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東方転犬録  作者: レティウス
娘が頑張る妖々夢
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STAGE5

「にゃにゃにゃー!」


「ちぃっ、ちょろちょろとすばしっこいわね!」


 橙が気合(?)の入った声と共に空中を縦横無尽で駆け回りながら、霊夢さんに弾幕を披露する。


 受け側である霊夢さんは時に避け、時に結界で防いでいるために現状では無傷である。


 橙が方向転換の時などを狙い、符や太極図が描かれた法具を持って攻撃しているが、こちらも橙の生来の素早さによって攻撃が避けられてしまっている。


「ひゃー、あの橙だったか?滅茶苦茶素早いな。霊夢の攻撃をこうも簡単に避ける奴なんて久々に見るぜ」


「そうなんですか?」


 私と一緒に感染している魔理沙さんが、橙の動きを見て、驚きの表情で感想を口にだしている。


「霊夢の奴は、正直に言って才能の塊だ。あらかたのことを習ったら、基本的にこつを掴んじまうし、なんとなくとか勘で理解しちまう」


「ほう」


 才能があるとは羨ましいですね。私ははっきり言って、種族的な部分も含め、才能とは無縁の存在ですし。


「特に勘に秀でているから、たとえ目で捉えきれなくても、勘で相手がいるいちに攻撃を置いておくことも可能だ。にもかかわらず、あの橙とか言う奴は、霊夢の攻撃を見てから回避しているだろ?」


「なるほど」


 今までは、相手が捉えきれなくても持ち前の勘でどうにかなっていたと。


「それですと、橙相手では不足ですね」


「そうなのか?」


「彼女の親といいますか、主である人物は、彼女の数倍以上の実力を有していますからね」


 まぁ、親バカ?……この場合は、主バカ?語呂悪いし、親バカでいいですかね。とにかくとして、それをいかんなく発揮して、彼女をそれこそ文字通り猫可愛がりして、頑なに戦うすべを教えようとはしませんでしたが、お父様の一言でやる気に満ちて、血涙を流しながら教えていましたからねぇ。


 その一言とは『どこの馬の骨とも知らん奴に倒され、穢されてもいいんか?』でしたね。


 それを聞いたときのあの人の乱れっぷりはこっけ……もとい、それはそれは凄かったですし。


「あれの数倍とか想像がしにくいぜ」


「まぁ、彼女を倒せば嫌でも出てきますよ」


 まぁ、魔理沙さん含めあそこまでの大妖怪を見る機会なんて早々にあるわけではありませんからね。


 あの吸血鬼姉妹は私より年下のくせに実力は大妖怪と大差ないから、咲夜さんに至っては耐性があるかもしれませんが、子供ですからねぇ、本当の大妖怪相手だとまた変わりますかね?


 ……そういえば、私がいつも一緒にいるあの人も曲がりなりにも大妖怪でしたっけ?にわかには信じたくありませんねぇ。


「んなことよりも、霊夢はあいつを倒せるのか?」


「なんで、私に尋ねるんですか?心配なら応援なりなんなりすればよろしいじゃないですか」


「恥ずかしいんだぜ」


「しりませんよ」


 まぁ、でも、勝つのは霊夢さんでしょうけど。


「にゃにゃー!」


「ええい、うっとうしい!これで沈みなさい!霊符「夢想封印 ‐集‐」!」


 橙の素早い動きにイラついたのか、声を荒げて七色の霊力弾を橙が通るであろう場所に放つ霊夢さん。


「にゃっ!?」


 規模が割とでかいために、回避が間に合いそうにありませんね。


「童符「護法天童乱舞」!」


「こいつ、まだ!」


 橙が更に切ったスペルカードにより更に速度を上げ、何とか霊夢さんの攻撃から逃れることに成功しましたね。


「あれより、更に早くなるのかよ」


「まぁ、あれは欠陥の多い技ですがね」


「はぁ?どこが……あぁ」


 私の説明が分からないと言った感じで追及してこようとしてきた魔理沙さんですが、戦場を外から見たからこそ、あの技の欠点が分ったようですね。


「あの速度は橙にとっても諸刃の刃なんですよ。自身も回転しながら移動しますからね、目が回ります。あと、疲れますしね」


「なんか、はたから見たら間抜けだぜ」


「でも、休んでいる時は、霊夢が体勢が整ってない時や、死角に回り込んでからだから、そこまで酷いって訳じゃないと思うけどね」


 咲夜さんの言葉になるほどと頷く魔理沙さん。まぁ、そこらへんはお父様がやんわりと教えていましたからねぇ。


「でも、一瞬でも立ち止まるって意味じゃ、こりゃ霊夢の勝ちだな」


 既に霊夢さんが勝てると確信したのか、魔理沙さんの表情は先ほどまでとうって変って楽しそうなものです。


「うざったい!夢符「二重結界」!ついでに、これも持って行きなさい!霊符「夢想封印 ‐散‐」!」


 ほう。橙が縦横無尽で駆け回りながら放つ弾幕に回避行動をとらないから、ついに諦めたのかと思ったら、結界で全方位を防ぎ、それを広範囲に散らしてスペースを確保すると、先ほど放った霊力弾をさっきとは変わり全方位に発射して橙を見事に落としましたね。


「うにゃ~」


 さすがに落とされた橙は、負けを認めたのかややボロボロになった状態で空中に制止していました。


「さぁ、勝ったわよ。通してもらうわよ」


「うっ……」


「ぬ?これは、まずいですね」


「何がだ?」


 睨みつける霊夢さんに、気押されたのか、橙の瞳に涙が浮かんでいます。


「霊夢さん。負けた人に追い打ちをかけるような真似はやめて下さい」


「私の勝手でしょうが!てか、追い打ちなんてかけてないわよ!そんでもって、あんたは、とっととどきなさい!」


「うっ……うわーーーんっ!」


 私の注意に耳を貸さずに更に追いつめる霊夢さんに、遂に橙の瞳からボロボロと大粒の涙があふれ出してしまいました。


「ますます、まずいですね」


「ちょっと、あんた、なにもこの程度のことで泣くことなんて……」


 霊夢さんも流石に泣かしたことに罪悪感があるのか、オロオロと困っている様子です。ざまぁ……って、そうじゃなく、本当にどうしましょうか。


「うわーーーんっ!藍しゃまーーーーっ!」


 あやそうとしていましたが、それでも収まらず更に鳴き声を上げる橙。


 そして、ついにそれは現れた。


「な、なによこれ!?」


「なんだ、こりゃ!?」


「これは、お嬢様以上!?」


「はぁ……」


 橙の鳴き声が木霊するその場所で、突如空気が重くなる。正直にいえば、こうなる前に止めたかったのですが、後の祭りですね。


「誰だーーーっ!橙を泣かすクズ野郎はーーーっ!!」


 そして、現れるは白面金毛九尾の大妖怪、かつて国を転覆させると言わしめた、美貌を持つ、八雲藍その人だった

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