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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
71/115

家族

おい、あと2~3話で靈夢とか出せるとかいった奴誰だよ。

全く出せる気配ないよ。

 レミリアたちを担いで洋館の中に入りとりあえず居間らしき場所に出たのでそこにあるソファーに寝かせ、俺らは椅子に座る。


「大陸の家具というのは中々お洒落ですね」


「そやね~。床に座らんでこんな風な椅子で談笑するっちゅーのは初めてやね」


「そうか、お前等の場合はかなり前で止まっていたんだったな」


 各々感想を口に出す。玲央や麻耶にとっちゃ初めての経験になるからなのか、結構はしゃいでいるな。


「真理さんはあまり感動していませんね」


「何だかんだで外には結構出ているからな」


 それに、もう殆ど薄れている前世の記憶だが、こういったものを見るとなんとなく思い出され、感慨深く感じる。


「まぁ、お前の能力だと結界があろうがなかろうが関係なく出れるからな」


「お前等も出れるだろうが……結界に影響与えるだろうが」


 玲央や麻耶の場合は力ずくになるからなぁ、清明の場合は結界を弄るからやはり影響あるし。


「そのうち、外に出てみるか?」


「あ、興味あります」


「うちもや」


「面白そうだな」


 序に椛も誘って、旅行気分としゃれ込もうか。


「ん…」


「お、漸くお目覚めか」


 喋っていたら、レミリアの声が漏れたのでそちらを向くと、もぞもぞと体を動かしていた。


「め~り~ん、お茶ちょーだい」


 寝ぼけているらしく、目を開けずに美鈴を呼んでいる。そういや、こいつ等の関係って今一わからんな。


「ほれ」


「ありがとう……げふぁっ」


 とりあえず、飲み物を渡したのだが盛大に噴出しやがった。


「げほっ、ごほっ…い、一体何が!?」


 完全に目を覚ましたらしく、あたりをキョロキョロと見回してついに俺と目があった。


「おはようさん」


「貴様は!」


 俺が誰かと分かり、直ぐに戦闘態勢を取ろうとしたのだが、レミリアの視線が一瞬外れたと思ったらガタガタと震えだした。


 一体何を見たのか気になったので視線を追ったら玲央が笑みを浮かべている姿だった。


「遅いですよ?」


「う、うわ~ん、パチェー」


 玲央が一言、戦闘態勢に入るのが遅いと注意したら、瞳に涙を浮かべてネグリジェを来た子に抱きついてしまった。


「苛めるなよ」


「注意しただけなんですがね」


 どれだけトラウマになっているんだか……鬼神と喧嘩して生きているだけましか。


「パチェ、パチェ、起きて~」


 未だに寝ているパチェ?を起こそうと必死に揺さぶるレミリアだが、一瞬とはいえ心臓が止まったからなぁ、当分起きないと思うぞ?気付けかなんか出来れば別だろうけど。


「うぅ……お嬢様の鳴き声が……」


 レミリアが泣いているのが聞こえたのか次に起きたのは美鈴であった。


「めいりーん」


「うわっ!?お、お嬢様?一体どうなされたので……あ」


「よ」


 レミリアが抱きついてきたのに混乱している美鈴だったが、俺と目があったので手を上げて挨拶した。


「えっと、一体何がどういった状態で?」


「まぁ、あれだ、玲央と戦ったレミリアなんだが、ちょっとはっちゃけた玲央の殺気をもろに食らってな、トラウマになっちまったみたいだ」


「なるほど」


「因みにお前が2回目の気絶したのも玲央の殺気な」


「ああ、だからあの方だけ見ると体がなんとなく震えるわけですか」


 どうやら、全員に等しくトラウマを与えたようだ。てか、どんだけ怖いんだレミリアは。未だに美鈴に抱きつきながらわんわん泣いているんだが?


 そういう意味じゃ、椛はガキのころから案外平気だったな。今のほうが過剰に反応するようになってきているが。


「それよか、聞きたいことあるんだけどさ」


「なんです?」


 美鈴は比較的落ち着いているようで、俺の質問にも冷静に答えられるようだ。てか、レミリアのあしらい方が板についているな。


「そこにいる子のことさ」


 指を指すと美鈴も指の先へと視線を持っていく。


「い、妹様!」


「ああ、そういや、お姉さまがどうのこうの言っていたな」


 気配的にもレミリアに似ていることからこの子はレミリアの妹かね?容姿は全然似てないけど。


「どうして、妹様が」


「なんか、戦いの気配につられたみたいだな」


 暇していたんだろうか?俺もわりと暇だと他人の戦い見に行く傾向あるし。


「はぁ」


「なんか、色々と聞きたいことあるんだけどさ、なんでこの子は狂気なんて孕んでいるんだ?」


 俺が質問すると、美鈴はどうしようかという目をし、レミリアに視線を落とす。レミリアも妹の話が出てきた辺りから泣き止んでいたのだが、相変わらず美鈴に抱きついたままだ。


「お嬢様」


「ぐす、分かったわ」


 美鈴に呼ばれ、鼻をすすりながらも離れるレミリア。目が赤いのは泣いたためかね?


