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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
81/115

新聞

「ふむ……」


「どうしました、難しい顔をして?また、文さんは何か変なことでも書いてありましたか?」


 新聞を読んでいると、椛から声がかかる。思ったよりも顔に出ていたみたいだ。


「いや、あいつの新聞はあれはあれで面白いし、それに対しては別にどうでもいいんだが」


「文さんの新聞を理解してくれるのはお父様だけですよ……」


「娯楽が少ない幻想郷なら、ああいったのがあってもいいとは思うがな」


「文さんに直接言わないでくださいね?つけあがりますから」


 おおふ、相変わらず文に対しては口がきついな……ガキのころから知り合いだからしょうもないか。


「まぁ、文は置いておいてだ」


「すると、違う方なのですか?」


「ああ、ほれ」


 新聞を折りたたんで椛に渡すと椛がそれを開きタイトルを見る。


「花果子念報?はて、かなりの新聞が発行されても把握はしていたはずですが、この題は初めて見ますね」


「そうなのか?そうすると、新規なのかな。文が渋りながらもとりあえず一読してくれって珍しく頼んできたから読んだんだが」


「文さんがですか?本当に珍しいですね」


 あいつって、記者をやり始めてから性格が陽気になったけど、昔のあいつの存在を知っている俺としては未だになれない。


 それは兎も角として、そんなあいつが珍しく渋い顔をしていながらも人に頼み込むっていう珍事があり思わず受け取ってしまったんだよな。


「まぁ、読めば分かるんだが、かなり詳しく書いてあるし、よくまとめてあるんだが」


「確かに。読者に分かりやすい記事ですね。それに比べて文さんは……」


「あいつの愚痴なら後で嫌ってほど聞いてやるから、今はそれな」


「ああ、はい。そうですね。ただ、書いてある記事の内容が古いですね」


「そうなんだよ」


 椛の言うとおり、書いてある内容はとてもいい。新聞とはこういうものだろうという感じに。他の天狗たちの新聞なんて、ただ知った情報を書いてあるだけで何が言いたいのかさっぱりだ。


 それに比べれば文はマシなのだが、真実3割で後は誇張されているから、書かれている内容を知るには最初の数行だけで十分って感じだ。あいつのは新聞というよりも、週刊誌の特集というのがあっていそうだが。


