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One Route Online  作者: 向日葵
~ログアウトを目指して~
17/25

事情説明とシナリオ8

別の小説を書いてて遅れる始末。

これからは両立だーガンバルゾー

「で、誰なのその人は」

「俺の友達です」

「ひぅぅ…!」


 現在ユウはシキにしがみつかれながらほしねこに尋問されていた。今はいないが、すぐにチルが駆けつけるだろう。何とかしてそれまでに説明を終わらせておきたいと思うユウだった。


「その友達がなんで私たちの決闘に手を出したの?」

「俺が頼んだから」

「どうして?」

「2:1がフェアじゃないと思ったから」

「…ぐっ」


 そこを突かれると痛いらしいほしねこは目を逸らして黙り込む。


「で、でも――」

「…いるならいると、行ってくれれば良かったのに」

「うわ!? いつの間に…」


 急に背後から、それも吐息を感じれるくらいの距離からチルの声が聞こえて驚いて距離をとりつつ振り返る。そこには不機嫌そうなチルの姿が。


「………そうしたら、私とユウで、チーム組めたのに」

「ん? なんか言ったか?」

「…何でもない。 で、結局どうするの、ほしねこ」

「PK一回で許そうかなって」

「シキ、逃げ――」

「【グラビティ】。 逃げれると思う?」


 逃げるぞ、と言う前にグラビティで取り押さえられるユウとシキ。


「割と、デスペナが痛かったんだから、お返し」

「…誠心誠意謝らせてもらうので、殺すのは勘弁してくれませんかね?」

「それは――」

「【グランドスラスト】!」

「なにっ!?」


 ほしねことチルの足元から鋭い岩の槍が突き出る。それをほぼ感覚で避けたほしねこと被弾しつつもその場から後退したチル。


「無事か!?」

「あぁ、割といろんな意味で助かった」

「で、どういう状況だ?」

「えーと、スキル上げ手伝っててもらって、奇襲して倒したら襲いかかられた?」

「「………」」

「…目を逸らすってことは本当なんだな」


 そう言ってナギは槍を背中に吊る。


「ふー、で、どうしようか」

「「ユウに仕返し――」」

「いい加減それから離れろ、な?」


 ナギが何とかしようと試みているが、ほしねことチルは納得いかない様子である。

 ナギは戦闘以外でなんとか宥める方法を画作するも、さっぱり思いつかない。


「あ、じゃあシナリオ進めるから許して――」

「それなら仕方ない」

「…ん、仕方ない」

「「………」」


 「シナリオ」と言う言葉を出しただけで即許してくれる2人。なんだかんだ言って、早くユウにログアウトしてほしいと思う友達思いな2人なのであった。


「ガクガクブルブル」

「シキは少し落ち着け、な?」


 この会話中、ずっと雪にしがみついたまま震えていたシキだった。


 場所は変わってトランクィッロの図書館。シキの都合上、ここが一番いい場所だと踏んだからだ。


「さっきはまともに話せなくてごめんなさい…。 一応名乗っておくと、私はシキ。 ただのアーチャーで、ユウとは……………と、友達?」

「一応友達登録してるしそうなんじゃないか?」

「じゃ、友達」


 つたない自己紹介だったが、十分他の全員には伝わったようでシキはホッとしていた。


「それじゃ、早速シナリオに…」

「お前も落ち――ぐぇ」

「…ユウも、ログアウトしたいでしょ?」


 そう言うほしねことチルに引きずられて次のシナリオの場所へと連れて行かれる。

 それを見ていたナギがシキに話しかける。


「あんたはいかないのか?」

「もう知っての通り、私は此処以外ではまともに話ができないの」

「ユウとはできるのにか?」

「慣れなんだと思うけれど…」

「なら、慣れに行こうぜ。 俺も暇してるから行くつもりだし」


 その言葉にシキは困惑したように視線を彷徨わせて最後に連れて行かれるユウの後ろ姿を見て、小さく頷く。


「わかった。 邪魔にならない様に気をつけるようにするわ」

「邪魔はないと思うぞ? ユウの話を聞く限りではな」

「それらな、いいのだけれど」


 シキは引きずられているユウを追いながら小さく零した。


 シナリオ8はトランクィッロから少し離れたところにある湖のIDインスタンスダンジョンでのクエストだ。

 ユウがNPCから聞いた話では、『ゴブリンの件は何とかなった。 ありがとう』的なことを言われ、そこに恐らくシナリオを進めなければこないであろうNPCが駆け込んできて、『カランド湖の水が汚染されて云々』と聞かされて『すまないが様子を見に行ってくれるないか』と言われてシナリオ8が開始された。

 要するに、今度はこの湖でシナリオをするのだろう。

 蛇足だが、カランドとは和らいでと言う意味の演奏記号だ。


「あ、そうだ。 これってシナリオ幾つまでこの湖なんだ?」

「えーと、シナリオ16…ぐらいだったかな?」

「そう。 16まで」


 うろ覚えで答えたチル。それを裏付けるように肯定するほしねこ。


「ちなみにシナリオ8はダンジョンの最深部に行くだけ――って、流石にこれは知ってるか」

「あぁ、クエスト欄に普通に書いてあるな」


 『カランド湖:洞窟の最深部に迎え』と書かれている。

 最深部、というからには若干たどり着くまでには時間がかかるのだが…それも、1人ではと言う前提の話だ。今のユウにはチル、ナギ、ほしねこ、シキがついているのでほぼ時間なんてかかったものではない。

