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One Route Online  作者: 向日葵
~ログアウトを目指して~
13/25

ほしねことチル ユウとシキ

『どんなチートを使ったの』


 トランクィッロについてそんなチャットが届いた。相手はチルだ。


『チートなんか使ってないって』

『私がログアウトした時は37だったのに、どうやったらレベル50を超えるの。 3文字で答えて』

『無理だ』

『チート ほら、コレ3文字』

『だから違うって!』

『ところで隣にいる子誰?』

「何処から見てやがる!」

「此処」


 声がしたのは後ろの方。ユウが振り向くと、じーっと見つめるチルと目があった。


「この距離なんだから普通に話せよ…」

「驚かせようと思って」

「わー、びっくりしたなぁ」

「【光突】」

「【ファイアボール】」


 チルが放ったナイフの突き攻撃に火の玉が直撃し、相殺される。チルはあからさまに不機嫌そうな顔をし、ほしねこに質問する。


「で、貴方は誰なの?」

「普通の一般プレイヤー」


 息をするようにさらっと嘘を吐くほしねこ。

 ユウは知らないが、このキャラ自体はGMの権限を使えたりする訳ではないからあながち間違っていない。


「どしてユウと一緒にいるの?」

「ユウがどうしても手伝って欲しいって言うから」

「おい!?」

「へー…。 ユウは私達のこと戦力外だって思ってたんだ…」

「そんな訳無いだろ!?」


 全身から怒りオーラを放つチル。その手にはナイフと拳銃が握られている。

 チルがユウに拳銃を向ける。ユウは思いっきり横に飛ぶ。


「【ストームバレット】」

「あっぶねぇぇ!」


 紙一重で銃弾の嵐を回避しきったユウは顔を上げて--突き出されるナイフが視界に入る。


「【グラビティ】」

「ぅ、あ…」


 ほしねこが無理矢理チルを止める。相変わらずチートの様なスキルだ。


「なに、これ…」

「ただの火、氷、地の3つをマスターしたら習得できるスキルだよ」

「動け、無い…っ」


 ほしねこは抑えながらMPポーションを飲む。どうやら1人相手でも相当なMPを消費するらしい。


「く、ぅ…」

「………解放して欲しかったら、取り敢えず落ち着いて」

「うぅ…」


 大人しくなったのを見計らってほしねこはグラビティを解除する。

 動けるようになったチルは再び飛びかかる--なんて事はせずに、その場に座り込んで此方を見上げている。

 そんなチルにほしねこが歩み寄り…。


「ねぇ、ものは相談なんだけど…」

「…?」


 チルの耳元で何かをささやいているほしねこ。それを聞くチルの表情がだんだんと変わって行く。

 驚き、納得、悩み、決意、笑みとコロコロと表情を変えるチルが可愛いと思ったが、決して口にはしないユウだった。


「ユウ」

「どした?」

「私達、ちょっと用事があるから、戻ってくるまでにシナリオ7にして、太刀のスキルを100にしといて」

「え、無理じゃ--」

「【大地よ、その身を砕き…」

「おーけ。 任せろ」

「良い子」


 ほしねこはユウのパーティから抜けて、チルのパーティに入る。


「それじゃ、行って来るの…」

「お、おう…」


 チルとほしねこはゴブリンの巣窟の方に向かって歩き出す。

 ユウは追いかける事もせずに、ただその場で立ち尽くしていたが、言われた事を思い出して取り敢えず報告に行く。

 そして次のシナリオクエストは--。


「この手紙をアンダンテの町長に渡してほしい」


 まさかのおつかい系クエストだった。こんなのシナリオにする必要があるのだろうか、と思ったユウだったが、それを言うとほしねこの怒りを買いそうな気がしたので黙ってアンダンテの町まで戻った。


「ユウさん…。 レベル上がり過ぎなんじゃ…」

「スキル上げしてただけなんだけどな…」


 アンダンテについて町長に手紙を渡したら「これはなんと言う事だ!」と叫び、部屋の奥には言って2つの宝石の様なものを持ってきた。そして「これをグランディオーソの森、ゴブリンの巣窟の最深部に捧げて来て欲しい」と言った。

 つまり、またあの場所に行かなくてはならないのだ。ほしねことの約束はシナリオ7までだ。要するにこれを終わらせなければグラビティからの詠唱魔法で瞬殺されるのは目に見えている。

