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One Route Online  作者: 向日葵
~ログアウトを目指して~
7/25

シナリオ2 ゴブリンの防衛線突破

今回は良つもりよ6、700文字程多くて目が疲れてしまう可能性があるので、ごゆっくり読書する方がいいかもしれないですー。

続きが気になるぜーヒャッハー!って方はどうぞ、一気にお読みください!

約6000文字程度どうってことないぜ、って方もどうぞ!

 アキの生産スキルにより、その場にいた全員が私服のような格好になっていた。勿論、防御は前に比べると格段に上がっている。

 チルは薄青色のワンピースの様な服を着ている。普通に目の保養になる程に似合っている。街中ではナイフと拳銃を装備していないから特に違和感を感じる事も無い。

 ナギは薄茶色のパーカーを着ていた。此方もチル同様に、なかなか似合っていた。

 アキはというと、ユウと狩りに行った時と同じ格好をしている。


「うんっ。 皆似合ってるよ」

「おー…。 見た目重視なのに防御もそこそこ。 生産職も侮れないな」

「ワンピースの丈が短い…」


 チルは落ち着かない様で、手で裾を押さえていた。


「それで、今から行くクエストってどういった内容なんだ?」

「ゴブリンの防衛線突破が目的だな」

「あれ、意外と楽そう?」

「なら、ナギが1人でマジシャンを…」

「おい!? 俺は近接専門だぞ!」

「ならファイターを」


 チルがナギに一部隊押しつけようとする。

 そこで、ふとユウはある事に気が付いた。


「なぁ、なんでアーチャーやらせようとしないの?」

「私一人で、十分だから」


 無い胸を張るチル。口に出したら問答無用でフィールドに連行されじわじわと殺されるだろうことはユウにも容易に理解できた。


「弓矢は属性なしの物理攻撃で迎撃できるの」

「なるほど。 チルはそれが出来るから一人で大丈夫、と」

「うん。 ちなみに、魔法は同じ属性が付与されていれば攻撃で落とせる」

「お前、面倒くさいから俺等に押し付けようとしてるのか…」

「うん」


 潔く頷くチル。呆れを通り越して尊敬してしまいそうになるほど潔かった。


「魔法も、2人いればなんとかなると思うけど、ファイターは1人でいかないと人数が合わない」

「なるほどな。 んじゃ、ユウはどっち行きたい?」

「どっちでもいい--「じゃ、アキと魔法使いに行こ!」--らしい」

「分かった。 俺はファイターな」

「アーチャー終わったら、直ぐに行くから」

「さんきゅ」


 事前に役割を決め、皆揃ってアキの露店から出る。アキは露店終了操作をし、露店を閉じる。

 4人でパーティーを組み、目的の場所であるグランディオーソの森へと向かう。ちなみにグランディオーソも音楽記号で意味は『壮大に』、という意味である。何故そんな名前が付いているのかと言うと…。


「「「「………なんて、壮大な森 (なんだ)」」」」


 壮大な森、としか表わせないほどそうだな森だった。だが、まだユウ達は知らない。森だけが壮大ではないという事に…。


「この森もIDらしいね」

「うーん…。 β時代から変わってなかったらいいけど…」


 一度ボアのトレインで死にそうになってるだけあって心配しているチル。

 ゴブリンの数が増えてるとか、いる場所が変わってるとかだったらどうしよう、と考えてしまう。しかし、失敗すればまたやればいいか、と思い切って拳銃とナイフを装備する。周りもそれに倣って各々の武器を構える。


「それじゃ、行くぜ!」

「「「うん(おう)!」」」


 4人は青い光の中へと飛び込んだ。


 森型のIDは、なかなか広かった。

 ユウ達がIDに入って暫く歩いた時、数体のゴブリン達と遭遇した。3つのグループに分かれて3か所に固まっている。


「あっちのアーチャーは私が行く。 ユウ達も、気を付けて」

「了解した」


 ユウとアキはマジシャンの塊へ、ナギはファイターの塊へと向かう。

 ユウとアキが向かった先には防護壁の後ろに隠れる様にして待機しているマジシャン5体。防護壁が邪魔で近付く事が出来ない様になっている。流石防衛線突破クエストだな、なんて事を思いつつもユウはアキに話しかける。


