あいさつ回り―地底6
「真理さん、覚り妖怪に興味ないですか?」
宴会もお開きとなり帰る準備をしていたら突如玲央が言ってきた。
「興味あるがいるのか?」
宴会中は色々な妖怪と会いはしたが覚りなんていなかったと思うが。
「はい。ただ、彼女の場合はしゃいというよりも能力の関係上あまり人前にでてこないんですよね」
玲央はやれやれといった感じで首を振る。能力の関係ねぇ……
「まぁ、会えば分かるか」
「真理さんならそういうと思ってました」
笑顔で答える玲央。付き合い長い分だけよく分かってらっしゃる。こうして玲央に連れられて覚り妖怪が住んでいるという場所に案内された。
「ここですよ」
「へぇ、結構いい家じゃないか」
連れてこられたのは地底でもかなり端にある場所で、何も無いところである。こんなところじゃ誰も尋ねてこないだろうな。
それとは別にこの時代で既に洋館なのだが、なんとなく趣があっていい。今度家建て替えるときは洋館にするかな……まぁ、めったなことじゃ壊れることないだろうが。
「お前もそう思うだろ?」
「へ?」
横にいる少女に尋ねるとなにやら呆けた顔をしている。
「どうして……」
「いやさっきからいただろ?玲央だって気づいていたし」
なんとなく見失いそうになりはするが、よほど気を抜かない限りは見失うことはないだろうな。
「ああ、彼女はあれですよ。覚り妖怪の妹さんです」
覚り妖怪の妹とな?
「つまりはお前も覚りなのか」
「いや、私は……」
「まぁ、彼女達も色々理由をもってますからね。あまり突っ込んではいけませんよ?」
「そいつは失敬」
デリカシーが無いのは自覚しているが、全員が全員吹っ切れているわけでもないか。
「それより、何で私を見つけられたの?」
「いや、ここに来る途中からずっとつけていただろお前」
「気配駄々漏れですからね」
理由を尋ねられても直ぐに分かる。
「おっかしいなぁ。無意識を付いたと思ったのに」
「無意識?」
「私の能力【無意識を操る程度の能力】って相手の無意識を利用してその隙に付け込む能力のはずなんだけど……」
なるほど、人とは得てして気にしているようで抜けている部分ってのは腐るほどあるからそれを利用して自分がいるはずもないと思い込んだりするわけか。
「まぁ、それでも匂いや気配がなくなるわけじゃないけどな」
「そうですね」
「匂いって私臭い?それに、気配って鬼神は分かるけどあんた何者?」
なんか胡散臭そうな目で見られるがそんなのは慣れっこである。
「別に臭いってわけじゃないよ。俺が元々が犬妖怪ってことで嗅覚が変なところで敏感なんだ。あと、気配云々は昔散々玲央と一緒に鍛えたからな、最早お前が言う無意識的に感じるんだ」
いやぁ、あの頃は若かった。玲央と二人でどっちがより多くの気配を辿れるか競ったもんだ。
「懐かしいですね」
隣にいる玲央も懐かしそうに遠くを見ている。ついでにあの頃の玲央よ戻ってきてくれ。
「今も昔も真理さん一筋ですよ?」
そういうところは昔なかっただろうが。
「そんで、何しにきたの?」
おっと、玲央と昔話をしていたらもう一人の少女を放置してしまった。
「なに、玲央に覚り妖怪がいるって聞いてな会いにきたんだよ」
「アンタ変わってるね。普通、進んで覚りに会いたいという人なんていないのに」
そうなのか。面白そうでいいんだけどな。
「まぁ、お姉ちゃんに会いたいっていうなら止めないよ」
「そうか。っと、そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は風由真理、ちょっと長生きしている犬妖怪さ」
「ちょっと、なんですね」
玲央が苦笑いしながらツッコミを入れてくる。永琳に比べればちょっとだよ。
「ふ~ん。私は古明地こいし。よろしくね犬さん」
「犬になってやろうか?」
そういって、犬の形態。獣化するとなにやらこいしと玲央が目を輝かせる。
「へぇ、うちにも犬がいるけど見ない姿ね。それに毛がさらさらしている」
「久々に見ましたね。相変わらずいい尻尾です」
「わりと家で昼間に寝ているときはこの姿なんだがな」
玲央が早速と言わんばかりに尻尾に抱きつく。
「ふぁ、相変わらず気持ち言いですぅ」
鬼神の威厳なんてうっちゃっているせいかこいしが信じられないものを見る目で玲央を見ている。
「そ、そんなに気持ちいいの?」
「最高ですぅ」
あまりにとろけきっている玲央をみてこいしも我慢ができなくなってきたようだ。
「2尾開放」
妖力を極力落として尻尾をもう一本開放する。
「尻尾が増えた!?え、狐!?」
「狐じゃないぞ。まぁ、気にスンナ。気にしていると玲央に取られるぞ?」
既に触られることに抵抗は無いのでお好きにどうぞ。こいしは恐る恐るといった感じで尻尾に触る。
「うわ、うわ、凄い!うちの子もやわらかいと思ったけど全然違う!」
「ふふ、そうでしょう」
何故か俺ではなくて玲央がどや顔で答える。
「家のまでなにをやっているんですか」
「「「あ」」」
しばらく適当に触らせていたら突如扉が開き中から玲央と同じピンクの髪の少女が呆れながら言ってきたのであった。
久々にやった尻尾ネタ。




