スペルカード
「それで、どうなんだい?新しいルールの定着具合は」
「むしろ、それは俺の台詞だな。こっち側の情報なんててんで入ってこないし」
「そうだね。一応、話だけ聞くと、人間たちにはわりと好評みたいだよ?他にも、人里の白沢殿や蓬莱人殿なんかもわりと理解を示しているみたい」
「へぇ」
魔法の森にあるひっそりと経っている古物店(?)に立ち寄り、博麗の巫女が提唱したルールについて情報を集めにやってきた。
香霖堂という絶対に人に売る気のない場所に立っている店主こと森近霖之助とはそこそこ長い付き合いだな。
カウンターに座り、今もなにやらよく分からんものを鑑定している。
「慧音や妹紅なんかは乗り気か。だったら、わりと定着はするのかねぇ」
「どうだろうね。やっぱり荒事には変わりないから、人間は難しいかもね」
「そりゃそうだ」
適当に置かれている商品を見て回ると、なにやら懐かしいものが並んでいる。いやぁ、これって確か種子島じゃね?なんで、いまさらこんなものが?
「それで、妖怪の山はどうなんだい?」
種子島が動くかどうかを見ていたら、再び霖之助が尋ねてきた。
「若い連中や、玲央、麻耶なんかは乗り気なんだが、天狗どもはさっぱりだな。なぜ、わざわざ人間に従う必要があるんだーってな」
「相変わらず天狗はプライドは高いのかい?」
「天辺知らずでな」
うちの椛や文なんかは変わり者として外すとしても、基本的に天狗どもはやる気なしだなぁ。
麻耶が乗り気なのも、たしなめる次第だし。まぁ、一部幹部連中は古い付き合いだからか好きにさせていたりするが。
「地底は……不可侵だったっけ?」
「つっても、玲央もちょいちょい帰ってやっているから、もうあるかどうかわからんな、それ」
「まぁ、鬼神を止められるのなんて、君や陰陽師、天魔ぐらいだろうさ」
「どうだろうなぁ……あぁ、策略ではめようにもアイツには通じんか」
「つくづく理不尽だね君たちって」
「それが、店を建ててもらった奴の言い分か?」
半妖であるこいつが尋ねてきたときが懐かしい。
「やれやれ、こう昔を知られていると、余計なやけどを負いそうだよ」
「それが、ガキの宿命だな」
椛にしろ文にしろ、にとりにしろ俺からすればまだまだガキだし、小さいころも知っている分、からかいのネタになる。
「話は戻すとして、君や鬼神とかが乗り気というのに、妖怪の山の連中は受け入れないんだね」
「あぁ、俺はムリムリ。麻耶のお気に入りってだけで睨まれるし」
閉鎖社会だからなぁ、天狗って。鬼はわりと解放的だから対照的で面白い。ただ、鬼の場合は宴会に強制参加だから耐えられるのが絶対条件だが。
「そうかい。ああ、そう言えば、これがスペルカードルールに必要なカードの一つだよ」
「スペルカードルール?」
「博麗の巫女が決めたルールの正式名称さ」
霖之助から白紙のカードを受け取り、表や裏などを見ながら解析すると、なにやら呪符とかに使われている術式が織り込まれている。ただ、中身はカラッポだけど。
「その表情から察するに、それがどういうものか、というのは分かったみたいだね」
「ああ、カラッポの札だな」
「それに、貴方が想像した弾幕を思い浮かべるとカードが記憶するって寸法さ」
「なるほどねぇ」
「あと、あくまでそれはサンプルだから、自分が使いやすいカードでも札でも好きにして良いみたいだよ」
なるほどね。それなら、後で清明に渡せば簡単に作ってくれそうだ。あいつ、札作りも能力の一環で完璧に作れるし、俺が作るより完成度は高いだろ……簡単なやつだから俺でも簡単に作れるが、メンドイ。
「そうそう、霖之助に聞きたいことがあったんだ」
「何かな?」
「人間、はては中級妖怪どもってどの程度戦えるんだ?」
「は?」
俺の質問に間抜け面を晒す霖之助。こいつはいつも飄々としているのだが、こういった予想外のことに直面するとこうなるのは面白い。もうちょっと年季がたてば常にそうできるだろうが。
「いやだから」
「いや、言いたいことは分かる。分かるが、何故にその質問がでるんだ?」
「口調が崩れているぞ。いやな、俺達って全員手加減苦手でさぁ、一定以上威力を持たせるなといわれても、どの程度?って話になるんだよね」
「はぁ……」
説明をしてやったら、なにやら溜め息を吐かれた。失礼なやつめ。
「そういえば、君達は総じてそうだったね……」
何か、哀愁が漂っているな。俺より若いのにもう老衰か?まぁ、半妖だし、寿命は妖怪より短いからそうかもしれんが。
「まぁ、君達の実力で考えれば……」
『ちょっ、魔理沙引っ張らないでよ!』
『お前が言ったんだろ?買ったら、何でも好きなのを買ってやるって』
『言ったけど、直ぐって訳じゃないし、高いのは禁止よ!』
『分かってるって、私だって鬼じゃないんだ』
『あんたは遠慮って言葉を勉強してきなさい!』
『生憎と、私の辞書にそんな文字はないんだぜ!』
霖之助がなにやら言おうとしたとき、店の入り口からがやがやとした声が聞こえてきた。一つは知らん声だが、もう一つは知っている声だ。
「こーりん!頼んでいたものは出来たか!」
「もう!魔理沙!」
入ってきたのは、白と黒の服にトンガリ帽子を被った金髪の少女と肩に人形の乗せた金髪の少女だ。
「あら、真理じゃない」
「久しぶり」
ここ十数年あってなかったが、変わらないなこいつも。
「しゃんはーい!」
「上海も久しぶりだな」
アリスの肩にいる上海が手を出してきたので指を突き出しタッチしてやる。
「どうしたの?」
「いや、ちょっとな」
霖之助が用意したお茶をカウンターに寄りかかりながら啜り、アリスの質問を軽く流す。って、よくよく考えたら、こいつにも聞いたほうがいいかも。
「ほら、これだよ」
「よしよしよし!これで、私の魔法もパワーアップだぜ!」
んで、霖之助はというと、アリスと一緒にやってきた少女になにやら八角形のものを渡していた。詳しく見てないから分からんが、何かしらの媒体か?