「数秒ならあいつ等の視線を外せるけど、あの防護壁なんとかできそうか?」

「うーん…。 全部は無理だけど通過するための数か所くらいなら出来るんじゃないかな」

「んじゃ、それで行こうか。 一応俺も防護壁潰しは手伝うから。 …【幻自影】」


 防護壁の向こう側に自身の幻影を作り出し、その幻影に相手のターゲットを取らせる。ユウのもくろみ通り、マジシャンたちは現れた幻影にターゲットをし、一斉に火炎魔法を構える。


「行くぞ! 弱点は氷!」

「うんっ」


 ユウが【読み取りⅡ】で得た情報では、相手の弱点は氷と書かれていた。レベルは20とゴーレムよりも高い。

 情報通り、ユウとアキは下級アイス・エンチャントを発動させる。ユウは身体強化バフも使えるのでいつもの3重掛けも忘れない。


「【月閃】!」

「鍛冶鎚あたーっく!」


 アキはスキルを使わずに鍛冶鎚で防護壁を殴りつける。ちなみにこの鍛冶鎚はラピスハンマーである。勿論、耐久無限アイテムである。

 アキの振り降ろした鍛冶鎚はいとも容易く防護壁を砕く。アキが「全ての防護壁は無理」と言ったのはただ単に時間が無かったからなだけであって、十数秒あれば普通に全て壊しきれたのだ。

 対してユウの放った【月閃】も防護壁を砕く。此方はスキルを発動させている事と【STR】増加の【パワーアップⅡ】で攻撃力地を上昇させ、さらに【スピードアップⅡ】で勢いも付けての一撃なので砕けて当たり前なのだが。ちなみに時間にして約5秒。

 2人が通れるだけの隙間ができ、そこから防護壁の裏へと回る。

 マジシャンたちの放った魔法は幻影を通り抜けて森の奥へと消えて行った。それと同時に、防護壁が破壊された事で、幻影では無いユウ達の存在に気付く。


「ニンゲンメ!」


 そう言ってゴブリンマジシャン達は一斉に火炎魔法を構える。構えられて、ユウは気付く。現在、2人共【下級アイス・エンチャント】を付与している。

 魔法を消す事が出来ない。直ぐ様それを理解したユウは【AGI】全開でアキの前に出る。アイス・エンチャントを切ってブレイズ・エンチャントに切り替える。

 それでも解除、付与の2段階を踏まないといけないので飛んできた火炎魔法【ファイアボール】の3発は直撃してしまうが、残り2つは【月閃】により打ち消した。


「忘れてたっ。 ごめんねユウさん!」

「おう。 気にすんなよー」


 そう言いつつもマジシャン共に攻撃を浴びせる。


「【一閃】!」

「【ショックインパクト】!」


 どうやら鍛冶鎚ではハンマースキルも使用できるらしい。その一撃はゴブリンマジシャンの脳天に鍛冶鎚が炸裂し、一撃で倒せはしなかったものの、スタン状態にした。

 同じくユウの一撃も倒すまでには至らなかったものの、対象の周辺にいたゴブリンマジシャンをノックバックさせて相手の魔法を発動前に潰す。

 アキはおまけ、とばかりに左手で包丁を握ると、スキルを発動させる。


「【3枚降し】っ!」


 スタンしていたゴブリンを綺麗に3等分 (リアルならグロいが)にし、止めを刺す。これでようやく1体討伐だ。

 ユウも追撃とばかりに【月閃】を放ち、止めを刺す。


「…俺も何か別の武器持とうかな」

「でも太刀って両手武器ツーハンドウェポンだよね」

「でも、スキルのクールタイム的に辛いんだよなー」


 そんな雑談をしながらもユウ達は残った3体を討伐して行く。

 ユウ&アキペアは順調に進んだ。



 チルはアーチャーの放つ矢に、銃弾を合わせる。狙い通り矢と銃弾がぶつかり合い、空中で火花を散らせる。連射可能な拳銃と違い、弓矢はいちいち矢をつがえなくてはならない。それが良い、と言って装備するプレイヤーもいる。というか、大半がそうだ。

