ユウ&シキの巣窟攻略 シナリオ7
どっちにしようかと思ったけど取り敢えずユウ&シキから書きました!
「「なんで敵の配置が変わってるの!?」」
ゴブリンの巣窟にユウとシキの声が木霊する。
前に来た時はファイター、アーチャー、マジシャンだけだったのに、今回はアーチャー、マジシャン、シャーマン、シールダーという物凄い面倒な組み合わせで配置されていた。おまけに防護壁まである。
「防護壁の前にシールダーが7体。 で、防護壁の後ろにマジシャンとシャーマンが計20体。 シールダーの左右に展開するようにアーチャーが10体か…」
「これ、詰んでない?」
「いや…。 うん、詰んでるな」
ここにほしねこがいれば話は別だったろうが、生憎ほしねこはいない。
ユウはどうすべきか考えて真っ先に思い浮かんだのが撤退だった。しかし、撤退をすれば恐らくほしねこの詠唱魔法が待っているであろうことは確定だ。
打開策を考え続けた結果、1つだけ思い付いた物があった。
「シキ。 俺が突っ込むから敵の攻撃が届かない範囲で援護よろしく!」
「え、ちょ!? 死ぬわよ!?」
「気合いだぁぁぁ!」
ユウはやけくそでシールダーのターゲットを取り、右に展開しているアーチャーに向けて【縮地一太刀】を放つ。瞬時にアーチャーを切り抜け、2体を斬り裂き止めをさすが、防護壁の向こうからシャーマンのデバフが飛んで来る。
「野郎、ぶっ殺してやらぁぁぁ! 【残撃】」
右側に残っている3体のアーチャーに向けて黒い剣気を飛ばす。デバフが掛った状態でワンキルは出来なかったものの、中央に向かってふっ飛ばし、シールダーと衝突させる。
そして、その動きが瞬間だけ止まった。シキはその隙を見逃さずに弓スキル90で覚えるスキル【複矢・嵐】を発動させる。
シキの放った矢が数十本に分裂し、相手を包み込む嵐となって敵に殺到する。
「ナイス援護! 【幻自影・複】」
幻影スキルは使うだけでそのレベルが上がるので太刀よりも上げやすいという利点がある。
ユウは複数の幻影の内の1つをターゲットし、入れ替えスキルを発動させる。
「【幻影交代】」
シールダー、アーチャーを幻影で惑わせながら残り5体のアーチャーの方へ走る。背後のシールダー、アーチャーはシキに任せても問題ないだろうと判断したのだ。
「【縮地一太刀】」
再度同じようにアーチャー太刀の背後に回り込んで残り3回使える残撃の1回を使う。これまた同じように中央に吹っ飛び、シキの矢の餌食になる。
「--敵を焼き尽くせ エンシェントファイア】」
「ちょっ!?」
まさか普通の敵がエンシェントファイアを使うと思っていなかったユウは直撃をその身に受けてしまう。
「ユウ?!」
シキの声が聞こえるが、ユウはそれに反応しているどころでは無かった。なぜなら、氷魔法の詠唱が聞こえてきているからだ。しかしそれを止めるには防護壁を突破する必要がある。
ユウは詠唱が完成する前に似たような状況があった事を思い出してその時と同じ事を実行する。
「【幻自影・複】!」
防護壁の向こう側に複数の幻影を作り出す。それを敵とみなしたマジシャンがそこに向かってアイシクル・リンゲージを放つ。間一髪でユウは氷の詠唱魔法を喰らわずに済んだ。
「ユウ、HP、HP!!」
「うお!?」
自分のHPを見て驚いたユウ。HPの残量は何と数ミリだったのだ。
慌てて自分のHPを回復させるユウを横目に、シキは防護壁の向こう側に向かってスキルを放つ。
「【終之矢】」
弓スキル100で覚えれる最早弓で出来る芸当では無いスキル。
マジシャンたちを囲う様に周囲の空間が歪む。上下左右全ての空間が、だ。シキが構えた矢を放つ、と同時にその歪んだ空間から数えきれない様な矢が放たれる。
デバフを受けなかったシキのその攻撃は比較的防御の薄いマジシャン、シャーマンのHPを削りきった。
「ふぅ…」
「すまん。 普通に油断してたわ…」
「うぅん。 気にしないで良いのよ」
そこでユウはふと気付く。シキが普通に話している事に。
しかし、ここで指摘してしまったらシキがまたチャット勢になってしまう気がしてあえてユウはその事を指摘しなかった。
「しかし、まだここから先があるんだよな…」
「そうね。 あそこの配置も変わってるって思った方が身のためだわ」
シキはMPポーションを飲みながら言う。
「…不味い」
「それは言ったらダメだと思う」
今まであえて口にしなかったユウだが、実はこのポーション目茶苦茶不味かったりする。
なんと言うか、表現できない不味さというのがこのポーションの味だ。しかもHPとMPによって味が変わるがどちらも不味い事に変わりは無い。
「準備おっけー?」
「えぇ。 行きましょう」
