ほしねこのレベル&スキル上げ
注意!!
前回の2人の全力PVPの最後にログインしたあの子のキャラメイクを追加しています。
その続きとなるので、前回の話の最後だけ見直す事をお勧めします!!
*一応此処でも書いておきます。【ほしねこ】というプレイヤーは前回最後にログインしたユウの傍にいた子のアバターです。
急に追加してしまい、申し訳ないです…。
ほしねこはアンダンテの傍のブルーボアを狩っていた。魔法使いなだけあって直ぐに敵を殲滅してしまえる。
火魔法は単体高威力の魔法。
氷魔法は中範囲系の中威力の魔法。
地魔法は広範囲の小威力の魔法。
さらに、杖スキルによる魔法効率UPLv1により、火魔法に若干範囲が追加され、氷魔法は中範囲の高威力になり、地属性は広範囲の中威力になっている。
それらを巧みに使い分け、アクティブモンスターであるブルーボアを乱獲して行く。
周囲から数匹が同時に突っ込んできたときは氷魔法を使い、正面に固まって突っ込んできた時は火魔法で迎撃。周囲から複数匹来た時に地魔法を使う感じだ。
詠唱の無い下級魔法である『ファイアボール』、『アイスサークル』、『アースクエイク』のみを使っているおかげで効率は最高だった。
だが、何時かMPが切れる。勿論、ほしねこはその事を考慮していた。『アイスサークル』で周囲のブルーボアを一掃するなり、アンダンテの町に飛びこむ。
「ふぃー…。 MP空っぽ」
HPバーの下に表示されている青いMPバーは数ミリを残しているだけで下級魔法すら使えなくなっている。
だが、その甲斐あってレベルは12まで上がっていた。ユウよりも早いのはやはり範囲攻撃を交互に連発出来てしまうからだ。
NPCショップに寄り、入らない物を纏めて売りお金にする。狩りも含めて12000G。そこそこ溜まったのではないだろうか。
「えと、MPポーション15個で3000Gだから…」
計算しながら買い物をする。ついさっきかりで消費したMPは町中で自動回復させる事にして、取り敢えずMPポーションを15個購入する。
その後、武具店に向かおうとして1つの露店が目に止まった。
「…あれ。 あの子って確か」
紅葉の様な色のカーディガンを着ている鍛冶屋…と言うより生産型の少女。何処からどう見てもアキだった。
一瞬、武器作成をして貰おうか、と思ったのだが残金を確認して無理だと思いその場から離れようとして、やっぱり顔を出す事にした。何時か作って貰おうにも、幾らあれば作れるのかくらい聞いても罰は当たらないだろう。
「おろ…、珍しい。 アキの店の女の子が来た」
「ぇ…。 滅多に来ないの?」
「うーん。 そもそも女の子のプレイヤーが少ないし…」
「あ、そっか」
言われて今更思い出した事だが、確かにこのゲームは女プレイヤーは少ない。それでも30%くらいは女性だった気もするのだが…。
「で、何の用かな?」
「ちょっと、ここで何か作る時の金額を聞いとこうと思って」
「んーっと。 金属製の武器なら少々お高くなっちゃうね~」
金属製の杖なんて存在しただろうか、と思い少しの間考える。
…そう言えば、設計者の趣味でやたら金属製の武器が多かったような。
「金属製の杖って有ったっけ」
「うん? …杖は--あ、そうだ。 最近鑑定取って分かった事なんだけど、【ラピスラズリ】って鉱石から杖も作れるらしいんだよね」
「【ラピスラズリ】…。 確か、レアドロップの…」
「知ってるんだ? もし持ってたりしたら作ってあげるよ~?」
「ぅ…。 無い」
にぱにぱと笑いながら問うてくるアキにほしねこが小さく呟く。
「だよね。 逆に12レベで持ってたら怖いよ…」
「【ラピスラズリ】の効能ってなんだっけ」
「えとね、耐久無限化。 後、ラピスハンマーでラピスインゴットを使って物を作ると成長装備になるとか言ってたかな…」
「…? 言ってた?」
「あぁ、うん。 知り合いのβテスターが」
チルの事だ、と直ぐに察したほしねこはどうしようか、と悩んだ。インゴットを使う限り、値段の方は高くなってしまう。
ほしねこがどうするか必死に考えている正面からアキはじーっと欲し猫の事を見つめていた。
(セミロングの黒い髪に、幼さが残る顔…。 あぁ、着せ替えしてみたい…! 魔法使いに合いそうな衣装ってどんなのだっけ…)
そんな事を考えながら衣装ウィンドウをスクロールして行く。
そして、魔法使いに似合い、さらに目の前の少女に似合いそうな服を見つけるのと、ほしねこがラピスラズリを取りに行くのを決めたのは同時だった。
「ねぇ、ちょっといい?」 「ラピス取ってくる」
「「え?」」
2人して、同時に間抜けな声を漏らす。
アキが声を漏らしたのはまだレベル12のほしねこがラピスラズリを手に入れる事が出来る所に行くという事に驚いたから。
