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東方転犬録  作者: レティウス
娘が頑張る妖々夢
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STAGE1

「さて、出てきたはいいもののどうしましょう?」


 やると決めた翌日の朝早くから文さんに仕事を休むと伝えてから出てきたはいいものの、これといって情報はないためどうしようか分からずに適当に飛んでいるのですが、このままでは無駄に時間を過ごしてしまいそうですね。


 お父様や玲央様みたいに勘が働くタイプでもありませんし、麻耶様や清明さんみたいに感知能力が高いわけでもありませんし……文さんを連れてくればよかったですね。


 彼女の場合、噂話でもなんでもとにかく集めてきますから、こういう時の情報収集にはうってつけでした。


 いまさら戻って連れていくのも恰好がつきませんし、これ以上あの人の心証を悪くするのも気がひけます……いまさらな気がしますが、長年の知人ですし、そういうことにしておきましょう。


「っと、吹雪いてきましたね……はて?幻想郷の冬は吹雪いたことはありましたかね?」


 適当に飛んでいたのですが、突如寒さが強くなり、吹雪きといっても過言ではない状態になったのであたりを見回すと、一人の女性が妖精と遊んでいました。


「すいません」


「あら、ここに他の妖怪が来るなんて珍しいわね。寒いでしょう?」


 声をかけると丁寧に返してくれます。妖怪のようですが、丁寧な人は珍しいですねぇ。お父様に色々なところに連れて行ってもらい、いろんな人と出会ったことはありますが、ここまで丁寧な人は本当に珍しい。


「大丈夫?ぼーっとしているわよ。無理しないで、家に帰って温まったほうがいいわよ」


「っと、すいません。考え事をしていました」


 手を目の前でふらふらと揺らされて、思考の海から引き戻され謝ります。


 ここら辺がまだまだだと言われる所以ですねぇ。他の方たちだと思考と対応が並行してできるようですから。


「そう。それで、こんな寒いところに何の用?」


「一つ、伺いたいのですが、今回の異変は貴女が原因ですか?」


 遠回りしても意味がありませんし、ここは直球で聞きましょう。それに、経験談ですが、この手の人ならば直球で聞いても腹はたてないでしょう……文さんは見極めが下手でしょっちゅう相手を怒らせてますが。


「異変……異変ねぇ。もし、そうだと言ったら?」


「叩き潰して異変を解決します」


「物騒だこと」


 クスクスと笑う目の前の女性。おそらくは白ですね。雰囲気が綺麗すぎます。まぁ、黒でここまで綺麗な態度をとれる人もいなくはないのでしょうが、おそらくは違うでしょう。


「そうね……貴女、博麗の巫女が提唱したルールをご存じ?」


「ええ」


 お父様が色々と聞き込みをした後に、今後は必要になるから準備しろとおっしゃられたので作りました。


「私に勝ったら教えてあげる」


「……いいでしょう」


 本当は無駄なことなんてやらないほうがいいのでしょうが、この手の人は恐らく遊びたいために言ってくる率が高い。それに、今回は私から情報が欲しいと頼んだのだ、相手が対価を要求してきたのならば、払わなければいけないですしね。