「一体誰が……姫海棠はたて?知らないですね」


「天狗の中じゃある意味で顔が広い椛が知らないとはな」


 椛の場合、種族は白狼天狗なのだが、俺の娘ということもさることながら、麻耶のお気に入りということで、役職が変な風についてしまっている。


「はたてちゃんはな~、あまり表出ないから、知っとる子は少ないかもやな~」


「行き成り現れるな」


「いらっしゃいませ、天魔様」


 いつからいたのか、麻耶が俺の隣に座り、のんきに教えてくれる。てか、相変わらず気配隠すの上手いな。気づかんかった。


 ついでに言うなら、椛もなれたもので、麻耶用の湯飲みを取り出して茶を注ぐ。


「いやん。今は仕事中やないから普通に名前で呼んで~」


「次からはそうしますね」


 麻耶に対しても態度を崩さない椛。まぁ、麻耶の場合はつっつきすぎたり、何かをしたりすると調子に乗るから対処としては大正解だな。


「さて、あまり外に出ないって、病弱か何かか?」


「いやん。真理さんもいけずやー」


「妖怪で病弱の方っているのでしょうか……?」


 いるんじゃないか?人間の病弱な理由だってそれぞれだし。


「ううん、真理はんが無視したり椛ちゃんが無視するとなんや知らんが、ウチぞくぞくしてくるわ~」


 変態かよ。変態はいらん、玄関はあっちだとっとと帰れ。あと、変態は清明の式神で十分だ……いや、あいつらはいらんか。


「さてと、真面目なはなしすると、はたてちゃんはなー、簡単に言えばあまり対人なれしとらんのよー」


「つまりは引きこもりか」


 まさか、ここで引きこもりなどがいるとは……いや、輝夜は立場上そうなのだが、それでも似たようなものがいたな。


「引きこもりっちゅーほどじゃ……いや、引きこもりやな」


「そこまでか」


「ウチも何かしてあげたくて、ちょくちょく様子見に行ってるんやけど……」


「緊張してしまうんですね」


「そうや」


 まぁ、トップの人間が尋ねてきたら何かあるんじゃと身構えてしまうからなぁ……こいつの場合は本当に心配しての様子見だろうけど。


 麻耶もカリスマなんぞ無かったら天魔なぞやってなかっただろうに……そうしたら、俺とも玲央とも出会ってないか。


 それに、何だかんだ言いながらも嫌いになれないようなやつだし、こいつは常に天狗たちのことを考えているから幹部連中もつい許してしまっているんだろうなぁ。


「そんで、お前はこの子の新聞は?」


「もちろん呼んだよ。てか、ウチの子らの新聞は全部目を通してるよ」


「さよけ。そんで、何でこの子の新聞だけこんなに情報が遅いんだ?てか、引きこもりなのにどうやってこの情報を?」


「そこは私が説明しましょう!」


 情報が遅い理由を尋ねると、摩耶からではなく庭に折りながら叫ぶ文が答えた。


「くるのは構わんが、庭からじゃなく玄関から来い」


「そやよー。それに、女の子なんやからそこらへんは慎み持たんとあかんよ」


「あややや、天魔様までいらしゃったとは!あ、椛お茶私にもよろしく」


「構いませんが、玄関に回ってくださいね?さもないと、実力行使しますよ?」


「さらっと、恐ろしいこと言いますねーこの子は」


 まぁ、玲央や麻耶、清明に俺と回りに居続けたからなぁ。


「しかも、実力が洒落にならないレベルですしー。玄関回ってきまーす」


 そいうと、文は律儀に一度飛び立ち、そのまま玄関から回って、居間へとやってきた。


「どうぞ」


「どうもです。いやーこの家のお茶ってすごく美味しいんですよねー」


「そこらへんは、あとりに感謝だな」


 あいつ、いつの間にやら茶葉栽培とか始めていたし。しかも、野菜農園とかも俺が能力を使って天然(?)のビニールハウス化しているから、いつも実りがいいし……ここら辺は秋姉妹の影響もあるかね。


「今日、あとりさんは?」


「藍のところ」


「あの、九尾っ子の?でも、あとりちゃんが外出しとるって珍しいね」


「料理研究だそうだ」


 家の家事を担当しているという部分で共通しているのか、あとりと藍って性格は全然違うのに話があうみたいなんだよなぁ。


「そんで、そのはたてだったか?その子の記事が遅い理由は?」


「はいー。はたての能力が関係しているんですよ」


「ほう」


 能力が関係しているね。しっかし、記事に出来る内容に関係あるのか?」


「はたての能力【念写をする程度の能力】というものでして。その能力は簡単に言えば、外の情報が何かしらに写すことが出来るんですよ」


「なるほどな。それなら、あまり出歩かなくても新聞は作れるな」


「でも、写しだされるのは何故か古い情報ばかりでしてねー、それゆえに皆知ってるから感想は真理さんたちが感じたとおりですね」


「なるほどな。まぁ、纏め方は問題なから、これからも持ってきてもらって問題はない」


「あややや、まさかの理解者がここに!次の記事はこれだー!」


 一瞬で立ち上がり、出て行こうとする文だったが、その首筋に刃が当てられる。


「お父様のことは必要以上に書かないと約束しましたよね?」


「私より速いだと!?って、いやいやいや、そうじゃなく!ひ、必要なことでしょこれは!?ほ、ほら、あのはたての理解者が」


「約束しましたよね?」


「………はい」


「椛ちゃんも逞しくなったなー」


「まあな」


 将来的な心配をするならば、玲央や麻耶、清明と似たような感じになりそうで怖い……実力や曲者的な意味で。


 結局、文は椛に言い負かされてすごすごと帰っていったのであった。

はたてはまだ出てきませんw


そして、まだ携帯がないので映し出されるのは紙というw

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