表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
69/115

二つの鬼

 荷物を抱えながら荷物の持ち主の下へと向かおうとしたのだが……


「どこにいるんだ?」


「さぁ?」


「無計画やな~」


 そもそもだ。美鈴とのいざこざはこいつの主が云々とか言っていたのを断ったことから始まったんだよな。


「いえ、真理さんが中国?って呼んで絡まれたんですよね?」


「せやせや」


「中国とは言いえて妙だな」


 ああそうか、清明は俺らと違って外の世界に長くいたから中国のことも知っているのか。


「中国ではありません!って!なんですかこの格好は!?」


 おお、すげぇ。中国に反応して飛び起きたよこいつ。ちなみに美鈴は俺に肩に担がれており、文字通り荷物扱いだ。


「起きたか。ほれ」


「きゃん」


 起きたので地面に落としてやる。起きているやつを態々抱えている理由はないしな。


「一体ここは」


「いや、お前の主とやらに会いに行こうとしたら迷っているだけだ」


「迷っていると言っていいのですかね?」


「せやねぇ。多少の違いはあるけど、うちらは幻想郷の地理は把握しているで」


「ここら辺だと、近くに湖があったはずだな」


 いや、俺が言いたいのはそんなことじゃ……いや、こいつらもわかっているか。あくまで美鈴に言っているだけだな。


「はぁ……って、パチュリー様!?」


 生返事を返した後、前鬼に担がれている少女を発見して再び驚く美鈴。こいついい反応するな。周りのやつ等はあまり騒ぐやつがいないから新鮮だ。


 いや、口やかましいといえば文がいるが、あれはただ煩いだけだし。椛があいつ付きになったと聞いたとき、思わずお願いをしようとしてしまったが、落ち着いたアイツの場合はある意味でいいコンビになるかもと思って放ってある。これで、あいつ見たくなったら説教だが。


「この少女のことなら安心せい。あくまで気絶しているだけだ。こやつには色々と教えてもらったからな」


 ホクホク顔の清明だが、人選が微妙すぎるぞ。前鬼を見るとなにやら鼻息荒いし……あいつらの性癖がたまにわからん。分かりたくもないが。


「そんでだ。お前等の主はどこにいるんだ?」


「何を言って……」


「お前さんが挨拶しろといったんだろうが」


 まぁ、頭を下げろとか抜かしているらしいがそこらへんは無視だ無視。


「分かりました、ご案内します、我等が紅魔館へ」


 美鈴の案内の元、こいつらが住まうという紅魔館へと移動を開始する。


「ん?この湖って」


「知っているのですか?」


「たまに釣りに来る程度だけどな」


「釣りなら山の魚がおるやん」


「山の魚とはまた違った魚が取れるんだよ。あと、あとりのリクエストでこっちとかな」


「こんど私も連れて行ってください」


「あ、うちも~」


「私も付き合おう」


「暇人どもが」


 いや、麻耶には天狗の頭領としての仕事があるな。清明は山から人里へと向かう妖怪の足止めも……まぁ、他人事だからどうでもいいけど。


「見えてきましたよ」


 美鈴の言葉で前を向くとそこには名前に負けることの無い真っ赤な館が現れた。


「へぇ、色は微妙ですが趣は素敵ですね」


「そやね~。色は微妙やけどうちらの住む家とはまた違ったよさがあるな~」


「南蛮に近い構造なのか?しかし、微妙な配色だな」


「だなぁ、確かにそれ系だな。こっちだと確か幽香の家がそれに近かったか?にしても、目に痛い色で微妙だな」


「微妙微妙言わないでくださいよぉ……」


 いや、でも真っ赤な家ってどうなんだ?ちなみに俺と麻耶、清明は玲央にのっかただけだ。まぁ、微妙には違いないけど。


「あら、美鈴帰ったの?」


 館の前で色々と観察していたらなにやら声が聞こえてきたのでそちらを向けば、背中から羽を生やした萃香に負けず劣らずの幼女が腕を組んでこちらを見ていた。


「ただいま戻りました、お嬢様」


 美鈴が、従者の礼を幼女に行っている。主の娘かなんかか?


