支配
「ちょっと相談が」
「今度はなんだ」
ここ最近、紫から相談を受けることが増えたような気がするな。こいつが相談してくることの大半が厄介事なのはどうなんだろうな。
「そのわりには、嬉しそうですね」
「ほっとけ」
暇つぶしになるからな、よほどメンドクサイ事じゃない限りは聞いてやっているし、手伝ってもやると決めている。
「そんで?」
「外で弱っているというか、追い詰められているというか、そんな妖怪をここに連れてこようとしたのよ」
「そんな程度のことで相談か?」
今までなんて、俺に相談なんてしてなかったのに急遽どうしたんだ?
「問題はね、無駄に誇り高いのよ」
「ふ~ん」
誇りねぇ。それが、どういう部分で誇り高いというかはわからんが、厄介事になりそうだ。
「そこで、揉め事を起こしそうなんだけど……出来るだけ、貴方達は出張らないで欲しいのよ」
「どうして?」
「ここ最近は、清明が活躍しているせいで……ああ、せいというのも変ね……でも……ああもう、兎に角、清明がいるからか博麗の巫女が職務怠慢気味なのよ」
ああ、あそこの巫女って代が変わっても何故かやる気ないというか、だるそうというか、めんどぐさがりというか、そんな感じだな。
後の理由としては、清明が遠隔召還で変態どもを出して潰しているから早いんだよなぁ。
「まぁ、了解。出来るだけ、出張らんけど、約束はせんぞ?」
「仕方ないわ。ただ、出来れば滅するのだけは勘弁して欲しいわ」
「珍しいなお前がそんなこと言うなんて」
基本的に俺らに逆らう奴は皆平等に冥界送りにしているんだけど、それに対して紫は何も言ってこなかったんだがな。
「珍しい種なのよ。今じゃ彼女達だけしか存在しないし、このまま消えるのもね」
「あいよ~。それは博麗の巫女にも言ったほうがいいんじゃないか?」
「大丈夫よ。あの子達は基本的に甘いから」
というよりも、俺等が厳しいだけなんだろうけど。本当に反省したかどうかを決める前に消してしまっているからなぁ。
「まぁ、あいつ等にもいっておくよ」
「ええ、それじゃね」
「玄関から出て行け」
話に納得したと伝えたら紫はすぐにスキマを使って帰っていった。最後の俺の文句は聞こえたのかねぇ?
「また、変なのが増えるんですかね?」
「どうだろうなぁ。まぁ、暇つぶしにはなるだろ?」
椛の言葉にそう返して、玲央たちに先ほどの話を伝えるために外に向かってそれぞれの名前を呼ぶと直ぐに現れ、伝えたのであった。
夜も更けてきて、酒盛りを始めようとしたらなにやら外が騒がしくなってきた。
「天狗たちが宴会でも始めたか?」
「そんな話は聞いてませんが?」
だよなぁ。宴会やるならあの二人が俺を誘わないわけないし、秘密にしていたら酷いことになることも分かっているだろうから、絶対にありえないな。
「なんか、天狗たちの悲鳴がちょっと聞こえるな」
「よく聞こえますね」
「耳と鼻はいいからな」
目は残念ながら椛には敵わないが、それ以外は勝っている。って、娘相手に何を張り合ってるんだか。
「見に行くか」
「せめて、酒瓶は置いていってくださいよ」
別にいいじゃないか。これといって、やることがあるわけじゃないし。
「誰だアイツは?」
外に出てみると、なにやらスリットの入った服を着たやつがばったばったと天狗たちと戦っていて、天狗たちが落ちていっている。
「あれ?天狗ってあんなに弱かったっけ?」
「いえ、あれは若い人たちですね。熟練の人たちは……なにやら、後ろで言いたいだけ言っていますね」
はぁ。大天狗どもは実力あるのに、保守的過ぎるな。そんなに言うなら自分でやれよ。
あと、そこの中国、そろそろやめておかないと後悔するぞ。
「誰が中国ですか!」
「あれ?俺声にだしていた?」
「中国って部分は出ていましたよ?あと、中国ってなんですか?」
「あれだ、外の世界での一つの地域の名称だな」
椛は幻想郷出身だから世界のことを話してもわからんだろ。そのうち、外に連れ出してやるか。
「貴女ですね!私を中国って呼んだのは!」
「すっげぇ、地獄耳だな」
「ですねー」
怒っていますという形相で俺を睨みつけてくる中国。しかし、俺がなにをしたよ?
「私の名前は紅美鈴という名前があるんです!」
「すまんな、俺は風由真理」
「私は、犬走椛です」
「あ、ご丁寧にありがとうございます」
そういって、お辞儀をする中国こと美鈴。
「って、違います!」
「そうそう。なんのようでこの妖怪の山にやってきたんだ?騒がしくて興味が出てしまったじゃないか」
「興味なんですか!?あと、人と喋りながらお酒を呑まないでください!」
「なんで、見ず知らずの他人からそんなこと言われなきゃならん」
「流石に常識的に考えてありえませんよ、お父様」
ま、まさか娘が敵に回るなんて!?
「え、えっと……なんで私は親の敵みたいに睨まれているんでしょうか?」
「気にしないでください。幻想郷に住まう理不尽の一人なので」
すっかり、椛と仲良くなって俺の非難をする。いいだろう、椛を奪うというなら俺を倒してからにしてもらおう!
