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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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新ルール

「新しい、博麗の巫女、幻想郷に新ルールを提案ねぇ」


 文の新聞の一面にどどんと掲載されている記事を読んでいると、何でも従来からいる妖怪が新参ものに劣っており、今までのパワーバランスが崩れてしまったとかで、博麗の巫女に相談したとか。


 俺としては、博麗の巫女が入れ替わっていたほうが驚きなのだが。霊音が最後にきたのってどれくらいまえだっけ?


 時間が過ぎる感覚が完全に麻痺しているなぁ。俺にとっては100年の期間が大体2~3年の感覚になっちまっているし。いや、その感覚なら結構細かく覚えているだろと言われても、覚えてはいないけど。


 ただ、周りのやつ等は変わらないから時間が経っていく感覚が更に麻痺してしまうのも原因かも知れんな。


「真理さん、お邪魔します!」

「真理さん、邪魔させてもらうよ~」

「真理邪魔するぞ!」


 感傷に浸っていたら、玄関からどたどたといつもの面子が声をそろえてやってきた。


「どうした、お前等?揃いも揃って」


 こいつらが纏めて一緒にやってくるなんて、珍しいこともあったもんだ。


 いつもは、誰かが来て、また一人、もう一人って感じで揃ってやってくることなんて滅多に無かったはずだが。


 新聞を折りたたみ、ちゃぶ台の上に置き、湯呑みを取る。


「それ、それですよ!」


 玲央が新聞を指差して何かわめいている。


「何がだ」


「その、記事全部読みましたか?」


「いや、さっきまで寝ていたんでな」


 この面子の中じゃ俺が一番起きるのは遅い……まぁ、遅いといっても大体が7時前後くらいなのだが。


「じゃあ、新たな博麗の巫女が提唱したルールというものは」


「なんか、そうみたいだな。それより、霊音が世代後退していたことに驚いていたよ」


「ああ、あやつも優秀ではあったな。ただ、今度の巫女は資質で言えば歴代でもトップかもしれん」


「へぇ」


 清明にここまで言わせるとは、今度の巫女は凄いようだな。ただ、俺が言っているのは霊音わりと楽しい性格だったから好感を持っていただけなんだがな。


「それよりもです。細かいルールまで読みましたか真理さん?」


「うんにゃ。その前にお前等が来たからな」


 感傷浸らなければ読んでいたかもしれないが。


「ちょっと、読んでみてください。そこに、私達がやって来た理由があるんです」


「ふむ」


 玲央に施されて改めて新聞を広げて詳しく読んでいく。


【スペルカードルール】

・あらかじめ技の名前と命名しておいた名前の意味を体現した技をいくつか考えておき、それぞれの技名を契約書形式で記した契約書を任意の枚数所持しておくこと。

・対決の際には、決闘開始前に決闘内での使用回数を提示して、技を使う際には「カード宣言」をする。

・体力が尽きるかすべての技が相手に攻略された場合は負けとなる。

・たとえ余力が残っていても提示した全枚数を攻略されたら、負けを認めなくてはならない。


 後は、細々としたものがあるが、大まかに言えばこんなものか。ただ、これ以外にもちょっと見逃せない項目もあった。


・一定以上の威力を持たせないこと。


 である。


「なるほどな」


「分かってくれましたか?」


「痛いほどに」


 ちゃぶ台を囲み俺たちはしばし無言になる。そして……


『一定以上ってどの辺り?』


 他の連中を悪く言うつもりはないのだが、ここにいるのは全員が全員、ばかげた力を持つやつ等だ。


 背を軽く叩いたつもりで相手を吹っ飛ばすというようなギャグはないのだが、こと、戦闘に関してはその箍が外れてしまう。


 もっとも注意しなくちゃいけないのが、玲央と清明だ。


 玲央は元々が戦闘狂だ。そのため、戦闘になれば加減というものが効きにくい。年若くても力のあるレミリアやフラン、妹紅などなら問題はないのだが、他の妖怪や特に人間なんかでは話にならない。


 清明もまた、似たようなもので、元々の生業の影響なのか妖怪に対しては容赦がない。人間相手ならばそれ相応の対応が出来るらしいが、妖怪では無理なのだそうだ。俺達などは、清明の力を持ってしても死闘の末に出来るかも程度なので、やりあっても問題はないそうだ。


「そういや、ここ最近は玲央や幽香あたりとしかやりあってなかったなぁ」


「私もですね。たまに、萃香ちゃんや勇儀ちゃんが襲ってきますけど」


「ウチはそういうの全然やなぁ。ああ、でも、仕事サボっているときは幹部達がいっせいに襲い掛かってくるから相手したるくらいかな?」


「私など、前鬼後鬼任せで大体が終わるんだぞ?」


 腕を組み、頭を悩ませる俺達。


「皆さん、いらっしゃいませ。一体どうしたのですか?」


 それからかなりの時間を酒を呑みつつ、意見を言い合っていたのだが、結局良案など出てこず、更に頭を悩ましていたら、椛が帰ってきた。


「これだよ」


 同じく、ちゃぶ台につく椛に原因の新聞を渡す。


「ああ、これですか」


 記事に目を通した椛が頷く。


「これが一体?」


『手加減ってどのレベルが必要なの?』


「なるほど」


 俺達が悩んでいた理由が漸く分かったのか、椛も納得顔だ。


 別に俺たちは無意味に命を狩りたいわけでもない。邪魔するものや害意になるものは排除するが、それ以外は別にこれといって何かをするわけでもない。


 そして、なにより……


「これから、新しい風が吹きそうなときに何もできないなんてつまらない」


「つまり?」


「いい、暇つぶしになりそうだ」


 あまり変化の無い幻想郷に変化が訪れようとしていると俺の勘が言っている。なので、ここで手を拱くなんてもってのほかだ。


「やっぱり、真理さんは変わりませんね」


「こいつが変わったら変わったで、恐らくは疑うだろうが」


「せやねえ」


 周りのやつ等が煩いが、兎にも角にも楽しくなりそうだ。

先週は風邪引いてました。

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