「それで、そいつ等は私に頭を下げに来たというのか?」


 おお、行き成り尊大な態度でこちらを見下してきたな。よかったなぁ、ここにいるのが俺らで、幽香あたりなら有無を言わさずにぶっ飛ばしていたはずだ。


「いえ、それが……」


「いやな、新参者が来たと聞いたから挨拶にきてやっただけだよ」


 美鈴が何かを言う前に割り込む。


「なに?」


 ギロリとこちらを睨みつける幼女。


「中々面白いことを考えるやつが現れたってんで、物珍しさを感じてな」


 本当に。ここにいる連中で幻想郷を統べようなんて考えを持つやつが現れるなんて……いや、現れていたかもだがその悉くが清明に消されただけか。


「そんで幼女ちゃんは何で幻想郷を統べようなんて考えたんだい?」


「幼女とは私のことを言っているのか?」


 睨み付ける力が強くなったがその程度じゃまだまだ俺を怯ませるにはたりない。


「他に誰かいるかい?」


 きょろきょろ周りを見回してみても他に幼女なんて……


「清明、そいつはどうだった?」


 前鬼の肩に担がれている子を指差して尋ねる。


「まぁ、子供には違いないが、一部分だけは女性だな」


「なんやそれ?うちを見ながら言うってことは喧嘩売ってるんか?高額で買ったるで?」


 摩耶を見ながら一部分を強調して言う清明。ふむ、胸か。どうでもいいな。


「パチェ!?貴様等、パチェに何をした!」


 なんか、無駄に不穏な気配になっている清明たちを放置して、幼女は清明にやられた子を発見すると更に更にな感じで睨みつけてくる。


「何をと言われてもな、なにやら人里へと妖精をつれて向かおうとしたから止めさせて貰ったまでだ」


 未だに不機嫌な摩耶を放置して清明は律儀に幼女に説明をしてやる。まぁ、子供相手に無視を決め込むのは酷だしな。


「そういや、今回は博麗の巫女に出張らせるからしゃしゃり出るなと紫に釘を刺されていたな」


「そういえば、そうですね」


 まぁ、相手が喧嘩売ってきたんだ、俺らが知ったこっちゃ無い。


「そう、もういいわ」


 なにやら、先ほどまでの威圧感(笑)はどこへといったやら、彼女から力が抜けたように感じる。


「私を見にきただけというならば、私が今一度問いましょう。私に頭を下げるか否か」


「はっはっは!」


「何を笑っている?」


「なに、何年ぶりかねと思ってね。俺を束縛しようと考えた奴は」


 本当にひさしぶりだな。


「いいか、お譲ちゃん。

 1つ、俺を飼いならすのは俺だけだ。

 2つ、俺を飼いたきゃ一生興味が尽きないものをもってこい。

 3つ、俺を強制的に飼いたきゃ、俺以上の力を示してみろ」


 俺がそういうと、彼女の顔色が完全に変わる。


「嘗めているのか貴様。この私、吸血鬼にしてツェペシュの末裔たるレミリア・スカーレット相手に」


 瞳を輝かせて朗々と告げてくるが、ここにいる連中はそんなことを言っても分からんぞ。


「真理さん、吸血鬼ってなんですか?」


「字で書けば、血を吸う鬼だな」


「鬼ですか」


 あっちではドラキュラだな。まさか、色々な妖怪を見てきたし魔法なんてものもあるからもしかしたらと思っていたが、本当にいるとは。ただ、いたのが幼女ってのは残念だけど。


「鬼ならば、私が相手をしなければいけませんね」


 そいって、玲央が一歩前にでて空へと上がっていく。てか、お前は暴れたいだけじゃないのか?


