経してるのだろうか?普通は目の前に小国1つ滅せる存在があったらここまで軽く接することなど不能なはずだ。


「そうですねー、契約しちゃえばこっちのもんなんで今はあんまり怖くないですね」


『そうか、お前あれだな』


 アホの子、深く考えずに行動するがゆえに事態の重要性を理解できない子なんだ、きっと。そう考えればここまで、のほほんと構えるなんてできっこない。

 そうとわかれば次の問題はここがどこかということだ。


 何ですか?と聞くサリアは適当にはぐらかして入口に目を向けた。俺の読んだ文献によれば召喚の儀を行なうこの聖地はミレル王国の東端に位置していたはず。ミレル王国には中央部までしか来たことがないからこの辺がどういう状態なのかさっぱりだし、早く外の景色を拝みたいな。


『そうと決まればサリア、外へ出るぞ』


「まったくわからないんですけども……って待ってください!おいて行かないで!」


 彼女の声を無視して颯爽と駆け出した俺は一瞬で魔術陣に囲まれた。


『……ふむ、形状としては条件型。主人の命令無視を筆頭に主人および近しい関係への攻撃を条件に……ほうほう。だったら……を……して、よし術陣展開(オープンパターン)!』


 俺の声をきっかけにしてもう一つの魔術陣が先ほどの陣を覆うように発動する。

 さてここで簡単に解説してやろう。俺が今回発動したのは”チェンジ”。魔術改変魔術―――禁術級魔術だ―――である。さっきやった召喚の儀で俺には魂に魔術が刻まれた。それを改変してやろうというわけだ。ただサリアにも同様の魔術が刻まれているのでいったん切り離す。そしていろいろ魔改造。再度接続―――今回の場合は再契約になるっぽい―――して作業は終了。あ?またサリアの魔力が流れ込んでってはぁ!?


「『おいさっきのちんけな魔力はどこ行きやがった!?なんだこの馬鹿でかい魔力は!?』」


「あなたの魔力です!!しかもまた流れ込んできましたよ!?てゆーか一回契約切れましたよ!!?なにしたんですか!」


「『なにってさっき刻んだ魔術がうざかったから魔改造した。』」


 俺の魔力ってこんなに大きかったんだな、うん。しかも魔力どうこうの部分をいじらなかったから魔力が2倍になってしまった。これ全部使ったら何ができるんだろう。


「サリア!何があっ!?なんだこの化け物空間は!?」


 さっきのインテリっぽい彼が入ってくるなり叫んだ。


「再契約されました!」


「…………は?」


 化け物空間とははてさて?っておおうw

 召喚後すぐに俺が振りまいた魔力+今俺とサリアが振りまいている(現在進行形)魔力(本来の俺400人前)がここに満ちていた。そら化け物空間だな。


「すまん、もう少し詳しく説明してくれ。それだけじゃ理解できない」


「ご、ごめんなさい。えっと、彼が勝手に走り出してそれが命令無視と認識されて魔術陣が発動したんですけど、あっさり解除されて、挙句契約をいったん解除されて魔改造したのち再度強制的に契約されました。」


「…………すまん、理解’したくない’」


「『ラトラス殿、現実だ』」


 彼、ラトラス殿はどうやら部族の魔術担当のような者らしい。彼には酷だが今は理解してもらおう、そうしないと話が進まない。話が進まないとゆっくり外を見ることができない。


「ヴェーテンテスはそういう存在なんです、そうに決まってます」


 サリアの方は早速考えることを放棄したようだ。


「そ、そうだな。彼はそういう存在なんだ。深く考えると自殺してしまいそうだ」


 自殺っておい……。


「『とりあえず外を見たい』」


「そうしましょう」「そうだな」


 二人の同意を得て今度こそ俺は颯爽と外へ駆けて行った。

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