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東方転犬録  作者: レティウス
観察する紅魔郷
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STAGE3

 博麗の巫女を探して屋敷をさまよっていると、大きな音が聞こえてきた。あっちは確か、リビングか何かあった場所じゃなかったか?


 なにはともあれ向かってみると、そこではレミリアと博麗の巫女が天井をふっとばして空で戦っていた。


 別に派手にやるなとは言わんが、レミリアは後のことを考えているのか?天井なんて吹っ飛ばしたら、後に困るのはお前だろ?


 フランあたりなら、確実にうちに来そうだが、無駄にプライドが高いレミリアはうちに来るってのはありえんな。


「その程度か、今代の巫女よ」


「っ、うっさいわね!」


 威厳たっぷりな感じで博麗の巫女を挑発するレミリア。まぁ、あいつって普段はそこそこに威厳を持っているんだが、メンタルが弱くて、ちょっといじると、すぐに涙目になるんだよなぁ。


 まぁ、たかだか500年程度しか生きていないあいつじゃしょうがないか。


「ちょこまかと!」


「流石にただで当たってやるほど、私もマゾではないのでな」


 そういって、博麗の巫女が投げる針や札などを何匹かの蝙蝠になって避けるレミリア。


 ううむ、前世の記憶なんてほとんど思い出そうとしなくなって久しいが、そういや吸血鬼ってああいう性質があるってのは物語の定番だった気がする。


 ただ、元に戻るときは散った蝙蝠たちが一か所に固まる必要があるから、あれで逃げれば無敵ってわけじゃないな。


 博麗の巫女もかなりの素質をもってはいるが、そこには気づいていない……経験不足が目立つなぁ。


 まぁ、ここ数年はかなり穏やかに時が流れていたから、あの年代であれば、荒事に慣れているって感じではないな。


 ただ、暴れまわるだけの妖怪を退治したところで、巫女の力が膨大なわけで、経験なんてたまらんからなぁ。


 所詮この世は量より質が基本だし。


 徒党を組む雑魚が何匹と異様とも、本物にはいくらいたって敵わないわけで。


 まぁ、いくら力が強いといっても、経験もそこそこ程度ならば量がいれば押し切れるが、鬼や幽香あたりまでいくともう、ねぇ?


「ふははははっ!どうした、どうした!幻想郷の最後の守護者とはその程度か!獄符「千本の針の山」」


「言ってくれるじゃない!霊符「夢想封印」」


 レミリアが放った、細い針のような弾幕に対して、博麗の巫女はこれに対抗しようと、七色の球体を放つ。


 ううむ、博麗の巫女のあの技はかなりの威力を持っているが、物量に攻め立てるレミリアの弾幕と相性悪くないか?


「ほぅ」


 相殺は難しいかと思ったんだが、博麗の巫女の放った技は見事にレミリアの弾幕を相殺した。


「なっ、なんだその威力は!」


「何って、あんたが無駄に拡散させている威力を私はあの数だけに収束しているだけだけど?」


 しれっと答える博麗の巫女。どうやらそうらことしい。ただ、一定の威力というラインではどうなのかって疑問もなくはないが、それじゃあ魔理沙のマスタースパークはどうなるんだって話だしな。


 何よりレミリアがたとえ直撃を受けたとしても、死にはせんだろ……滅茶苦茶痛いだろうけどな。


 博麗の巫女の戦いを見ていると、後ろから大きな音が聞こえてきた。


「あははは!すごいすごい!私の攻撃をここまで耐えるなんて!」


 興奮したフランの声が聞こえてくると同時に、建物が壊れ中から魔理沙とフランが飛び出してきた。


「ちょっ、冗談じゃないぜ!」


 魔理沙は巧みに箒を操り、フランの攻撃を凌いでいる。どうやら、あっちにはフランが向かったみたいだ。飛び出してきたのだが、図書館から考えると、待っているのが面倒になったなあいつ?


「どんどんいくよー!禁忌「フォーオブアカインド」」


「はぁっ!?」


 フランが新しく取り出したスペルカードが発動すると、フランが4人となって、魔理沙に襲いかかる。


「ちょっ、そんなのありかよ!?」


「ありに決まってるでしょ!それに、これを使っても勝てない人もいるんだよ!」


 まぁ、魔理沙の驚きも分からんでもない。ただ、分身というか分裂というか、とにかくとして魔法で4人となると、何故か一体一体の能力値は4分の1まで下がってしまうが。


 それに、あれは初見殺しや意外性を狙ったものだからなぁ。


 ちなみに、清明があれを見てその後あっさりと獲得していた。あいつ曰く、式神の術式に似ているとかなんとか。


 ちなみに玲央に使ったら、問答無用で4人とも潰されて癇癪起こしていたのは別の意味でいい思い出だな。


「む?フランめ、屋敷を壊すとは……後で、叱らねばならんな」


「あー、お姉さまったら、お屋敷壊すなんて野蛮ね」


 どっちもどっちだと言いたいな。だが、頼むからここから姉妹喧嘩に発展させてくれるなよ?


