STAGE6
前みたいにオリジナルの話を描いていたほうが楽しかったと思う今日この頃。
「誰だぁぁぁっ!橙を泣かせた糞野郎共はぁぁぁぁっ!」
ビリビリと響き渡る大声量でここら一体にプレッシャーをかける藍さん。声だけでなく、その内から溢れる妖力も相まって、本当に大気が震えている。
「な、なんだ、あいつは!?」
「これは、お嬢様と同等!?」
「うっさいわね」
現れた藍さんに慄く二人と相変わらずの霊夢さん。こういった場面で、怯まない彼女は大物かもしれませんが、原因の発端は貴女なんですがねぇ。
「うぇ~ん、藍しゃま~」
「おお、橙、大丈夫だ!私が来たからには、橙を泣かせた不届き共なぞ塵にしてくれる!」
どこぞの大魔王ですか貴女は。しかも理由がしょうもない。しかも、出来なくはない実力がある分、性質が悪くてしかたないですね。
「藍しゃま~」
「ちぇぇぇぇんっ!」
ひしっと抱き合う主従。帰ってください。いや、帰らないで、そこらへんの茂みに行ってにゃんにゃんしていてください。
「あー、霊夢達なのだー」
胡乱な眼で寸劇を見ていたら、藍さんの後ろからやや間延びしたような声が聞こえてきたので、そちらを見てみれば、白いブラウスに黒いスカートをはいた幼女がついでとばかりに現れました。
「ルーミア?」
「そうなのだー」
「なんで、あんたがここにいるのよ」
「なんでって、ここはルーミアの家なのだー」
「嘘をつくな!貴様の家ではないわ!」
今まで主従漫才をしていたはずの藍さんからのツッコミが入る。そういえば、彼女がここに世話になるようになったのは確か、お父様に言われてでしたっけ?
少なからず、私とは因縁があるような方ですが、それは過去のことですし、彼女が直接かかわったということでもないので、これといった感情は浮かんではきませんね。
というよりも、ちょくちょく我が家へと来る方に一々、刺々しい態度を取っても意味はありませんし、あの方もあの方で色々と気にかけてくれていますし、性格も嫌いではありません。
「間違えたのだー。ルーミアが住んでいる場所なのだー」
「だったら聞くけど、この奥に今回の異変を起こしている犯人はいるかしら?私としては、あんたが犯人でもいいけど」
「それは、ルーミアじゃないのだー」
それにしても霊夢さんの態度はいかがなものですかねぇ?女性としての品格がないですよ?まぁ、魔理沙さんも似たようなものですが。
「なにやら、隣からすっげー失礼なことを考えられている感じがするぜ」
「あら、よくわかりましたね」
「肯定しやがった!?」
これといって否定することもありませんからねぇ。
「もうちょっと慎みを持ったほうが、女性として綺麗に映りますよ」
「どうでもいいぜ。それに、慎みってお前にもないよな?」
「何をバカな」
「いやいやいや、そこまで真黒な腹はアリスでもありえねーから」
「とても綺麗なお腹ですよ私は?」
全く、魔理沙さんは何を言っているのやら?よくわからずに首をかしげます。
「うわぁ、本気で分かってねぇ」
「この家族は大体が棚に上げるから放っておいたほうがいいわよ」
咲夜さんがとても失礼なことを言ってますね。本当に失礼な。
これでも私は、玲央様に大和撫子とはと幼小のころから教えられ、麻耶様や清明さんに女性とはこうあるべきだと常々教え込まれてきたんです。
そんな私が、腹黒なんてありえません。えぇ、ありえませんとも。
「それじゃ、奥にいる奴が犯人ね」
「んー、それはないのだー」
色々と魔理沙さん達と話していたら、霊夢さんとルーミアさんの話はまだ続いていたようですね。
「なんでよ」
「だって、この奥にいる奴は、この家の主だけど、この時期は冬眠して寝ているのだ」