「そうだ、まだ名乗ってなかったわね。私の名前はレティ。レティ・ホワイトロックよ。この季節に暴れる妖怪よ」


「白狼天狗の犬走椛です。理不尽の固まりの犬妖怪の娘です」


「何よそれ」


「はて?お父様を知りませんか?風由真理と言って、かなり無茶苦茶な人なのですが」


 お父様を知らないなんて珍しい。というよりも、お父様のことだから幻想郷の妖怪の人と全て知り合いだと思っていました。


「あんた、真理の子供なの?」


 そんなことを考えていたら、レティさんと一緒にいた妖精がお父様の名を上げて訪ねてきました。


「ええ。貴女はお父様をしっているんですか?」


「そうよ!だって、あいつはアタイの子分だもの!」


 両の手を腰にあて、胸を張りドヤ顔でいいのける妖精……恐らくですが、合わせてあげたのでしょうね。こういう素直でおバカな子って割と嫌いではありませんから。


「なるほど。まぁ、それが私のお父様ですよ。残念ながら血は繋がっていませんが、どうってことはないでしょう」


 いや、本当残念ですね。顔立ちが似ているとよく言われますが。


「ああ、なんかチルノが言っていた犬の妖怪ね。残念ながら私は会ったことないわね」


「会うのは構いませんが、あまり神経質の型だとお勧めしませんよ。疲れますから」


「ますます分からないわね」


 まぁ、お父様の性格は癖が強いって言葉じゃ表わせない位強いですからねぇ。


「まぁ、話はもういいでしょう」


「そうね、始めましょう。チルノ、ちょっと待っていてくれる?」


「いいわよ!やるからには勝ちなさい!」


「頑張るわ」


 問答も終わり、二人して空へと上がり距離を取る。


「行くわよ!」


「いつでも、どうぞ」


 レティさんが宣言すると同時に、彼女の周りに四角い結晶みたいなのが浮かびあがり、そこから弾幕が展開され襲いかかる。


「出したら、私も」


 一枚の符を取り出し妖力を込める。


「眷符「天狗の飼い犬」」


 私がスペルカードを宣言すると同時に私の足元に妖力で形成された犬が二匹作られ、大人しくお座りしている。


「行きなさい」


 手を前に出すと、足元にいた私の犬たちがレティさんに向かって飛んでいく。その道中で邪魔となる弾幕をまるで鞠を追いかける子犬のように追いかけては潰していく。


「何よそれ!?」


 レティさんが驚いているが、その間に私はレティさんに近づき無防備なその体めがけて拳を振るう。


「っ!?」


 危機一髪とはこのことだろうか?レティさんはギリギリで私の拳よ避けるも体勢はぐだぐだだ。更に詰め寄り蹴りを見舞うと、レティさんの周りにあった結晶がガードをする。


「しかし」


 阻まれた足に更に力を込めて結晶を砕ききる。


「なんて出鱈目な」


 苦い顔をしてそう呟く。


「だったら寒符「リンガリングコールド」」


 レティさんがスペルカードを取り出し宣言すると同時に、先ほどとは比べ物にならないほどの弾幕が私に襲いかかってくる。だが……


「新しい道具が来ましたよ。いきなさい!」


 先ほど作った犬たちを再び近くに呼び寄せ私に向かってくる弾幕を食いちぎっていく。


 清明さんから教わった式神術や他のその他もろもろを教わり応用で作ったこの犬たち。私の妖力の優に七割を使って作るこの子たちはそう簡単には消えはしない。


「ちょっ!?なによそれ!」


「この子たちですか?私のスペルカードで作った擬似的な式神です。太郎と花と言って可愛いでしょう?」


 無駄に妖力を消耗しますが、普段は使う必要などないのでにとりと遊ぶ時に作りだしたりもしますね。


「どこがよ!?脅威でしかないわよ!」


 酷い言い草ですねぇ。ちょっとしたお使いも可能な有能な技なんですよ。


 清明さんにはまだまだだと言われてショックですが。


 レティさんはどうやら接近戦は苦手なようなので、私も弾幕戦に切り替え太郎、花ともどもにレティさんの最初の弾幕の全てを防ぎきった。


「それだけ動いてまだ余裕なのね」


「師が師ですから」


 お父様、玲央様、麻耶様、清明さんといった理不尽の方たちから子供時代から戦い方を教わってますからちょっとやそっとのことでは負けないと自負しています。