 アーチャー側の防護壁は5つに分かれており、それぞれの後ろにアーチャーがいる。チルはこの変更点に舌打ちをする。βテスト時代は固まっていてくれたのだ。

 身体強化バフの3重掛けと【アイス・エンチャント】を掛ける。


「【ナチュラルバレット】!」


 チルの打ちだした銃弾は寸分違わず防護壁から顔を出していたゴブリンアーチャーに直撃する。ユウ達は知らなかったが、人型Modの弱点は頭だ。

 属性強化の効果を持つ銃弾に弱点属性を乗せたクリティカルの一撃はゴブリンアーチャーのHPを削りきった。そのゴブリンが消滅した防護壁の裏に隠れて第2射をやり過ごす。


「ふぅ…。 結構、キツイ…。 せめて、アーチャーが固まってくれてればレインバレットでどうにでもなったのに…」


 小さく愚痴るチル。防護壁にかなりの数の矢が撃ち込まれ、そろそろ崩れると言う所でチルは飛びだした。

 虚をつかれたゴブリンアーチャー達は、瞬時に反応出来ずに1秒ほど固まる。

だが、チルにはその1秒で充分だった。


「【光突】! 【ナチュラルバレット】!」


 近くにあった防護壁を迂回し、その後ろにいたゴブリンアーチャーに光突を叩き込み倒す。それと同時に振り向いて防護壁の隙間から迎えに見える防護壁の隙間へとナチュラルバレットを撃ち込み、そこにいたゴブリンアーチャーも仕留める。


「後、一体」


 そう呟きながらリロードを発動し、弾の補充を行う。別にマガジンを装填するとかそういう動作は必要ない。

 これからチルが使う技は弾が最大で無ければ使えないスキルだ。つい最近【拳銃】スキルが20になって覚えたスキル。

 エンチャント、バフが掛っている事を確認すると、最期の防護壁に向かって拳銃を向ける。


「【ストームバレット】…!」


 マガジンを入れる動作が必要ない分、弾数も普通ではありえない数だったりする。

 チルが使う拳銃は30発。そして、ストームバレットはその全ての弾丸を高速で連射するスキル。勿論、スキルだから通常攻撃よりもかなりの威力が発揮される。

 はたして、打ち出された銃弾は10発ほどで防護壁を破壊し、20発以上がその奥にいたゴブリンアーチャーにあたり、消滅させた。

 面倒な変更点だ、と思いつつももう一度リロードを発動させて、チラッとユウ達とナギの方を見たが大丈夫そうなので心おきなくチルは前に進んだ。



 ナギは正面から突撃していた。なにせ、ゴブリンファイターのいる場所には防護壁が無いからだ。ナギの接近に気付いたゴブリンファイター達は一斉に剣を構え、ナギに襲いかかる。