 だから、少しアキに協力して貰う事にした。


「うん。 別にラピスはあるけど、結構お金取るよ?」

「別に良い。 無駄に溜まってるから」

「それじゃ、ちょっと、待ってね」


 アキに頼んで最強の武器を作ってほしいの頼んだ所、ラピスラズリで成長装備が作れると言っていたので任せる事にする。

 ちなみにラピスラズリ単体では太刀にならないのでその他鉱石を駆け合わせることで出来る。その代わり、少し時間がかかる。

 その時間を使ってユウはログインしているシキにチャットを飛ばす。


『少し良いか?』

『なんですか?』

『少々ゴブリンの巣窟を手伝って欲しいんだが』

『それはつまり私にパーティーを組めと言うの? 無理、私死んじゃうわよ』

『援護してくれるだけで良いから。 出来るだけ目も向けないようにするから』

『慣れないと、いけない事ではあるし…。 わかった。 何処に行けば良い?』

『トランクィッロの図書館にいて。 直ぐ行く』

『わかったわ』


 シキとのチャットを終え、顔を上げると既に太刀は完成していた。


「はーい。 こちら500万Gです」

「たっか!?」

「あははっ、冗談だよ。 特別価格50万Gだよ」

「それでも高いっ!」

「そうだねぇ…。 払えないならちょーっとこっちに来て貰おうかなぁ…」

「はい、50万G」


 ユウは決死の覚悟でインベントリから50万G(全財産)を出す。アキは受け取って50万Gある事を確認して太刀を差し出してくる。


「成長武器なんだから、100万以上盗られても文句は言えないんだよ?」

「肝に銘じておきます」

「あと、これは無料ね。 いつもご利用ありがとうの印って事でっ」


 太刀と一緒に服も差し出される。灰色のコートと黒いズボンだ。

驚いた事に、+Lが付いている。


「生産系スキル上げてたらラピスの針、ラピスのハサミとかを作れるようになったからねっ」

「なるほど…」

「成長防具も作れるように頑張っとくねっ」

「おう、頑張れ!」


 適当に話し終えて来た道を戻る。


「さて、グランディオーソの森がある事だし、シキを待たせない程度にさっさと行くか」


 装備が更新されている事を確認して森に入る。そこでユウを待ち受けていた物は--。


「ちょ!?」


 ゴブリンウォリアーの大群だった。余りの多さにユウは眩暈がしたが、ほしねこの言葉を思い出して太刀を構える。


「てめぇらなんか怖くねぇ! 【神速之太刀】!」


 一番奥のウォリアーにターゲットし、最強のAGI関係スキルを放つ。

 ユウの身体は瞬時にウォリアー達を切り抜け、ターゲットしたゴブリンの後で制止する。


【太刀スキルが80になりました!】

【太刀スキルが90になりました!】


 ログに2つのメッセージが流れる。確認したい所だが、まだ殲滅しきれていないので後回しにする。


「【縮地太刀・複】」


 安定のスキルぶっぱで5体のウォリアーを仕留める。残りは3体だ。

 ユウは何のスキルを使おうかと思い、90で習得したスキルを発動させてみる事にする。


「【残撃】」


 システムがユウの身体を動かし、太刀を真一文字に振り抜かせる。動作は一閃と同じだが…。


「うわぉ…」


 前方に黒い剣気の様な物が飛んで言って延長線上にいたウォリアーを切り裂く。

 しかもこのスキルを撃った後なら、3回まで任意で今の剣気を飛ばせるらしい。なかなか便利だが、もはや太刀である必要性の無いスキルだと思わなくもない。  まぁ、今までも物もそうなのだが…。


「よし、取り敢えずこれだな」


 町長に渡されていた宝石をなんか禍々しい1本の木に捧げる。

 すると、その禍々しい木が無くなり、シナリオクエスト7クリア条件の片方を達成したマークが付く。

 あまり時間を掛けていられないのでさっさと森を抜け、トランクィッロの図書館へと向かう。

 シキと約束してからまだ7分くらいしか経ってはいないが、もし短気な性格ならHPを捧げる必要がありそうだ、なんて思いながらも図書室に入る。


「速かったわね」

「自分から誘っといて待たせる訳にはいかないだろ?」

「ふふっ。 それもそうかもね」


 シキをパーティーに誘う。

 そう言えば、と思いレベルを確認すると、何時の間に上げたのかシキのレベル50になっていた。


「ゴブリンの巣窟…。 あのウォリアー、シャーマン、シールダーをどうにかする策はあるの?」

「多分それについては大丈夫だと思う」

「そう。 なら、行きましょうか」

「此処から出たら--」

「勿論チャットで」


 ドヤ顔でそう言ってくるシキ。

 袴で矢筒を背負い、弓を肩に掛けてのドヤ顔は思いのほか似合っていた。

 ドヤ顔シキを連れてゴブリンの巣窟に向かう。途中の敵は幻影のみで倒すのを心がけてみたが、シキが容赦なく心臓部や喉元に矢を放つのでなかなか幻影のレベルが上がらなかった。が、袴を着て、弓を構えるその姿はとても綺麗だった。

 そう言えばうちの学校にも弓道部あったよな、と思いつつもゴブリンの巣窟の前にたどり着く。


「それじゃ、行くか」

『えぇ、行きましょう』


 ユウの声掛けにチャットで答えるシキ。

 ユウはチラッとシキに目を向けると、ビクゥッ!とお決まりの反応を返してくれた。

 先にユウがIDの青い光に飛び込み、少し遅れる形でシキが飛び込む。


「さて、いっちょ頑張りますかね…。 俺のHPの為にも…!」

「どう言う事なの!?」


 ユウが1人で呟いた事に、珍しくシキが普通に困惑した声を上げた。

次はほしねこ&チル視点を書くか、ユウ&シキ視点を書くか…。

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