「次で最後よ怪符「テーブルターニング」」


「っと」


 最後と言った後に発動したスペルカードが私に襲いかかる。先ほども濃い弾幕でしたが、今度のは先ほどのよりも更に濃くなりましたね。


「太郎、花戻りなさい」


 再び駆けだそうとした二匹を手元に呼び寄せ消し去る。


「あら、便利なのに消しちゃうのね」


「このままですとじり貧になりそうなので」


 太郎と花は便利なのですが、さすがに数の暴力には敵いません。


 それに、レティさんは分かるかどうか知りませんが、この技の最大の特徴は、二匹が実体化を解いた時、余った妖力は私に返ってくることです。


 出している間に相手の攻撃をくらってしまったり、攻撃を相殺して消耗した妖力は戻りませんが、実体化に必要な妖力が残っている限り、それを解いた時は私に還元されます。


 戻ってきた妖力は使った妖力のおおよそ五割。全体の五割ほどがまだ私には残っている。これならば、次の一手が使えますね。


「狗符「犬坤一擲」」


 両手に妖力を溜める始める。溜めている間、攻撃はできないが、回避は可能だ。


 十秒ほど力をため続けた結果、必要な量が貯めきれる。


「一発目!」


「くっ」


 右手をまっすぐ前に向け、レティさんに向かって延ばすと、直線上全ての弾幕を消し去りながらレティさんへと伸びていくが、レティさんも素直に当たるわけなく、当然回避する。しかし、この技は私のとっておきでもある。


 回避に専念しているレティさんをしり目に、いっぽ踏み出す形で飛び上がった。


「ラスト!」


 左手に溜まった妖力を振りおろす形で延ばせば、回避で体勢の崩れたレティさんに直撃した。


 お父様だと足に溜めるとかいう訳分からないことをしでかしますが、まだまだ妖力に不安があり、制度もまだまだな私だと足にまで回すことはできないため、現状ではこれで精いっぱいだ。


 もうもうと立ち上る煙が晴れてくると、そこには多少ボロボロになったレティさんが手を上げて浮いていた。


「降参よ」


 それを聞き届けた私は、レティさんとともども地上に降りて行った。






「やられたわ」


「そうですか。ありがとうございます?」


 何と言えば分からないので、お礼を言ったのですが、疑問形になってしまいましたね。


「さてと、異変についてだったわね。正直に言えば、この異変については知らないわ。私だって迷惑しているのよ」


「はて?貴女の力をみるに冬……寒さに影響を与える力があると思ったのですが」


 戦いで体が温まったとは言え、それでも戦っている最中は寒かった。


「そうね、私の力は【寒気を操る程度の能力】といって、この季節だからこそ猛威をふるえるのよ。

 ただね、普段はこの季節ならもうとっくに春眠しているのに未だにこれでしょ?感覚的にはもう眠たくなってきているのに、季節のせいで元気が出ちゃってね、感覚がおかしくなりそうなのよ」


「なるほど」


 春眠とはこれいかに。春眠暁を覚えずとはいうが、恐らくは冬眠するくま達の春番でしょう。


「レティ、寝ちゃうの?」


「ごめんなさいね。私としても貴女と遊ぶのは嫌いじゃないけど、妖精と違って妖怪って何だかんだで制約は多いのよ」


「確かに」


 紫さんも冬眠しているし……いや、あれは藍さん曰く意味が分らないんでしたっけ?お父様も呆れていましたし。


「だから、来年また一緒に遊びましょ?」


「約束だからね!」


「ええ。約束よ」


 にっこりと笑ったレティさんは再び私のほうへと向き直りました。


「悪いわね、力になれなくて。そして、勝手なのだけど早くこの異変を解決して頂戴」


「わかりました。貴女の願いとは関係ありませんが、私も結構せっぱつまってますので」


「結構言うわね」


「何分、そういう人に育てられましたので」


 レティさんとチルノさんに頭を下げて再び空へと上がる。妖力の回復は道中でやればいいとして、次はどこに向かえばいいんでしょうね?

Q.椛の剣と楯は?


A.剣は懐剣を後ろ腰につけているけど、楯はなし


Q.なんで?


A.本文の説明にあるけど、真理達に育てられて、役にたつと思う?

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