STAGE2
撃墜されたルーミアと別れ、再び博麗の巫女が飛んでいった方向を目指していくと、紅魔館が見えてきた。
博麗の巫女たちはと思ったんだが、既に中に入ってしまっているようで、門の前でボロボロになった服で、いつものように椅子に座っている美鈴がいたので、降りることとした。
「なんだ、やられたのか?しかも、わりとあっさりと」
「あ、あはは……恥ずかしながら弾幕っていうのが、どうにも苦手でした」
右手を後頭部に回し、苦笑い気味に答える美鈴。
「やはり、勝負は拳で行ったほうがいいですよ」
「ったく、つくづく脳筋な奴め」
「でも、真理さんや玲央さんなんかはそうじゃないですか」
俺の呆れた顔に美鈴は苦笑い気味に反論してくる。
「どいつもこいつも勘違いしているのが多いが、俺は元は弾幕型だよ」
「うぇぇぇっ!?」
うぇって、女が変な声をあげて驚くんじゃない。
「近接は、弾幕潜り抜けてくるようなタフな連中を相手取るために鍛えたにすぎん」
「じゃ、じゃあ、普段の戦いで近接をしているのは?」
「昔、玲央に付き合っていて癖付いただけでなぁ。」
「それで、あの強さですか……」
「万を超える年月の集大成だ。精進しな武芸者ちゃん」
何やら落ち込んでいる美鈴に一応のフォローはしておく。
積み重ねが大事とはよく言ったもので、流石に天才が相手だとしても、早々に遅れを取るつもりは一切ない。
まぁ、玲央なんかを本気で相手取るとなると無理なのだがなぁ。
「うぅ、精進します……」
かなりがっくりと肩を落としている美鈴の肩を叩いてやった後、紅魔館へと入っていく。
「ん?空間が捻じれている?」
入った瞬間に、能力が何かしらを感知する。よくよく観察してみれば、紅魔館の内部が何かしらによって空間が変な感じになっていた。
ふぅむ……気配や音の反響もそこらかしらから聞こえてくるから誰かしらがいじったのだろう。
「フランは……あいつは、壊すことしかできんから、レミリアか?そういや、あいつの力って知らんな」
別段、誰がどのような能力を持っていようが関係ないが、俺と似たような力を持っているやつは初めて見るな。
「空間というよりも、別の何かで応用している感じがするな」
改めて、この異空間を観察してみると、似たような力のようだが、ところどころが甘い構成になっている。
空間系能力ならば、確実にこんな綻びが出るようなことはないから、能力の応用をしているのかもしれん。
「さて、音の反響からして……図書館と廊下か。博麗の巫女と魔理沙は別々の行動をとったらしいな」
さて、どちらに行くかな。この前知り合った、魔理沙の戦いも見てみたい気がするのだが、図書館ということは開いてはパチュリーということになる。
まだまだ子供の魔理沙では分が悪いし、なんとなく結果が見えそうだ。ならば、まだまだ知らん博麗の巫女のほうに行くか。
「こっちかね」
博麗の巫女がいそうな方向へと飛びあがり向かうと、そこにメイド服をきた妖精がまるで遊ぼうと飛んでくるので妖力弾でピチュらせてから、目的地へと向かった。
「なんじゃ、ありゃ」
博麗の巫女の姿を見つけたのはいいのだが、戦っている相手が何をしているのかが分らん。
戦っている相手は、この前うちに来たレミリアが泣かされたとき、泣きついていたあのメイドだ。
あのメイド、名前は何と言ったかなぁ……思い出せん、後で聞いておくか。
とにかく、あのメイド、所々でワープか何かしているのか、別の場所に出現する。
ただ、ワープにしては気配が消えた感じがしないんだが、いったい何が起こっているんだ?
「幻世「ザ・ワールド」」
いろいろと観察し、考察していると、痺れを切らしたのかメイドがスペルカードを発動した。
うわっ、なんか突如としてナイフが沢山現れた。一体どういう原理だ?
