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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
73/115

迷い込んだ色

今回は、空椿さんの東方藍蓮花とのコラボとなります。

「えっと、あれはどこやったっけな?」


 自分の家にて真理がなにやら探し物をしていた。ただし、部屋の中のものをひっくり返すという訳ではなく、右手の肩から先が消えている珍事である。


「おっかしいなぁ、確かこの中に入れたはずなのだが?」


 困り顔で只管に右腕を奥に突っ込む真理。能力の応用で作った空間の擬似的倉庫になにやら入用だったようだが、見つからない様子である。


「ん?なんか、生暖かい?」


 なにやら右手にかかる感覚を不思議に思った真理は手に触れるそれを引っ張る。


「おっ」


「ん」


 引っ張り出されたのは藍色の少女である。


「あれ?」


 首を傾げる真理に、引っ張り出された少女も不思議そうな顔をする。


「やっちまったか?」


「みたい」


 真理が尋ねると、少女は頷く。


「帰るか?」


「旅する」


「いってら~」


 引っ張りこんでしまった少女……藍色という妖怪に送り返すかと聞く真理だが、藍色は旅をすると言い出したので、真理はそのまま送り出す。


「お父様?この方は?」


「ん?」


「ん?」


「いえ、二人揃って不思議そうな顔をされても困るのですが」


 そこにやってきたのは盆にお茶を乗せた娘の椛であった。


「ああ、お前の腰についている懐剣くれたやつだ。名前は見たまんまだ」


「えっと、青色さん?」


「流石俺の娘だな」


「藍色」


 ぽつりぽつりと単語しか話さない藍色に対して、椛がボケる。それを褒める真理と自分の名前を告げる藍色。ぶっちゃけ軽くカオスっている。


「えっと、いついらっしゃったのですか?」


「俺がミスって連れてきたようだ。旅っつーかここら辺を回るそうだから送り出すところだったんだよ」


「そう」


 真理の言葉に頷くと再び出て行こうとする藍色に真理が待ったをかける。


「ああ、玲央に気をつけろ?あいつ、普通にお前さんの能力きかんから」


 それだけ言うと、真理は再び探し物にもどったのか、腕を空間に入れごそごそとあさりだしたのであった。





「……妖怪の山?」


 真理の家を出て、あたりを見回す藍色。すると、そこは真理の家以外は見覚えがある山があったのである。


「あら?どちらさまですか?」


 山を見上げていると後ろから声をかけられたので振り向くと底には桃色の髪に額に角を持った鬼がいた。


「藍色」


 誰かと問われたので自分の名前を告げる藍色に鬼は微笑む。


「私は鬼神母玲央と申します」


 藍色の言葉が自己紹介と分かったのか、玲央もまた自分の名前を告げて頭を下げる。その仕草はまるで大和撫子である……髪は桃色だが。


「ところで、真理さんの家から出てきたようですが、真理さんのお知り合いですか?」


「そう」


「見たことも無い方ですが、真理さんはお知り合い多いですし不思議ではないですね」


 一言でしか返さない藍色に、笑顔を崩すことなく色々と聞き出す玲央。


「それで、貴女は何を?」


「旅」


「旅の途中で真理さんの家に寄ったのですか」


「違う」


「あら?」


「気づいたら引っ張られた」


「ああ」


 藍色の説明とつかない説明でも、真理と付き合いが長い玲央は引っ張られたの一言で全てを理解する。


「能力ですか」


「そう」


 玲央との問答をしている藍色だが、その間もあっちをふらふら、こっちをふらふらと歩いている。そんな藍色の後ろにつかず離れずにいる玲央に初めて藍色の顔色が変わる。


「何?」


「いえ、私の知らない真理さんを知っている貴女がいるというのは、私にとってもいいことなので」


「別にそこまで知ってない」


「それでもですよ」


 いやんいやんと、くねくねする玲央は傍目から見たら気持ち悪い。だがしかし、妖怪の山でそのことを突っ込むような猛者は存在しない。


「このまま行くと、麻耶さんのお宅に突撃ですね」


「誰?」


「天魔ですよ」


「??」


 天魔という言葉を知らないのか、首を捻る藍色。そんな藍色に玲央も首を傾げる。天魔は有名ではと。


「よいしょ」


「はしたないですよ」


 屋敷の前までやってきた藍色あろうことか、扉から入らずに目の前にあいていた窓から侵入しようとしたのだが、玲央に抱えられて下ろされる。


「貴女も女性ならば、少しはつつしみを持ってください」


 お前が言うか!とツッコミたい、その近くにいる麻耶の秘書達。普段は確かに慎み深いといえば、深いが、真理を前にすればそれがいずこかへ吹っ飛ぶのである。


「こちらですよ」


 未だに抱っこされている状態で案内される藍色。振り払おうにも、鬼神のパワーで抱えられてはどうにも出来なかった。