「はぁ?熊やなにかじゃあるまいし、冬眠なんてするわけないでしょうが」
「事実だ」
「事実ですね」
「事実ですぅ」
霊夢さんが冬眠しているという言葉を否定しようとしましたが、私含め、藍さんも橙も肯定すると驚きの表情を浮かべました。
「なに?こいつらの主って熊かなにか?」
「熊のほうが可愛いですよ」
「煮ても焼いても食える熊のほうが全然役に立つな」
「藍しゃまも椛さんも酷い言い草です」
「でも、事実なのだー」
それに、熊のほうが胡散臭くもありませんしね。
「さて、ルーミアもういいか?もういいよな!?橙を泣かしたこの糞脇巫女をぶっ飛ばしていいよな!?」
「相変わらず、橙のことになるとダメダメなのだー」
はぁとため息を吐くルーミアさん。その意見には大いに同意します。普段はちょっと苦労性ですが、それでもがんばっている姿を見ると何やら可愛らしいはずの彼女ですが、一たび橙のことになると、見境がなくなって困ります。
「まー、ルーミアも暇だから混ざるのだー」
「はい?」
今、彼女はなんと言いました?混ざると私には聞こえたのですが。
「ちょっと関係ないあんたは引っ込んでなさいよ!」
「暇つぶしなのだ!それに、見ているだけってのもつまらないのだー」
あぁ……忘れていました。そういえば、変なところでこの方はお父様と似たような感じがあったんでしたっけ?
「まぁ、いいわ。ほら、あんたらも手伝いなさい!」
「喧嘩売ったのって霊夢だよな?」
「知りません。それに、向こうも私たちをロックオンしているようですしね」
「頑張ってくださいね」
『お前も働け!』
「だが、断る!」
先ほどから言ってますが、無駄な消耗は避けたいんですよ。
「それとも、貴方達人間は、倍の数を用意しないと、敵に勝てないんですか?……あぁ、人間は脆弱でしたね。それならば、しかたありません」
「ざっけんじゃないわよ!あんたの力がなくなって、こんな狐の一匹や二匹ぐらいわけないわよ!」
「はん!あとで、私も混ぜて下さいとか言っても聞かないからな!」
「フフフ、貴方とは一度徹底的に話さないとダメみたいね。そのためにも、この邪魔者共を始末しないと」
怪しい気配を醸し出しながら、人間三人が藍さん達に向かっていきます。
ふむ、うまい具合に挑発に乗ってくれましたね。
まぁ、藍さん自体が、人間二人分でもおつりがくるような大妖怪ですから、あながち間違いではないですがね。
そういえば、ルーミアさんは封印を解くんでしょうか?もし、解かれるなら流石に私も参戦するんですが……
「大丈夫なのだー」
「何がよ!」
「霊夢には言ってないのだ」
私に向かって大丈夫と言ってくれるルーミアさん。どうやら、私の考えは筒抜けだったようですね。
「あうあうあう、藍しゃま頑張ってください!」
「任せておけ橙!この私の勇士をとくとみよ!」
あわあわ言いながらも、被害が被らない場所……私の隣に来て、藍さんを応援する橙。変なところでちゃっかりした子ですね、この子も。
「橙、昔から言っていますが、空気を読みなさい」
「空気って読めるんですか?」
ダメだ、相変わらず変なところで天然が入りますね。うちに遊びに来るたび、それとなく注意していますが、直る気配がありません。
「まぁ、いいでしょう。昔みたいな殺し合いという訳でもなさそうですし」
藍さんも殺すだのなんだの言いながらも、スペルカードルールを守るつもりでいらっしゃいますし。
それにしても、この藍さんから溢れる妖力を考えると、昔ほどでないと言われて信じられませんね。
まぁ、何だかんだいって最強を知っている身からすれば、別段委縮するほどでもありませんが、さて、彼女たちはどうなるのでしょうか?