博麗の巫女も、突如現れたナイフを針で迎撃したり、結界を張ったり、よけたりとなんとか凌いでいる。
さっきから、メイドが消えるたびに俺の能力が反応しているので、おそらく何かしらの能力なのだが……
う~ん……なんだ、空間ではないな、これは俺の能力だし。空間に密接に関係しているのは、次元?いや、これを操れたらもう龍神をも超えないか?けど、紫の能力って次元に近いよなぁ……って、考えがそれたな。残りは……時間か?いや、でもあのメイドは人間だろ?だとしたら、人には過ぎた力のような気がするが……
そう思っていたると、突如世界が灰色に変わる。そこでは、何もかもが止まっていた。
ただ、違いがあるとすれば、あのメイドのみが動いていただけだが。
「なっ、私の世界に侵入者が!?」
ぺたぺたと周りを観察していたら、メイドに見つかってしまった。いやぁ、珍しくて隠れるの忘れていた。
「お前の世界って、この時が止まった場所のことか?」
俺の質問に驚きからなんとか回復したメイドが頷く。
「な、何故貴女がここに?……もしかして、私と同じ能力!?」
かなり戸惑っているのか、聞いておきながら勝手に自己解決しようとしてやがる。
「とりあえず、一個ずつ答えるとすると、一つ目はお前らが起こす異変がどんなふうに終わるのかを見届けるためだな」
「物好きですね……」
「美鈴とかフランとかレミリアから聞いてないか?」
「妹さまは、楽しい方たちとしか……そういえば、ちゅうg……ではなく、美鈴が常識に囚われては痛い目に見るとか……」
中国ってお前まで言うのかよ。まぁ、確かに俺も昔言ったが。
「二つ目はだな、確かに能力ではあるが、お前とは違ったものだよ。能力の一部というか、応用というかそんなもんだ」
時空間とはよく言ったものだ。ぶっちゃけ、能力の応用なんて、揚げ足とか強引でも、筋が通っていれば使えるからなぁ。
「最後に追加させてもらうならば、おりゃ男だ」
「何を冗談を」
「後で、レミリア達に聞いてごらん。流石に勝負の最中に証明したり、説き伏せるのもあれだしな」
「勝負……あぁっ!」
「忘れていたのかよ……」
余程、ショックだったのか勝負中ということも忘れていたらしい。まぁ、勝手に乱入した俺が言えた義理ではないが、緊張感がなさすぎるぞ。
「そして、時は……」
「やめい!」
危ないセリフを吐きそうになったので、慌てて突っ込みを入れて離れて行った。
「ええい!捉えられないならまとめて吹き飛ばす!夢符「封魔陣」」
その後も、メイドがいいようにあしらっていたのだが、博麗の巫女が使った一枚のスペルカードによって、状況は引っ繰り返され、全てのカードを攻略されたメイドは負けとなってしまった。
「お疲れさん」
「貴女は……」
「だから、男だつってるだろうが。まぁいいや。ん?図書館のほうはまだ終わってないのか?」
ふと、図書館のほうから音が未だに聞こえてくるので、博麗の巫女を追うよりも、まだ膠着状態であろう場所へと向かった。
「なんだ、こりゃ」
そこには、なんか癇癪おこしまくっているパチュリーが魔理沙に向かって涙目で本を投げまくっている。
投げられている魔理沙も何やらばつが悪い顔をしている。
「あ、真理さん」
図書館の入り口で唖然としていた俺に気がついた小悪魔が声をかけてきた。
「どういう状況なん?」
「えっとですね、あの魔法使い見習いさん……ええっと、魔理沙さんでしたか?がやってきて、ここの蔵書に目を輝かせていたんですね。それで、勝手に漁りだしたので、注意したらなにやら勝負を挑まれまして……まぁ、私程度じゃ流石に見習いといっても、きつかったんですよ」
なかなかに毒舌だな。まぁ、魔理沙がまだまだなのは事実だろうが。
「それで、『ここの本を借りていくZE☆』とか言い出したので、流石に私の一存では無理なので、パチュリー様の元へと案内をしたんですよ」
まぁ、確かにここの主はパチュリーであって、小悪魔じゃないから、勝手に許可ができないわな。
「それで、まぁ、パチュリー様もこの異変に噛んでいるので、気持ちが高揚していたのか、勝ったらいいわよとおっしゃられて、弾幕戦が始まったんですね」
「一瞬で負けたのか?」
「いいえ。終始パチュリー様が圧倒していたどころか、あの魔理沙さんの攻撃は全てキャンセルまたは障壁で防御が可能だったのか、一歩もパチュリー様は動いてませんでしたね」
まぁ、高々十いくつの少女あいてに、パチュリーが負けるなんていうのは想像もつかんな。しかも、畑違いの戦いではなく、同じ畑での勝負だからな。
「ただ、最後の最後に隠し玉を持っていたのか、魔理沙さんの放った極太の魔法が有頂天の極みにいたパチュリー様もろとも、ここ最近研究していた物を吹き飛ばしてしまいまして……」
「あぁ、つまりは……」
「はい。今までの研究がパーになってしまいまして……戦いに負けて、かつ研究素材までお釈迦になったと気付いたパチュリー様はああなって……」
それで、八つ当たりか。下らん。とっとと、博麗の巫女を追いかけよう。
「いきさつは分かった。勝手にやってろ」
「えっと、手伝ってくれませんか?」
「知らん。興味ない。魔法のことは清明に頼れ」
「そんな~」
涙目の小悪魔を放置して、俺はとっとと博麗の巫女を追いかけた。
小悪魔かわいいですよね。二次創作での「こあー!?」みたいな、叫び声がかわいくて好きです。