ほしねこが声を漏らしたのは、アキに手を取られたからだ。
「あそこ、最低15レベくらい有った方が良いよ…?」
「心配無い。 さっきまでレベル1だった」
「はやっ!?」
「で、そっちは何の用?」
「あぁ、えっとねちょこっとこっちに来てくれないかな?」
「え、え?」
アキの【STR】全開で強引に店の中に引っ張り込まれる。そして、むぎゅっと抱きしめられる。
「あー…。 可愛いぃ…」
「ふぇぇ!?」
すりすりされたりなでなでされたりと、ほしねこは抵抗する事も出来ずにされるがままになる。それもそのはず。ほしねこはステータスを【INT】と【AGI】に極振りしているからだ。
「あーう~…」
「こんな可愛い子、1人で行かせられないよっ。 と言う訳で素材集めついでに着いて行くね~」
「べ、別にいいっ!」
「ほしねこちゃん? 断らない方が身のためだよ~?」
「むぎゅう…」
【STR】全開で抱きしめられる。これが町の外ならば恐らく徐々にHPが減っていた事だろう。いや、寧ろこのままフィールドに連れていかれて抱きしめ殺される事も…。そう思うと、ほしねこはただ首を縦に振る事しか出来なかった。
ペザンテ洞窟には直ぐに着いた。そして、そこにいるゴーレムのレベルを見てほしねこは少し顔をしかめた。レベル差6もあるからだ。
だが、幸いゴーレムの動きは遅い。1体ずつ火魔法で仕留めて行けば問題ないだろう。そう思って杖を構えると、目の前を燃え盛るつるはしが通過して行った。そのつるはしはゴーレムを砕き、石炭に変える。
ほしねこはふとアキのレベルが気になりその頭上に目を向けた。
【名前:アキ】 【ルート:生産型】 【レベル:24】
ユウの行動は見ていても、周りの行動まで見ていた訳ではないのでレベルは知らなかったが、そこそこ高い様だ。
しかし、少しレベル差有っても一撃で倒せる物なのだろうか…と思い、ユウをモニタリングしていた時の事を思い出す。ユウが初めてアキと出会い、ここで狩りをしていた時の事だ。
『い、一撃だと…?』
『そうなの。 なんか、ピッケルで攻撃すると一撃なんだよね~…』
このような会話をしていたではないか。これは仕様なのかバグなのか、後で上層部に連絡する必要がある様だ。
思い出している間にもファイアボールをゴーレムにぶつける。だいたい5発でHPを削りきる計算だ。
それから30分程だろうか。火魔法のスキルが順調にレベルアップした。
そして、瑠璃色のゴーレムがポップした。
【ラピスゴーレム】
どうやら求めていた魔物が出たようだ。この30分でほしねこのレベルは18まで上がっていた。恐ろしいレベルアップスピードだ。
「【ファイアボール・バースト】」
火属性小範囲爆発攻撃。ファイアボールを飛ばし、命中した場所で爆発を起こすスキルだ。
そのスキルは、少なくは無いダメージをラピスゴーレムに与える。再度放とうとしたほしねこの前に燃え盛るつるはしを持ったアキが飛び出す。
「【採掘Lv4】っ」
バギドガァと、とても嫌な音が響いた。思わず目を瞑ってしまったほどだ。
恐る恐る目を開けてみると、頭が砕けて無くなっているラピスゴーレムがいた。その巨体はゆっくりと倒れて行き、消滅した。
「やった。 ラピスラズリでたよっ」
「……」
ほしねこは少しおびえた様な眼でアキを見ていた。
「おろ? どうしたの?」
「な、なんでもない…」
「なら戻ろっ」
アキに手を取られ、そのまま洞窟の外へ。
帰り道、数体のレッドボアに襲われたが、全てアキの三枚降しによって瞬殺されていた。ある意味、ユウよりも強いんじゃないだろうか…。なんて思っているとアンダンテに着いた。
「お店開いてっと…」
町中に入っても手を離さないアキ。振り払おうにも【STR】が圧倒的に足りない。
アキが露店を開いた。そして、そのまま中に連れ込まれる。アキは店先のシャッターを下ろし、店を【商品準備状態】にする。
「ふっふっふ…」
「ひっ…!?」
明かりの付けない露店の商品準備状態はとても暗い。そこで、強引に押し倒されて立ち上がる事も動く事も出来なくなる。
「無料で武器作ってあげる代わりに、ちょっとだけ私の試作した服を着て貰うね?」
「や、やめ…。 ぁっ! 離し、て…!」
「よいではないか。 よいではないか」
「いやぁぁぁぁっ!!」
密室には同性同士か、フレンド登録して密室入場ONにしていなければ入れない。
今、この場にいるのはほしねこ(♀)とアキ(♀)だ。ちなみに、密室では声が外に漏れる事も無い。
ほしねこは狩り時間よりも長い時間着せ替えをされる羽目になった。
「またのご来店、お待ちしてまーすっ」
「も、もう、二度と来ない…」
「そんなこと言う子にはこれだっ」
ぽすっと頭に何か付けられる。そして直ぐ様鏡を見せてくる。