 観客として見ている分として、異変を解決するという活劇をみているんだから、そんなことをされたら白けちまう。


 その後も一進一退の攻防が続くが、なかなかにどちらも攻め切れていない感じだ。


 フランにとっちゃ相手をしてやったのが、俺らだけという経験の少なさがあだとなって、自力で勝っていても、魔理沙を押し切れない。


 逆にレミリアは圧倒的に経験では勝っているが、博麗の巫女の読みがいいのか、中々に攻めきれない。


 博麗の巫女は、経験で劣り、自力でもやや上回る相手というのは初めてなのか、攻撃が上手く決まらない感じで苛立っている。


 魔理沙のほうは、自力でも博麗の巫女に比べて1~2ランクは落ちるのだが、発想力があるというか、それとも清明に鍛えられたおかげとでも言うべきか、ある程度までフランを抑えつけられている、


 とにかくとして、互角の勝負を繰り広げているので、見ている分にはとても楽しい。


「お嬢様達あいてにすごいですねぇ」


「俺としちゃ、あの二人はまだまだだな」


 いつの間にかやってきていた美鈴と酒を飲みながらだべる。


「貴方と一緒にしたら可愛そうですよ」


「いやいや、そうじゃなくてな。博麗の巫女も魔理沙ももう少し真面目に経験を積んでいれば、決着はついてたんじゃないか?」


「どうですかね。その場合、お嬢様も妹様も本気になるだけで、結果はかわらないような……そもそも、経験なんて言ったら、博麗の巫女が積んでいたら、私って消滅していたんじゃないですかね?」


「どうだろうなぁ?」


 美鈴の言い分もわかるな。先代の霊音だったら、確実に滅しているだろうし、その前の代の巫女たちも変わらないだろう。


 今代の巫女は変わり者というのが、清明や紫の言だがな。


「貴方達は、何をやっているんですか……」


「あ、咲夜さん」


 屋根の上に陣取り、酒盛りをしている俺たちに呆れた声とともに現れたメイドにきょとんとする俺と美鈴。


「何って、花見ならぬ戦見だが?」


「だから、なんでそんなことをしているんですか」


「暇つぶし以外に何があるって言うんだ!」


「胸を張って、そんな大声で叫ぶことじゃないと思いますがねー」


「じゃあ、いらんな?」


「さーせんしたー!」


 酒を美鈴から没収しようとしたら、潔く土下座したのでやめてやる。


「美鈴、貴女はお嬢様が戦っているのに、物見遊山ですか?」


「え?だって、今回の異変ってお嬢様から好きにして頂戴って言われたから、かなり適当でいいかと思ったんですが」


「そのあとに、私からお嬢様が危険にならないようにと注意したでしょう」


「あっはっは!寝てて、聞き流しました!」


 おお、美鈴も潔いな。笑って、流す内容じゃないと思うが。


「あだぁっーー!?」


 そんな風に思っていたら、何故か頭にナイフが刺さっていた。ナイフの形状を見るまでもなく、この場でナイフなんていう獲物を使うのはメイドだけだから、やったのは彼女だろう。


「ああ、痛い。咲夜さ~ん、私が幾ら妖怪だからって頭にナイフが刺されば死にますよ」


「大丈夫です、手加減してますから」


「いやいやいや!どうやって!?」


 まぁ、確かに頭に攻撃うんぬんで手加減もへったくれもないように感じるが、実際には死んでない美鈴を見ると、あながち間違ってもないがな。


「これで終わりだぜ!恋符「マスタースパーク」」


「とっとと、落ちなさい!霊符「夢想封印」」


 そうこうしているうちに、博麗の巫女と魔理沙が相手のわずかな隙をついて、大技を発動し、それが見事に決まった。


「まぁ、大方の予想通りあいつらが勝ったが、うむ、楽しめた」


「普通、戦いを暇つぶしで見るなんて危ない~って言いたいのですが、貴方達なら問題もないですからねぇ」


「そういうこった」


 そういって、立ち上がる。その後のことは意味もないし、帰ってから椛とかに教えてやれば、これまたいい酒の肴になるだろうしな。


「待ちなさい!」


「なんか?」


「流石に、我が館に無断で侵入した者を黙って帰すことは」


「やめときな、嬢ちゃん。疲労しきったその体じゃ万に一つも勝ち目はないよ」


 幾らルールで縛られているとは言っても、ただの人間相手に負ける道理は一切ない。


「さ、咲夜さん無謀です!」


「は、離しなさい中国!こんな、無礼な者は!」


「中国って言わないでください!し、真理さん!とっとと、帰ってください!ここは、私が押さえておきますから!」


「頼むわ~」


 手をふらふらと振って、その場を後にしたのであった。

真理は前世の記憶を忘れてしまってはいますが、能力の応用でやろうと思えば、思い出すことも可能です……つまらないからやりませんが。

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