 一度大きく息を吐くとナギは神経を集中させた。前までやっていたVRゲームのPVPを思い出しながら槍を構える。

 襲い来る5つの剣。それは、傍から見れば誰もがナギの死は確定だと思っただろう。

 だが、その全ての攻撃はナギに届かなかった。掛けていた3重バフと鍛えられたステータス、さらにはPVP経験を全て発揮し、その攻撃を弾き、受け流した。


「んー…。 やっぱりPVP決勝戦の時と比べると実力差が明らかだなぁ」


 要するに物足りない、と心の中で呟くナギ。

 ユウ同様にして読み取りⅡで相手の弱点を探り、アイス・エンチャントを付与する。


「【シングルスラスト】!」


 ナギの【AGI】で打ち出されたシングルスラストは、ゴブリンファイターのHPを消滅させる。そして、今度は1つ減って4つの斬撃が襲いかかってくる。


「ははっ! いいねぇ!」


 再度全てを受け流し弾き、笑う。ブルーボア以来の数対1の状況を、ナギは楽しんでいた。やはり、危機感があるというのは堪らない、と心から思うナギだった。


「おらぁ! 【グランドスラスト】!」


 ナギは地面に槍を突きたてる。そうする事によってスキルが発動し、4体の足元から鋭い岩の槍が現れる。

 だが、それでも倒すに到らなかった。ナギは即座にその場から離脱し、隙なく槍を構える。

 4体の内の1体のゴブリンファイターが、剣を上段に構える。【片手剣】スキルを発動させる。周りのゴブリンファイター達も同じくスキルを発動させる。

 それを見たナギは、口元を吊りあげた。自分の持っている槍を思い切り引き絞り、溜めの動作をする。その間にも、ゴブリンファイター達はスキルを発動させた剣をナギに叩き込もうとしてくる。

 ナギは、寧ろこれを狙っていた。全体に均等にダメージを与え、即座にその場から離脱し、前方から全員が攻撃してくる事を。

 ナギが放とうとしているのは【チャージングスラスト】という溜めが出来る突き技。最大溜めに2秒ほどかかるが、ゴブリンファイターの動きは遅い。そして--


「【チャージングスラスト】ぉぉ!」


 --このスキルは、2秒間の最大溜めで攻撃力は2倍になる。さらに、その範囲も2倍になる。余波の攻撃力ですら2倍になる。

 ナギの最大2秒溜めの突きスキルが放たれる。その一撃はゴブリンファイター4体を巻き込んでそのHPをミリも残さず消し飛ばす。


「やれやれ、やっぱり手応えは少ないが楽しいから良いか」


 チラリと周りを見渡すと既に3人とも先に行ったのか、若干残った防護壁だけがあった。


 そして、その後ボスゴブリンファイター、アーチャー、マジシャンと取り巻きのファイター、アーチャー、マジシャン戦ったのだが、此方はボス個体が3体とも固まっており、取り巻きを盾にするように陣形を組んでいた。勿論、防護壁もある…が、固まっているのが悪かった。

 ユウ、チル、アキ、ナギの4人は合流し、防護壁をチャージングスラストによってかなり大規模に破壊し、そこからは一方的な戦いが繰り広げられた。

 ボアの巣の時の様にチルが拳銃を乱発しなかったおかげで無事にクリアする事が出来た。


「ふぅ…。 なんか、ボスよりもボスにたどり着くまでが辛かったよ…」

「それは、同意する…」

「途中から完全に道が分断されてたもんね~」

「チャージング打っても壊れなかったしな…」


 アキの言う通り、途中から物凄く耐久力の高い防護壁でユウ&アキとチルとナギは完全に分断されてしまったのだ。だが、結局最後まで行くと防護壁の終わりが見え、全員でボスゴブリンをフルボッコにして今に至る。


「このゲートを抜けたら次の町に行けるのか」


 ユウ達の前にはIDの入口の様な青い光があった。

 そう呟いたユウの言葉に反応したのはチルだった。


「確か、町の近くに出たはず…。 町まで一緒に行こ。 時間は…まだ17時だし」

「おう。 んじゃ、行くとしますか?」

「森のステージだし、鉱石とか無さそうなんだよね~…」

「革とかならいっぱい出るよ?」

「ホントっ!?」


 チルの言葉に「鉱石が無い」とブツブツ呟いていたアキの目が輝く。早速職人魂に火が付いた様だ。

 そして、ユウ達はその青い光の中へと入る。その時、ユウの視界に【クエストクリア!】の文字。




 【シナリオ2】クリア。

 残りシナリオ98。

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