ほしねこの頭に付いていたのは--ネコミミだった。
「やっ…!」
「ふっふ~。 このネコミミには呪いを掛けておいたからね~」
「の、呪い…!?」
ほしねこは頭の中に無数の呪いの種類を浮かべる。そして、今自分に起きている症状と照らし合わせれば--。
「【STR】減少…?」
「そう。 ついでに『アキが』解呪するまでそれは取れないからね~」
「なんでこんな事を…!?」
「可愛いから」
一言で返されてしまい、ほしねこは黙ってしまう。
総合して、今のほしねこの格好はネコミミ魔女っ子衣装と言ったところか。一部からは物凄く人気が出そうで怖い格好でもある。
「今後とも御贔屓にするなら魔女っ子帽子も付けてあげるよ?」
「(コクコクコクッ)」
ネコミミはあくまでアクセサリだ。帽子をかぶれば隠す事は出来る。だから、高速で首を縦に振る。
アキは前もって用意していた魔女帽子を取り出し、ほしねこに被せる。
「ネコミミ魔女っ子ほしねこちゃん…。 イイね!」
「良くないっ!」
「ついでだし、友達登録しようか」
「そっちがついでなの!?」
涙目になりながらも友達申請を受け入れる。
なんでこんな目に…と思いながらもほしねこはスキルのレベル上げの為に今度はグランディオーソの森に向かうべく、とぼとぼと歩きだす。ユウに合流するのも大切だけれど、合流して役に立たなかったら意味が無い。だからスキルレベルを上げて、新スキルを手に入れてから合流しようと正式に計画を立てて歩き出した。
▽ △ ▽ △
一方その頃ユウは…。
『でね、その子とっても可愛くてねっ!』
『あーはいはい。 分かったから狩り中にチャットしまくるな!』
『でも、ネコミミと魔女っ子衣装が目茶苦茶似合ってたんだよ!? ほら、これスクリーンショット』
そこに映っていたのはほしねこだ。だが、アキも最低限のマナーは備わっているらしく、名前は伏せられている。
ユウから見ても、確かに可愛いとは思うが…。
『どこのコスプレ魔法少女だよ…』
『抱き心地も最高だったよっ』
『おい!? 通報されない程度にしとけよ?』
『当たり前だよ! 通報されたらあの子着せ替え出来ないじゃないっ!』
『駄目だ。 こいつ早くなんとかしないと』
『じゃ、アキは服作ったりして素材無くなったから集めてくるねっ』
『ファイトー』
チャットを閉じて一息つく。
「チャット、長すぎ…」
「あ、お疲れ。 だってアキがなんか永遠とチャット送ってきたんだし…」
チルが周囲の敵を狩りつくして、戻ってくる。実はこのチャット15分程前から続いている。
流石にチルもアキに何か言わないと気がすまないと思ったのだが、今はそれどころではないと思い、ナイフと拳銃を構える。
「んー…。 流石に2人はきつかったか?」
「うぅん。 行けるよ。 私がボスのタゲ取るから、スピードアップⅢで一刀六撃で削って。 弱点は雷、行くよっ!」
「了解!」
ユウ達は今、シナリオ3の攻略に来ていた。内容は【ゴブリンの巣を探してくる事】だった。見つけたのはいい物の、ボスがいてクエスト完了距離まで進めなかったので相手をしている所だ。
チルは後数十分でログアウトしないといけないらしいので急いで片付ける事にする。
「【レインバレット】」
チルの放った銃弾が雨の様に降り注ぐ。ボスゴブリンはダメージを与えたチルをターゲットし、襲いかかる。
その間にユウはボスゴブリンの裏に回り込み、中級になったライトニング・エンチャントとスピードアップⅢを付与し、一刀六撃を放つ。HPが一気に3割ほど削れ…。
「って、ターゲット移った!?」
「今度は私の番…! 【十字切り】。 【ナチュラルバレット】」
ナイフで十字に斬り裂き、至近距離から属性効率上昇攻撃を仕掛ける。それでも、ボスゴブリンのHPは削りきれなかった。残り4割程残ってしまっている。
チルが此方を見て、リロードしながら目線で合図してくる。何をするのかは一目瞭然だ。
「【月閃】!」
「【ステップスラッシュ】。 【ストームバレット】!」
ナイフスキルの新スキル、ステップスラッシュ。今まで漢字しか無かったのに急にカタカナになったのは謎だが、その性能はなかなか良い。任意の方向に移動しながらの斬撃だ。
チルは背後に向かって移動しながら斬り、追撃しようとして来たゴブリンの背後からユウの月閃が襲う。
ユウを睨みつけるゴブリン。攻撃を加えようとして--背後からの複数の弾丸に貫かれてHPを全損させた。
【シナリオ3】クリア。
残りシナリオ97。
もし、前書きを見ていなかった時の為にこっちにも書いておきます。詳しくは前書きを見て貰えるとありがたいです。
前回の2人の全力PVPの最後にユウの傍にいた子のキャラメイクを追加しました。そちらを見てからだと分かり易いと思います。