「貴様は」


「私は鬼神母玲央。巷では鬼神といわれている鬼の大将ですよ。よろしくお願いしますね、レミリアさん」


 目に余るような失礼な態度でも、玲央の大和撫子然とした態度は崩れない。


「傍から見ると、あいつは本当に鬼神なのかと疑いたくなるときがあるな」


「アイツの場合はなぁ、戦いたい、強い奴と全力をぶつけ合いたいという欲求さえなければ、ただの大和撫子だよ」


「それをなくすんは無理やで?」


 分かっているよ。あ~あ、初見のときに勝たなければここまで絡まれなかったんだろうなぁ。まぁ、今更か。


「ふ、鬼神か。しかし、そのご大層な称号も今日までだ!」


 それだけ言うと、かなりの速度で玲央の周りを移動しつつ攻撃をしだす幼女改めレミリア。


「ああ、始まってしまいました……いいのですか?お友達がやられてしまいますよ」


 心配してくれるのか美鈴がこちらにやってきて、声をかけてきた。


「お前は勘違いしていないか?」


「はい?」


 そんな美鈴に代表として俺が答える。


「いいか?鬼神とはその名のごとく、鬼の神だ。あらゆる鬼の頂点に立ち、その力をもって鬼を統べる最強の存在だ」


 ましてや、あの程度のスピードなぞ。


「なっ!?」


「どうしたんですか?」


 抜き手だろうか?レミリアの手を掴んだ玲央に、掴まれた本人が驚いている。


「なにより、物理的な力ではこの世界で一番だ」


 身体能力で言えば麻耶や清明は言わずもがな、俺ですら及ばない。


「えい」


「くっ」


 玲央が掴んだ手を無造作に放り投げるが器用に羽を動かして体勢を整える。


「ほえ~、ちっこいからどないなもんかと思ったけど、あれはあれで便利そうやね」


 同じ羽を持つにしても麻耶の跳ねはでかいからか、変なところで感心している。


「更に言えば、あいつも万を生き、その都度に成長をしてきた一人だ。レミリアがどれだけ生きているかは知らんが、あの体格じゃせいぜいが千も生きていない子供なぞにやられるほど、柔な奴ではないよ」


 美鈴に説明し、再び空を見上げる。


「どうしました?様子見なんて必要ありませんよ?」


「な・め・る・なぁっ!」


 玲央の一言がよっぽど気に障ったのか激昂したレミリアの手に紅い光で出来た槍が現れた。


「神槍―スピア・ザ・グングニル―!」


 名前のとおりなのか、そのまま槍投げのごとく、玲央に真っ直ぐと放つレミリア。その速度は、先ほどのレミリアのスピードに匹敵するが、それゆえに簡単に避ける玲央。


「あら」


 避けた後に、真っ直ぐ飛んでいた槍が突如としてUターンし、背後から玲央を襲ったが、それすらも玲央は避けるが、驚いた表情をしている。


「伝説の武器、グングニル。それは、一度放てば確実に相手を貫くまで追いかける!私のその攻撃もまた同じだ!」


 これで勝負合ったと思ったのか、レミリアは悠々と説明している。


「でしたら、ふっ!」


 説明を受けた玲央は再び目の前まで迫ってきた槍をこんどは避けずに受け止め、そして砕いた。


「わ、私のグングニルを!?」


「ダメですねぇ。この程度の力で幻想郷を支配だなんて」


 槍を砕かれ固まるレミリアに玲央は説教を始める。


「それに、さっきから出しているそれは殺気ですか?」


「ど、どういう意味だ」


「いえ、殺気とは……」


 玲央の言葉が耳に届いた瞬間に、清明に慌てて声をかける。


「清明!結界だ!俺も張る!」


「分かっておる!」


 慌てて、俺と清明で紅魔館を包むように結界を張ると同時に


「殺気とは、こういうものですよ!」


 玲央が言葉を発した瞬間に、あたり一面が重力が変わったがごとく重くなる。


 美鈴が倒れかけたので慌ててキャッチ。それと同時に呼吸をチェック………なんてとか、大丈夫か。思った以上にこいつは素質あるかもしれん。


「真理!」


 清明に呼ばれて、美鈴を地面に寝かせてそちらに赴くと、パチュリーとかいう少女を見ていた。


「チッ、あのバカ、調子に乗って、あとで説教だ」


「ばか者!今はそんなことより」


「分かっているわ!」


 能力を用いて、外界からシャットアウトする。これで、玲央の殺気はこの少女に届かなくなった。


「ふっ!」


「うっ……」


 清明が気つけの符を使うと、パチュリーの心臓が再び動き出した。


「相変わらず、文字通りやなぁ玲央はんの殺気は」


 麻耶がのんきにそんなことを言うが、こっちとしてはたまったもんじゃない。あのバカ、回りのこと考えないで本気の殺気出しやがって、おかげでパチュリーの心臓が止まっちまったじゃないか。


「鬼神の名は伊達ではないんですよ」


 玲央がレミリアをだっこしながら俺らの元へと降りてきていた。


「ダアホ!」


「きゃん」


 俺に近づいてきた玲央の頭に拳骨を落とす。


「もう少し回りを考えて使えや!ここで使えば人里まで届くわ!」


「……あ」


 どうやら、うっかりしていたようだ。何だかんだで何でもこなす玲央だがたまにポカするんだよなぁ。


「申し訳ありません」


「わかればいい」


 まぁ、美鈴同様に玲央の殺気を受けて死んでないのをみると、レミリアもただの幼女ではないようだな。


「さてと、こいつ等を館まで運んだら帰るか」


「そうですね」


「せやね」


「ああ」


 そういって、再び美鈴を拾おうとしたら


「ねえ、私とも遊ぼう」


 突如として現れた金髪の小さな子に吹き飛ばされたのであった。

真理・玲央・麻耶の本気の殺気はパンピーは死にます。原因はショック死です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