 というよりも、先ほどから何故か能力を使って撒こうとしているのに出来ないのである。


「何者?」


「鬼神です」


 鬼というのは分かっている。聞きたいのはそういうことではない。ないのだが、ある意味で口下手な藍色の言葉だと色々と足りないようだ。


「くかー」


「ああなったらお終いですね」


「同感」


 二人揃って麻耶の部屋に入ると、机に突っ伏して寝息を立てている麻耶の姿が飛び込んできた。


 ぶっちゃけ、女としての慎みなんてあったもんではない。真理的にはそこらへんはどうでもいいので気にしてないのをいいことに直す気は無いらしい。


「ん」


「そこらへんを漁っても何もないですよ」


「残念」


 行き成り箪笥を開けて漁りだす藍色にやんわりと注意する玲央。ぶっちゃけ、部屋は汚いのだが、付き合いが長い玲央にとっては何がどこにあるかなどは十二分に知っていたりする。


「何か欲しいものでもあるのですか?」


「別に」


 ただ、突発的にやりたいことをやっているようである。そのことが分かったのかクスクスと笑い出す玲央。


「何?」


「いえ、本能に忠実というのはいいことだと思いましてね。そして、真理さんの知り合いというのも納得がいきました」


 玲央にとっては、藍色の行動自体はいいものとは思わないのだが、思い人を思い出せば似たようなものである。


「さて、次は何処に行くのですか?」


「知らない」


 玲央の質問にそっけなく返すとそのまま麻耶の屋敷をでて再び歩き出す藍色に玲央も後ろについていく。


「ふふ、そういえば、こうやって当ても無く歩くというのは、実に久しぶりですね」


「そう」


「ええ、ありがとうございます」


 玲央にお礼を言われる藍色だが、そっけなく返すだけである。藍色的にどことなくやりづらそうである。


「なんで、さっきから転ばないの?」


「はて、転ぶようなことはありませんよ」


 確率的に低かろうが、その確率を弄れる藍色。さっきからこかして撒こうとしているのに一向に成功しなく、直球で尋ねることにしたようである。


「私は確率を操れる」


「それはまた、汎用性がありそうですね」


 藍色から告げられる能力に対して、玲央の回答は普通である。


「貴女が転ぶという確率は限りなく高くなっているはず」


「そうなのですか?……ああ、私の能力が発動していましたね」


 そこで漸く、玲央がことの真相を理解した。


「私は無と有を司っていますので」


「なにそれ」


「簡単ですよ。私にとってあると思うものがある。無いと思ったら無いだけです」


 めちゃくちゃである。それを聞いた藍色の顔色が渋くなる。


「この力自体は基本的に普段使いしてないですが、私に降りかかる能力や天災などは自動で発動して感じないんです」


「めちゃくちゃ」


「理解はしてますよ。だから、この力自体は普段使いしないように使ってませんしね」


 限りなく100と0に近づける藍色に対して、玲央は100と0を司っている。能力の優劣度でいえば、玲央に軍配があがるのである。


「理解した」


「何がです?」


 出掛けに真理が言っていた理由である。


「お、こんなところにいたのか」


「真理さん!」


「じゃ」


 真理が現れたことにより、玲央は真理にかけよる。傍目から見れば、玲央のほうがよっぽど犬っぽい。嬉しそうに尻尾を振っている幻想が見える感じで。


「まてまて」


 ひょいっと襟首を持たれ、宙に浮かされる藍色は宛ら猫のようだ。


「なに?」


「そろそろ帰れ。時間も時間だしな」


 真理に言われ、空を見上げれば既に空は茜色に染まっていた。


「分かった」


「んじゃ、送るぞー」


 藍色が頷いたのを確認すると真理の前の空間が歪む。そして、真理はそのまま藍色をぽいっと投げ込んだ。わりと外道である。


「いやはや、次元を超えて召還しちまうとは」


「全国で出会った方ではないんですか?」


「前にひょんなことで迷い込んだ別の次元の妖怪だなありゃ。わりと理解に苦しむが嫌いじゃない」


「そっくりですよ?」


「あそこまでじゃないと思うんだがなぁ」


「あの子もいいそうですね」


「いやはや。お前も楽しそうだな」


「楽しかったですよ。なんか、かつて全国を歩いていたのを思い出しました」


「何万年前だよ」


「女性に歳を尋ねないでください」


「はいはい。どうせ、飯食いに来るんだろ?いくぞ」


「はい!」


 こうして、迷い込んだ藍色が巻き起こそうとした騒動は鬼神の活躍により知らずと抑えられたのであった。ゆかりんよかったね!

夏バテ気味です。


冷たい料理は食べないようにしているのですが、それでもやせてしまい、気づけば前まで普通だったズボンが緩くなってしまいました。



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