「えっと……」
「まぁ、冗談はさておいて、改めて妖怪の山になんのようだいお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃん!?」
「ああ、お父様はこう見えて万の年齢超えているので」
「万!?」
いちいち、いい反応するなこの子。からかいがいある。
「そんで?」
「そうでした。お嬢様からの言伝です。この幻想郷はこれから私が支配する。従うならば頭をたれにこいとのことです。また、敵対するものには容赦はするなとも」
幻想郷の支配?正気か?しかも、ここにやってくるなんて。
「これで、天狗様たちが騒いでいたわけがわかりましたね」
「ああ。あいつ等は天魔以外は認めないからなぁ」
カリスマの塊だからなぁ麻耶って。普段ちゃらんぽらんなくせに、閉めるところで閉めるから逆に眩く見えたりするだろうし。
「まぁ、ここは諦めろ。てか、よっぽどのやつ等は従わんぞ?」
とりあえずとして、ここを筆頭に冥界も竹林も太陽の畑もどれも従う気はないだろうなぁ。
まぁ、幽香のいる場所は辺鄙なところだから行ってはないだろうけど、行っていたなら被害が広がりかねん。
「そういわれましてもね、私も主の命で動いているんです。なので引けません」
そういって構える美鈴。ふむ、なんとなく分かっていたが近接型か。それに、構えが少々特殊だな。拳法とかそいうのをやっているのかね?俺や玲央とは違うな。俺たちは本能のまま攻撃するし。
「お父様の場合は技術ありませんか?玲央様も同様ですが」
まぁ、若かりし頃から戦い続けたからなぁ。ただ、何かしらの型っていうのは無いな。いや、玲央は技作っていたし俺だけか?
「まぁいいや。かかっておいで。格の違いを教えてあげよう」
おいでおいでと挑発しながら椛に酒瓶を預けて下がらせる。いや、ここは椛にやらせて経験をつませたほうがよかったかな?今更過ぎるからどうでもいいか。
「あまり、嘗めないでください!」
「5尾開放」
一気に近づいてきたのを紙一重で交わして力を解放すると、美鈴はなにやら目を見開いていた。
「尻尾が増えた?しかも、先ほどまでとは比べ物にもならないほどの威圧感が」
「それを感じられるということはお前は強いよ」
天狗たちだと半々程度しか感じられなかったりするからなぁ。ただ、椛は別だ。俺らと一緒にいすぎてあいつの強さが白狼天狗なんかじゃ収まらなくなっちまった。
「はぁぁぁっ!」
なにやら力を溜める動作をしたと思うと足に虹色の力が溜まりだす。
「ん?妖力とはまた違ったものか?」
「地龍天龍脚!」
「7尾開放」
鋭い踏み込みから一気に蹴りを放ってきたのを尾を増やして上限を上げて回避する。
「避けた!?」
「おりゃ」
「きゃん」
避けられたのが予想外だったのか、驚いている美鈴の首筋にソバットを叩き込み気絶させた。
「おまえらぁ。人の酒を呑むな」
「いいじゃないですか。真理さんはまだ一杯鬼殺しもっているんですから。私と麻耶さんは在庫が少なくなって心もとないんですから」
今まで静かに観戦していた玲央たちに文句を言う。人の戦いを肴にするのはかまわないが、人の酒を呑むな。
「だったら言えよ。出してやるから」
「ありがとうございます」
「ほんま助かるわ~」
美鈴を肩に担ぎながら合流する。
「それにしても、幻想郷を支配するっていうのは大きな話ですね」
「そやね~。メンドクサイこと考える子がおったのは驚きや」
「だなぁ。」
「なんでしょう。ここはツッコミ待ちなんでしょうか?」
別にせんでも言いたいことはわかっているから。
「さてと、とりあえず主にこいつを返しにいくか」
「放置や家に置くんじゃないんですか?」
俺の行動が以外なのか驚く玲央。
「いや、どういう状況なのか見に行くのと、暇つぶし」
「納得です」
「てか、最後のがほんとの理由やろ~」
いいじゃないか、刺激がある生活のが張り合いがでるんだぞ。
「さてと、いくか」
「私も行きます」
「うちも~」
「私は明日の朝早いので家で待っています」
残念。椛はお留守番のようだ。まぁ、もう子供でもないし好きにやらせるかね。
「なぁにこれ?」
「相変わらず清明さんの術はえぐいですね」
「てか、相手している子の術を片っ端から真似て跳ね返し取るわ」
肩に担いでとりあえず、人里に向かって行っていたら人里でどんぱちやっているのを見つけたので見にきたら清明が無双していた。
「ふむ、そういえば昔に大陸のものから星について少し聞いたがこのことだったのか」
「なんなのよ!?私の魔法を端からコピーして、なおかつ威力が私より高い!?」
ネグリジェのような服を着た子がやや癇癪みたいなのを起こしながら弾幕戦を清明とやっているが、相手が悪すぎだろ?
魔法というのは久々に聞いたが、術であることには変わらない。こと術での戦いで清明に勝てる理由もないし、あの子詰んでいるなぁ。てか、清明は魔力までもっていたのか?
てか、清明がすっげーホクホクした顔をしていることから未知の技術とあって研究しているな?
「さて、終わりとするか。ロイヤルフレア」
「それ、私の!?きゃぁぁぁぁっ!」
いくつかの炎弾がネグリジェの子を襲い、耐え切れずに落ちてきたのを清明が優しく受け止めてやっていた。
「おお、真理」
「ご機嫌だな」
「ああ。なにせ、私が知らない術を使っていたのでな。うむ、勉強になった」
ああ、こいつがどんどんチートになっていく。陰陽術に占星術、妖術に魔法?他にも引き出しがありそうで怖いわぁ。
「とりあえず、こいつらの主に会いに行くがお前はどうする?」
「ふむ。私も行こう。流石に人をやめてはいるが人間をそのまま放置とは後味が悪い」
清明も一緒にいくこととなり、今回の首謀者へと俺たちは挨拶に向かった。