「って、ん?よく見たら、知らないやつがいるぜ」
「魔理沙、失礼よ」
「先客はこっちだったんだがな」
「あれ?君ってお客だったの?」
興奮も収まり、漸く少女がこちらに気づき近づいてくる。
「アリスと喋っているってことは知り合いか?」
「まぁな。こいつがここに住まうときから一応目にかけている」
「よく言うわね。目をかけてくれているのは清明さんじゃない」
「酒やってんだろ?」
「あれ、貴女のだったの!?」
「日本酒はな。洋酒は流石に金だけ出してやっているが」
いかんせん、神綺から娘をよろしくとお願いされて、金を大量に貰ったから、ないがしろには出来んな。
「おいおい、私をのけ者にて話を進めないで欲しいぜ」
「すまんすまん」
「ごめんなさいね」
トンガリ少女が空気になるのが気に入らなかったのか、やや拗ねたように攻めてくる。てか、特徴的な語尾だな。男勝りってやつか?
「自己紹介がまだだったな。俺は風由真理。ちょっと長生きしている犬妖怪さ」
「どこがちょっとよ」
「いや、全く」
「私は魔理沙、霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
アリスと霖之助の突っ込みがあるが、今更その程度じゃ俺は止まらんよ。
「普通とな?」
「ああ!アリスや清明見たく歳を偽ってないからな!」
あ、今の発言はよくないなぁ。みろ、隣のアリスに青筋がたっているじゃないか。
「んで、大して力もないあんたが、ここに何の用なんだ?アリスや霖之助の知り合いってことは悪い奴じゃないんだろうけど、女の一人歩きは危ないんだぜ」
「は?」
「は?」
「は?」
「え?」
魔理沙と名乗った少女の言葉につい固まってしまう。なんか、アリスや霖之助も固まっている。唯一状況が確認できてないのが、発言者の魔理沙だけだ。
「魔理沙、あのね」
「待て待て」
アリスが説明しようとしたのを、とめて魔理沙の前にでる。
「?? どうしたんだ?」
どうやら、魔理沙嬢ちゃんはこの状況が今一理解できていないようだ。
「嬢ちゃん」
「なんだぜ?」
「言っておくが、俺は男だ」
「またまた~」
俺が男と告げても信用しない魔理沙。まぁ、これまで言って納得した奴なんていないからな。
「本当よ」
「本当だよ」
「マジか!?」
とはいえ、周りの連中も肯定すれば、流石の魔理沙も信じないわけにはいかんだろうな。
「まぁ、兎に角としてだ、俺が弱いとな?」
「そうだろ?見たところ、力持ちって訳じゃないし、強い妖力もかんじないぜ」
「ふうむ……」
流石に今まで生きてきた中で、弱いといわれたのは初めてだな。生まれも育ちもかなり特殊だし、今まで生きてきたのをちょっと否定された?と考えていたら丁度いいことを思いついた。
「なあ、魔理沙嬢ちゃん」
「その、嬢ちゃんってのはやめてくれないか?なんだか、馬鹿にされてる感じがするぜ」
「考えておこう。そんでだ。嬢ちゃんは博麗の巫女が作ったルールはしっているかな?」
「霊夢のあれか?当然だぜ!霊夢に負けられないから、香霖にこのミニ八卦炉を注文したんだぜ!」
突き出された、小さな八卦炉を見ると、何かをブーストするような術式が組み込まれている。
「なら、丁度いい。そのルールにのっとって、いっちょ勝負をしようじゃないか。かったら、その八卦炉の代金は俺が払ってやるよ」
「ホントか!?アリスに半分出してもらうつもりだったから丁度いいぜ!」
俺の提案にあっさりと乗ってくる魔理沙。
「霖之助、さっきよこしたカードはまだあるか?」
「あるけど、本当にやるつもりかい?彼女は確かに才能はあるけど、お世辞にも強いとはいえないよ?」
「ちょうど、新ルールを試すためのカモが来たんだ、活用せんでどうする?」
「もしかして……真理怒っている?」
「全然」
霖之助からカードを数枚もらい、とっとと外に出て行ってしまった魔理沙を追う。魔理沙には悪いが、世の中には上には上がいるってことを教えてやるとするか。ついでに、どの程度までが大丈夫なのか、実験をさせてもらうことにしようとし外へと出て行った。




