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なんでも屋稼業 その1 雷電の秘密

 雷電は士郎に銃口を向けた。

「残念だが、ここで死んでもらう」

 士郎は平常心で答える。「やってみな!」

 その瞬間、銃口が火を吹いた。

 だが士郎は椅子にしっかりと縛り付けられていたにもかかわらず、ピストルの発射音と同時に身を翻し、更にその椅子を雷電に向かって投げつけた。

 士郎は体の関節という関節を外す訓練を積んでいる。そんな士郎にとって縄抜けは得意な技である。

 予想外の士郎の攻撃に雷電は対処しきれずに、何とか身をかわそうとするが、椅子は彼の右手を直撃した。その為、持っていたピストルが床に転げ落ちた。

 更に、彼に向かって手裏剣が襲い掛かる。

 彼はかろうじて、それらを避けるが、息つく暇も与えず、士郎が突進してきた。

 正拳突きを脇腹に数発命中させる。

 そして、とどめに彼の顔目掛けて飛び上がりざま膝蹴りを食らわそうとする。

 だが、士郎の足を掴まされた。

 バランスを崩した四郎は、背中から床に叩きつけられる。

「お前、なかなかやるじゃあないか!」雷電は士郎を見下ろしながら言った。

『おかしい、あの状態でなぜ、あんな事ができたんだ?』士郎は心の中で思った。

 その心の中を読み取ったのだろう雷電が言った。

「ふん、驚いているようだな。俺を甘く見るんじゃあないぞ!」

 雷電はそう言いながらカンフーの構えをする。

 それを見て、士郎も跳ね起きた。

 雷電は、体を回転させたり、腕や足を使いながら攻撃してくる。

 士郎はそれらを避けながら雷電の動きを見切ったと思った。

 そして、彼の拳が士郎の顔にヒットする瞬間、避けてから反撃に出ようと思った。

 だが、不思議な事に避けたと思った刹那、顔面に強い衝撃が走る。

 士郎はよろけたが、何とか踏ん張った。

 次に再び雷電の回し蹴りがくる。

 これも士郎は余裕でかわすが、次の瞬間、やはり同じ方向からの強い衝撃が走る。

 こうして、士郎はかわしているはずだが、雷電の奇妙な攻撃に翻弄され反撃の機会さえ与えられない。

 士郎は、やられっぱなしになりながらも、忍者としての本能が働く。バクテンをしながら雷電との間に間合いをとった。

 そして、雷電が攻撃を仕掛けてくる瞬間、手裏剣を使って部屋の明かりを全て消し去る。

 暗闇こそ忍者の最大の武器である事を思い出したのだ。

 急に暗闇となり、さすがの雷電も動きを止めた。

 お互いに気配の探りあいである。

 すると、雷電の耳に“リーン、リーン”という鈴虫の鳴き声が響いてくる。

 雷電は、それが士郎が発していると判断し、そこへ向かって攻撃を仕掛ける。

 だがその瞬間、鈴虫の声は別の方角から響いてくる。

 “リーン、リーン”

 今度こそとばかり雷電がその方向へ向かって襲い掛かる。

 だが、なんの手ごたえもない。

 暫しの静寂の後、再び別の方向から鈴虫の声。

 闇の中で、士郎は思っていた。雷電が攻撃を仕掛けてくるとき、微妙に2つの気配を感ずるのだ。

『ほほう、雷電は1人じゃあないな』、目を開けていれば分からなかったことが暗闇の中で感覚を研ぎ澄ませれば分かることがある。

 雷電は動揺している。その動揺している気配を士郎は2つ感ずることができた。

『へへ、もっと動揺させてやろうじゃあないか!』、士郎は暗闇の中でニヤついた。

 “リーン、リーン”という声が再びしてくる。

 今度は一箇所ではない。2箇所からだ。

 その音に向かって、今度はピストルの発砲音がした。

『ちっ、雷電め、床に落ちていたピストルを拾ったな。危ない所だった。ならばもっと驚かせてやる』

 今度は“リーン、リーン”という鈴虫の声が部屋の数箇所で鳴り響いてくる。

その泣き声がどんどん増えていく。

 雷電はピストルをめちゃくちゃに撃ちだしたのだ。

 その内に、男の悲鳴が聞こえてきた。「し、しまった。殺っちまった」

 どうやや雷電が、もう1人の雷電を撃ってしまったらしい。

 こうなれば、士郎の楽勝である。

 残った雷電の気配目掛けて突進し、膝蹴りで失神させた。


 士郎は、懐から小型懐中電灯を取り出し確認して見た。

 だが、そこに倒れているのは雷電一人だ。

 雷電の周囲を良く見る。

 すると、血の塊が中に浮いて見える所がある。

 その部分を慎重に触れて見ると、なにやらシートらしき物に触った。

 それを思い切って引っ剥がすと、男の体が現れてきた。

 どうやら、このシートをかぶると、透明に見えるようだ。

 しかも、その男は雷電と瓜二つであった。

 雷電はどうやら双子だったようだ。

 これが彼の拳法の秘密だった。


 その時、凄まじい爆発音が響いてきた。

 それと同時に屋敷のあっちこっちから悲鳴があがる。

 恐らく、神風が脱出の時の為に仕掛けておいた爆薬が破裂し、突入してきた警官が遣られたのだろう。

「なんて奴らだ!あいつら絶対に許さん」、士郎は決然と立ち上がった。

 士郎には、犯人グループが何処から逃げるのかは、おおよそ見当がついている。

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