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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
75/115

巫女

「こんにちわー」


 これといってやることがなく、縁側で茶を啜っていたら玄関から元気な声が響いてきた。


「あれ、いないのかな?こんにちわー」


 反応がないというのが、留守と思ったのか疑問を口にして再び声をかけてくる。


 そのうち、あとりが出て行くことだろうから、俺は居間で待つとするか。


「真理、お客」


「誰だった?知らない声だったけど」


「巫女」


「巫女?」


「そう、腋巫女」


 あとりが、居間へとやってきたので誰かを訪ねてみたら、そんなことを言う。てか、腋巫女?


「まぁ、いいや。巫女ってことは博麗神社の奴だろ。連れてきてもらっていいか?」


「分かった」


 しかし、巫女なんてうちに何の用だ?これといって、人間を困らせるようなことをした記憶は………ないよな?


「こんにちわー」


「こんにちわ」


 元気に挨拶してくる博麗の巫女さん。確かに腋巫女だ。これでもかと腋を見せびらかせている。


 そういや、ここ数代はあったことなかったけど、何代か前にあった奴も腋巫女だったなぁ。


「何のようでうちに?」


「いえ、この度、博麗の巫女を襲名したのでその挨拶に」


「は?」


 何故に巫女がうちに挨拶に来るんだ?もしかしてあれか?暴れるなと釘を刺しにきたのか?


 俺が分からないという顔をしたのを気づいたのか、博麗の巫女は微笑みながら答えを教えてくれた。


「八雲紫が貴女に恩を売っておけば、その内いいことあるわよ、と」


「下心が酷いな、おい」


「まぁ、理由はそれだけじゃなくて、あの八雲紫にそう言わしめるほどの人物がきになりまして」


 なるほどなぁ、後で紫をお仕置きするとして、今はこの巫女さんの相手をしてやろうか。


「つってもなぁ、俺よりも清明に挨拶に行けば?」


「人里の慧音さんからここにいる確立が高いと窺ったのですが」


「ああ、納得」


 何故か知らんが、俺の家ってあいつらがよく来るから、あながち間違いじゃないな。


「まぁ、俺は基本的に喧嘩売られない限り人の敵にも妖怪の敵にもならんよ」


 自分から喧嘩を売るような真似をするほど若くはないつもりだ。まぁ、気が乗ったときなんかはその限りじゃないけど。


「はぁ」


 要領を得ない返事をする腋巫女。まぁ、紫に言われてここに来たのに、当の本人がこれじゃ、しょうがないかもしれないけど。


「まぁ、茶でも飲んでゆっくりしていきな。敵意がないやつを邪険にはせんよ」


 まぁ、裏がある奴なんかはそのままお帰りくださいって感じだが、この子からはそういう気配もせんしたまにはいいだろ。


「そういや、博麗の巫女を襲名したっていうけど、あれって世襲制なのか?」


「そうですねー。基本的に、外から素質が高い子がここに連れられて、それでなのるって感じです」


「ただの誘拐じゃね?」


「と、言われましても……正直な話、私自身は外の記憶はそれほどないんですよ」


「は?」


 本日2度目の呆けた声を出してしまった。


「恐らくですけど、人と違う力というのはいい意味でも悪い意味でも、違うということではないでしょうか?」


「ああ、なるほどね」


 外の世界が今、何年なのかはわからないが、それでも妖怪が減り、一般の人が増えればそうなるのが必然か。


「だから、私自身は連れてこられたっていう気はないんです。むしろ、こっちのほうがしっくりきますし」


「ふぅん」


 茶を飲みつつ、話を聞くが、腋巫女曰く、肉親が継ぐということはないようで、縁もゆかりもないような奴が継いでいるそうだ。


「ああ、けど一つだけ共通点があるんです」


「それは?」


「私達の共通の部分として【霊気を操る程度の能力】というのが、使えるのが前提のようですね。博麗の秘宝はこの能力がないと使えないようです」


 ごそごそと裾に手を突っ込んで取り出したのは陰陽印が記された玉であった。


「すげぇ、力秘めてんな」


「だから、秘宝ですよ」


 なるほど。しっかし、どういったものなんだ?さらっと見た目だけじゃ能力はわからんし、術式的にも解析しきれん。


「おーい、真理きたぞ。美味い酒が人里に入荷したから土産にもってきてやったぞ」


「でかした!」


 入り口から清明が声をかけて入ってくる。もう、この家に遠慮して入ってくるようなことはないが、三人とも基本的に酒を持参して持ってくるので追い返すのは忍びない。


「む?博麗の巫女か」


「初めまして、この度、博麗を襲名した博麗霊音といいます」


「そういや、名前を聞いてなかったな」


「そういえば、そうですね」


「改めて、犬妖怪の風由真理だ。さっきも言ったが、敵対せん限りは、友好的だと思っていいよ。ただ、利用しようとかは思わんことだ」


 前にそんな馬鹿なことをしようとした妖怪がいたが、そいつは俺に上下に分かれさせられた後、玲央に上半身を、摩耶に下半身を消滅させられ、しまいには清明に魂まで消されたという結果に終わった。


「しませんよー。流石に、人里の最後の砦である私が妖怪を利用したなんてことになったら、人はおろか、八雲紫の粛清の対象になっちゃうじゃないですか」


「まぁ、当然であるな」


「それが分かっているならいいさ。それに、お前さんじゃどうしようもないのは、清明が出張るだろうし」


「うむ」


 清明が強く頷く。最後の砦といったが、本当の最後は清明だ。いかに、天才ばかりの博麗でも清明には敵わないしな。


「では、私は帰りますねー」


「ん?飲んでいかないのか?」


「いえいえ、私は何も持ってきてないので、ご相伴に預かるのは礼儀知らずですよ」


「かまわんよ。てか、挨拶に来たのがお前さんが初めてだから、気分がいい。俺の酒でもくれてやる」


「うむ。私も何代も面倒を見ているが、ここまで礼儀がなった巫女は初めてだ」


 あ、清明も俺を紹介していたのか。それで、来たのがこの霊音か……まぁ、今まであったことやるやつ等って対外、やる気なかったしなぁ。


「つーわけで、酒盛りだ。肴作ってくる」


「私も行こう」


「あ、じゃあ手伝います」


 こうして、我が家では珍しい、妖怪、陰陽師、巫女の宴会が開かれたのであった。

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