――と、誰もが思っていたのだが…。


「…忘れてた」


 ダンジョンに入ってからほしねこが小さく呟く。


「ここ、スキル禁止エリアだった」

「まさかのほしねこ戦力外!?」

「杖殴りしかできない…」

「…通常矢は、威力が驚く程低い」

「ナイフも拳銃も結局はそう」

「つまり――」


 まともに戦えるのは――


「「俺らだけか!?」」


 目の前にいる敵は『マーマンランサー』と言う槍を持つ魚人系モンスター×2。こちらはスキル禁止だというのにも関わらず、相手はスキルを連発してくる。


「ナギ、一対一!」

「任せろ!」


 スキルが使えないので互いに実力だけで相手のタゲを取る。

 突き出される槍を避け、的確に反撃し、相手のHPを削っていくが、相手のスキルの余波を受けてジリジリとHPを削られていく2人。


「ユウ、隙を作って! 交代する…!」

「ターゲットとったらごめんなさい。 でも、援護するわ」

「せいっ!」


 シングルスラストをすんでのところで避けてそのまま横に転がる。そこに、すかさずチルが割り込んでターゲットを奪う。

 シキはシキで、相手がスキルを発動させる寸前に腕の付け根を狙って矢を射る。 それが当たることによってスキルを潰すことができるからだ。


「………」


 その中で、ほしねこだけが何もせずに戦闘を見つめていた。

 別に、何もする気じゃないとかそういうわけではなく、純粋に戦えないのだ。戦いたいのに、戦えない。しばらくはこのダンジョンが続く。更に、ここが終わってもまた進んでいけばスキル禁止があったはずだ。

 役に立ちたい、捨てられたくない、一緒にいたい、これでは自分がユウの役に立てていない。そんな思いがほしねこの頭の中に募る。

 ナギが苦戦し始めている。そこにユウが割り込んで交代する。今度はチルが苦戦し始める。そこにナギが割り込む。シキの援護も集中力が切れてきたのか、正確ではなくなってきている。

 せめて、自分がいれば、とほしねこは思う。自分が戦えれば、前衛3人が休憩のない交代を繰り返さずに済むのだ。

 ほしねこはインベントリを開く。まだ売っていなかった装備品が残っているはずのそこには、確かに近接用武器が2つあった。スキルが使えないのなら、スキルレベルなどどうでもいいだろうと判断したのだ。


「っ!」


 ほしねこは迷わずに操作し、その2つを武器スロットに放り込む。その際に、杖はインベントリに収納する。

 ユウが集中を切らして迎撃を失敗する。ナギの反応が遅れる。

 誰もがまずい、と思ったそこに、ほしねこが割り込む。


「や、あぁっ!」


 右手に持った片手剣で突き出される槍に対してこちらも突きを放つことでぶつけ合い相殺する。

 その様子を見た全員は唖然とせざるを得なかった。チルは戦いながらも横目でそれを見て目を見開いていた。

 なにせ、突きに突きをぶつけることは簡単にできることではない。針の穴に糸を通すよりも難しい行為だ。それも、走って勢いをつけながらだと、余計に。


「ま、だ…!」


 左手に持っていた片手剣で相手の胴を斬り裂く。手を休めずに今度は右の剣を横薙ぎに振るい、左の剣を上から下へ。

 あと少しで削りきれるというところで、槍の横薙ぎが来た。それをほしねこは剣を交差して受け止めるが、さっきは走って勢いをつけていたからいいものの、STRが足りずに思い切り押し返されて吹き飛ばされる。


「ぁ、うっ」


 元々防御の低い魔法型がSTRの高い物理攻撃を喰らえば瀕死になるのは当然だ。 その例に漏れず、ほしねこもHPが残り3割になってしまっている。

 だが――。


「ナイスほしねこ!」


 こちらに目を向けていたマーマンランサーの背後からユウが流れるように、踊るように相手を切りつける。それは、ナイフスキルの【蝶舞斬撃】を太刀で再現した行動だった。


「ぅう、疲れた…」

「突きに突き合わせるとか、お前なにものだよ…」

「っ!」


 その言い方に思わず相手の顔色を伺ってしまうほしねこ。だが、そう呟いたナギの顔には笑顔が浮かんでいた。一瞬、怯えたような顔で見られているのではないかと心配してしまったのだ。


「助かったよ、ほしねこ。 よくSTR0であそこまで出来るな…」

「勢いでやっただけだから、もうできないと思うよ」

「…それでも、十分。 お疲れ、様」

「えぇ、そうよ」


 皆が皆、ほしねこの行動を褒める。それを確認したほしねこは極限まで高められていた集中力が切れて、意識が遠のくのを感じた。




 次に目を覚ましたときは、トランクィッロの図書館だった。

 シナリオはどうなったのか、と思って顔を上げると、横で突っ伏すユウの姿に気がついた。ついでに視界に表示されているモノにも気がついた。


『ナギから友達申請が届いています』

『シキから友達申請が届いています』

『チルから友達申請が届いています』


「…あ」


 そのメッセージを見て思わず笑みを零す。


「よかった…」


 心からそう思うほしねこ。どうやら自分は本当に役に立てていたようだ。みんなから、友達登録が来ていることが、何よりの証拠だった。普通に友達になりたいと思うみんなの気持ちも勿論感じているほしねこ。

 ついでにメールが届いていることにも気がついた。


「差出人は…ユウ?」


 そばで眠るユウを見る。が、眠っているようで微動だにしない。本人に聞くのを諦め、メールを開いて本文を確認する。


『シナリオ8はクリアした。 次9だけど、またあそこっぽいからちょっと準備してからにしようってみんなが言ってた』


 とだけ書かれていた。


「仕方ない。 今回だけは、ゆっくりするのを許してあげる…」


 眠るユウにそう囁いて、ほしねこはログアウト操作をする。


 シナリオ8クリア。

 残りシナリオ92。

スキル禁止エリアで普通にスキルを使っていたのでそこを修正。

自分でかいておいて申し訳ないです…。


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