出現していたポータルに飛び込むユウとシキ。巣窟に入った時とは違い、今度は2人同時にポータルへと入った。
「あれ、変わってない…?」
「本当だ…」
ユウ達の警戒は無駄だったようだ。この前来た時と配置が換わっている事は無い。
「此処をなんとかする手段は持ってるのよね?」
「一応援護はしてくれよ…?」
そう言いながらユウは索敵範囲内に入り、全てのターゲットを奪う。
「【縮地太刀・複】」
5回の斬り抜けで元いた位置とは反対側に出るユウ。そしてそのまま端っこの方に走り出す。
それを見たシキは焦って矢を構えようとして、目を見開いた。気が付いたらユウが大群の反対側、つまりシキの方に現れていたからだ。その背後では信じられないくらいの軌跡が描かれている。ユウは振り向いてじっとその軌跡が消えるのを待つ。
軌跡が消えた時、そこに残っていたのはボス級のシールダーだけだった。
「あれ、今回は上手く言ったと思ったんだけどな…」
「何をしたの!?」
「いや、ちょっとスキル使っただけなんだが…」
「そ、そうなの…」
驚きながらも今度こそ矢をつがえ、ボス級シールダーに向かって放つ
「【一陣・鋭風】」
ユウと初めて会った時にも使ったスキルだ。1本の矢は凄まじい速度でシールダーに迫り、その喉元を貫いてHPを奪い取る。
その後、ユウが何かを奥の祭壇の様な所にささげていたが、シキには何をしているのか解らなかったので取り敢えず回復を優先する事にした。
「ありがと。 助かったよ」
「ふぅ…。 私もシナリオクリアしたみたいだし、お互いさまよ」
シキはそう呟くとその場にへたり込んだ。
どうしたのか、と心配したユウが駆けよるとシキはユウを見上げ、隣を指差す。
「ちょっと、此処に座ってくれる?」
「え、あぁ…」
ユウが座ると、シキはユウに身体を預ける様に力を抜く。
「え、ちょ、え…? どうした…?」
「ちょっと、疲れたから休ませて貰える?」
「あぁ、そう言う事か」
ユウは順調にシキのコミュ障が直ってきている事に小さく微笑むと、シキの疲れがとれるまで隣に居続けた。
実はシキも気付いたらユウと普通に話せていた事に気が付いていた。だから自分がどこまでユウとコミュニケーションをとれるのか、と思い丁度疲れていたので寄りかからせてもらったが、特に恐怖心などを覚える事は無かった。
これはコミュニケーションというよりスキンシップな気がしなくもないが、なんて思いながらもふと気を抜いたら眠気が襲って来て、シキはそのまま眠ってしまった。
シキが眠る前に思ったのは、どうして空腹とかは感じないのに眠気だけ感じるんだろう、ということだった。
ユウは眠ってしまったシキを見て少し寝かせてやろうと思い時計を確認する。現在午前10時10分。30分くらい眠らせてやろうと思い、ユウ自身はMPポーションを飲んで不味さで目を覚まし、ついでにMP回復をする。
「そういや他のプレイヤーでも寝落ちとか無いんだな…」
ユウは自分はログアウト不可だから寝落ちが出来ないもんだと思っていたのだが、隣で眠るシキを見てそれは間違いだった事に気が付く。
「うぅん…」
シキがもぞもぞと動いたかと思うと、ユウの膝を枕にしだした。ユウの膝を覆い隠してしまう黒い長い髪が広がる。
それをみたユウは再び小さく微笑んで暫くの間、シキの寝顔観察をしていたのだった。
それから30分経って、ユウはシキを起こそうとしたのだが全く起きる様子が無い。どうしようか、と少し悩むが、今回ばかりはどうにもならない様な気がしたので適当にインベントリを開いて習得したアイテムや素材などを片っ端から見て行く事にした。
これは防具に使える素材、これは普通に店売りでもいいといったものに分けて行く。所持金はまだ2万Gと、心もとない額なので、手に入れた素材などをアキの店で売りさばこうと決めて、インベントリを閉じる。その時間およそ10分。
「うぅ…。 う…?」
ユウの膝の上でシキが目を覚ましたのだろう。現状を把握しようと目をぱちぱちさせている。
まず、シキがユウに寄りかかって休んでいた時ん寝てしまった事を思い出し、次に自身がどのような状態で寝ていたかを確認し--た所でシキは跳ね起きた。
「あ、あぅ、ぁ…」
顔を真っ赤にして小さな声を漏らすシキにユウは若干笑みを浮かべながら…。
「おはよう」
といった。
「お、おはよ…」
すると、シキも少し微笑んで返してくれる。
その後、ユウは起きたシキを連れてゴブリンの巣窟から出る。
シナリオ7クリア。
残りシナリオ93。
なんかユウとシキがラブコメしてる気がしなくもないですがきっと気のせいです。
さて次はほしねこ&チルの方ですね!どんな展開になる事やら…。