「妹、フラン……フランドール・スカーレットは生まれたときから強力な力を持っていたわ。けど、幼い精神ではその力を制御できなく暴走してしまう。何より、フラン自信に、制御するつもりがあるか分からないところも問題だわ」


「それで?」


「情緒不安定で、かつ能力的にも危険なフランを外に出すわけには行かず、かつ本人も基本的に出ようとしなかったから地下の部屋に入れていたのよ。

 そして、友人もいない、などの状況でどんどんと、ね」


 それを聞いた瞬間に俺はレミリアに拳骨を落としていた。落とされたほうの本人は涙目ながらにこちらを睨んできていた。


「なにするのよ!」


「アホか、家族が家族を遠ざけてどうする。力が制御できないから放っておく?そこは一緒にいて、制御できるように一緒に練習なりなんなりするもんだろうが」


「そうですよ。家族が怖がっちゃあの目も仕方ないかもしれませんね」


「てか、結局どんな能力なんや?」


「私は家族らしい家族がいないからな、今回はお前等に任せよう。人間に危害を加えない限りは静観させてもらう」


 鬼の総大将にして、鬼の母である玲央は勿論。天狗の頭領にして、天狗たちを家族と称する麻耶にとっても今回の話は聞き捨てならんようだったな。


 まぁ、俺も椛を引き取ってなければ清明側にいたんだろうけど、人間って変われば変わるものだな……あ、妖怪か。


「うーっ、めーりーん」


「ああ、痛かったですねぇ。あまりお嬢様のカリスマを壊さないでくださいね?修復するの大変なんですから」


 知らんよ。てか、カリスマって何だっけ?


「そんで、妹の能力は一体なんなんだ?」


「妹様の能力は【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】です」


「ああ、そりゃ強力だね」


「軽いですね」


 能力を教えてもらっても別段驚かない俺達になにやらジト目で尋ねてくる美鈴。


「ん?いや、言ったとおり強力だと思うけど、なぁ?」


「そやねぇ、強力や。断言したる、けどなぁ?」


「ただ、世の中には上には上がいるということだ、なぁ?」


「どうして皆さんは私の顔を見ながら言ってくるんですか?」


 いや、お前の能力と似ているからさ、驚くほどでもないんだけど。


「まぁ、それくらいでビビッているならこの幻想郷を支配するなんて夢のまた夢だな」


 最終的な結論をレミリアに言ってやる。てか、能力のえげつなさは俺含めて結構多いぞ?


「そのようね……はぁ、何が幻想郷は安全なところよ。管理者め騙したな」


 なにやら黄昏ながら文句を言うレミリア。管理者って確か紫だったよな?いや、別段幻想郷は危険とは言いがたいぞ。ただ、安全って言葉にも首を傾げるが。


「まぁ、いいや。お前さんがもてあますなら当分の間、フランドールだったか?預かって能力の使い方教えてやるが」


「なに?」


「うちにも娘がいるし、子供育てるのはそこまで苦労しないしな」


 許可を取らんでもあとりや椛なら大丈夫だろ?あとり辺りには呆れ顔されるだろうけど、いつもの如くさらっと流すだろう。


「それで、妹は私達も再び笑いあえるのか?」


「さぁなぁ、これだけはやってみなきゃ分からんよ。何より、その努力はお前等がするもんだ」


 俺の言葉にしばし沈黙が流れるが、悩みに悩んであったろうレミリアはついに答えを出した。


「よろしく頼む」


 確りと頭を下げたレミリアに返事を返してフランドールが寝ているソファーに寄っていく。


「つーわけで、今日からしばしの間、うちに来ることに決まったぞ」


 狸寝入りしているフランドールの頭を撫でながら伝えるとムクリと起き上がる。


「また遊んでくれるの?」


「俺はパス。まぁ、玲央や麻耶と遊びな。他にも遊びなんかを教えてくれる奴は一杯いるさ」


 天狗どもの群れに放れば多少すっきりするだろ?


「いや、流石に可哀想やからやめてや?あと、うちが遊んでもかまへんけど、その間の仕事は真理さんがしてくれるん?」


 しねえよ。どうせお前、本当に重要な案件以外はサボるだろうが。


「うん、よろしくね。お姉さん」


 どうやら、フランドール的には外に出れることも嬉しいらしいな。邪気の無い笑顔だ。それに一度ぶっ飛ばされたためか狂気も大分薄まっているような気がする。


「ああ、そういや自己紹介してなかったな。俺は風由真理。少し長生きしている犬の妖怪さ」


「鬼の総大将、鬼神母玲央です」


「天狗の頭領、天麻耶や」


「陰陽師、安部清明だ」


「フランドール・スカーレットだよ!皆、フランって呼ぶからそう呼んでね!」


 自己紹介も終わり、美鈴に細かい注意を聞いて、ふと思い出したことがあった。


「そういや、フランや他のやつ等も気づいてなかったが一応言っておくが、俺は男だからな?」


「え?」


「は?」


「本当に?」


 帰りの間際に告げた言葉に信じられないものでも見る目で固まるレミリアたちに別れを告げて家に帰った。てか、最後のやり取りは何年ぶりだ?久々すぎて逆に笑いそうになってしまったよ。





†――――†






「え?男……あれが?」


「なんですか、あの綺麗な顔は。なんですか、あの綺麗な肌は。なんですか、あの綺麗な髪は。私に喧嘩売ってるんですかコンチクショー」


「勝ったと思ったら、まさか男……はっ!?男の家にフランを預けたというのか私は!?まて、貴様等!」


 まさか男とは思ってなかったのか、真理を見て多少の可能性に優越感を持っていたレミリアだったが、それが打ち砕かれ、美鈴もまた、男にしてあの容姿を持つ真理に嫉妬していた。


 そして、最後にフランを男に預けてしまったという事実を思い出し、慌てふためくレミリアだったのだが、結局は杞憂に終わることになったのであった。

咲夜さんがいないから、代わりのめーりん

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