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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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月と兎

 今夜は月が綺麗だ。この幻想郷の空の管理がどうなってるかは知らんが、こんな日は月見酒と洒落込むのもいいと思い、目的地まで歩きついた。


「ういーす」


 玄関を開けて挨拶すると、誰かがやって来た。


「すいません。今日の診察は……」


 中から現れたのは、うさ耳ブレザーの少女だった。いや、勇儀が体操服、村紗がセーラー服の時点でいなくはないだろうとは思っていたが、まさかここまでコスプレっぽい感じでお目にかかるとは思わんかった。


「ああ、別にそんなもんじゃない。自慢じゃないが、ここ数千年は病気の一つもしたことはないよ」


「自慢ですよね!?しかも、数年じゃなくて数千!?」


「優曇華うるさいわよ。って、あら?」


「よっ」


 玄関先で騒いでいたら、喧騒を聞きつけたのか、永琳が更にやってきて、俺の顔を見て不思議そうに固まり、俺は手を上げて挨拶する。


「どうしたの、こんな夜に」


「月が綺麗だったんでね、月見酒をと思ったらここが浮かんだんでやってきた」


 月という単語を口にしたら、優曇華と呼ばれたうさ耳がビクリと震える。はて、月に何か嫌な思い出でもあるのかね?


「まぁ、いいわ。玄関でなんだし入って頂戴」


「師匠!」


「大丈夫よ、彼は関係ないわ」


 永琳に案内されるまま居間に通される。その間にうさ耳少女がなにやら叫んでいたけど、どうしたんだろうねぇ?


「真理が来てるって?」


「姫の威厳も何もあったもんじゃねぇな」


 居間に通されて程なく、輝夜がのっそりとした感じでやってきた。やってきたのはいいが、髪は乱れ、着物もぐちゃぐちゃだ。


「どうせ、見る奴なんて身内しかいないんだから、構わないでしょ」


「俺は?」


「今更よ」


 確かに。


「そんで、どしたの?」


「ん?月見酒と思ってな、酒持参でやってきた」


「はぁ、昔から酒酒と煩かったけど、まさかそんな理由でここまで来るなんてあんたぐらいよ」


「そんなに褒めるな。照れる」


「褒めてない、褒めてない」


 いやいやと手を横に振る輝夜に肩を落とす。


「なんだか、変わった方ですね」


「自覚している」


「聞こえてた!?」


 いい反応する子だなぁ。最近は椛もすれちゃってこの程度のことじゃスルーされちまうし。……ああ、美鈴あたりなら、きっと似たような反応してくれるか。


「そういや、イナバは初めてだったわね」


「そうそう。どしたんだこの嬢ちゃんは?しかも、イナバっててゐの親戚かなんかか?」


「あんな、罠を仕掛けるのを生きがいにしているのと一緒にしないでください!」


 酷い言い草だな。間違っては無いからフォローするつもりは一切無いけど。


「ほら、挨拶しなさい」


「姫様がそういうのでしたら……鈴仙・優曇華院・イナバです」


「ご丁寧にどうも。俺は風由真理。ちょっと長生きしている、犬の妖怪さ」


「ちょっとどころじゃないでしょ、あんたは」


 輝夜のツッコミをスルーしながら、酒を取り出すと、そこにタイミングよく戻ってきた永琳がつまみを置いてくれる。


「悪いね」


「そこまで手間じゃないわよ。それに、手間だというなら、姫様のほうが手間がかかるわ」


「ねえ、永琳。前から聞きたいと思ったのだけど、貴女って私のこと馬鹿にしてない」


「とんでもない。馬鹿な子ほど可愛いと言うじゃないですか」


「やっぱり、馬鹿にしてるじゃない!」


「あら、私としたことが」


 まぁ、馬鹿と口に出して言ってしまったからなぁ。相変わらず、ここの主従の力関係はよく分からん。


「そんで、そこで固まっている嬢ちゃん……鈴仙だったか?はどうしたんだ?」


「いえ、その……圧倒されまして」


 一体何に圧倒されたと?力に関しちゃ1尾だからそこまで強い力も出てないし、雰囲気もただのしがない犬妖怪だろうに。


「その、姫様や師匠がそんなに楽しそうにしているのは初めてで……」


「そうなのか?」


 首をかしげながら永琳に尋ねるも永琳も分かってないのか首を傾げていた。


「それに、姫様にしても、あの蓬莱人以外でこうも簡単に部屋から出てくるなんて」


「まぁ、あれよ。あいつとのは暇つぶしで、真理とは……何だろ?」


「酒飲み友達だろ」


 今度は逆に聞かれたのでキチンとした答えを返してやる。


「何だかんだで、1000年近く前からの知り合いだしなぁ」


「そうよねぇ。初めて会ったとき、こいつなんていったか分かる?『興味があるからきた』よ?私は見世物かっての」


「それに近い状態だったじゃないか」


 いやぁ、懐かしい。あの頃は確か、妹紅の親父について一緒に行っていたんだっけなぁ。


 見目麗しい少女と聞いて、その通りだと思ったら中身はこんなだったけど。それに、妹紅もあの頃に比べたらかなり擦れちまってまぁ。


「因みに、言っておくが、俺は男だからな」


「えぇぇぇっ!?」


 おお、いい反応を返してくれる。ネタにはしたくないが、酒を飲んでいるせいもあって、聊か気分が大らかだ。酔うことはないけど。


「しっかし、月が綺麗なんてむかつくわ」


「昔っから言ってるなその台詞」


「いいことなんて、なかったからね」


「ひ、姫様!」


「ああ、真理はある程度事情は知ってるわよ?それに、一度やりあったこともあるし」


「やりあったっていえるのかしらね。あれは、ただの蹂躙にも見えたけど」


 両手でお猪口を持って溜め息をついた永琳が、輝夜の台詞に疑問をもつが、俺に取っちゃそこらへんはどうでも。


「え、えぇ?」


「信じられないでしょ?でも、事実よ。あの鬼神から真っ向から対峙できるなら納得よ」


「マジで?」


「意外か?」


 輝夜が真意を確かめてきたので逆に尋ねてみたのだが、しばらく唸っていたがどうやら納得したようだ。


「まぁ、辛気臭い話なんて酒が不味くなる。そんなことは忘れて飲もうか」


「今度こそあんたを潰してやるわ」


「はっはっは!ぬるいわ小娘」


「うっわー、姫様相手に小娘って」


「諦めなさい。真理は基本的に格や身分でどうこうするような奴じゃないしね。ほら、優曇華もたまには羽目を外すことを覚えなさい」


「うわ、師匠!零れる、零れちゃう!」


「なら、とっとと飲みなさいな」


 楽しい月見酒がいつのまにか、ただの宴会になってはいたが、やはり、月の綺麗な日の酒はまた違った魅力があるものだと思った。

来週はもしかしたら、MH4やっていて、更新できないかもしれません

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