あいさつ回り―地底5
「それにしても、お前らがここにいるとは思ってなかったぞ」
「それはこっちの台詞だよー」
宴会二日目。昨日仲良くなった鵺に起きたら気に入ったから面白いやつを紹介してやると言われて付いていってみるとそこにあったのは空とぶ船であった。
非常に興味がそそられ、鵺を残して船へと突撃したらそこにいたのはかつてあった村紗たちであった。
「雲山も元気そうだし、雲……雲……雲なんとかも元気そうだな」
「なんで雲山の名前が出て私の名前が出ないのよ!!」
吠えてくる雲なんとか……雲山のインパクトが強すぎてこいつの名前をわすれちまうんだよなぁ。
「それに、小傘まで一緒にいるとはな」
「わっちもあの時、あの場所にいてそれで……」
「なるほどね」
小傘はこいつらと一緒にいたわけじゃないだろうが、あそこがカチコミ食らったときにいたんだろうな。
あそこはなんだかんだで妖怪にとっちゃ過ごしやすい場所だっただろうし。
「てか、小傘とかの名前わかるんだったら私の名前もわかるでしょうが!わざとやってるでしょ!」
「あんまり騒ぐなよ、酒がまずくなるだろ雲居」
「あ、はい……って、そうじゃなくてやっぱりわかってるじゃない!」
半分くらいはわざとやっているからな。
「そういや、アンタは今までなにやってたんだ?」
酒を呑みながら村紗が尋ねてきた。
「う~ん、相変わらずあちこち旅してたからなぁ」
そもそも、こいつらと会ったのが何年前だ?500年以上前のような気がするけど。
「そういや、寅丸だったか?あの、毘沙門天の弟子はどうしたよ」
「寅丸とナズーリンは封印されなかったんだよ。なんだかんだで神様の弟子だからね」
「なるほどね」
流石に神様の弟子まで封印するまでには至らなかったのか、それとも恐れ多かったのかは微妙な線だな。
「聖は?」
「聖は……」
どうしたんだ?聖について聞いたら全員くらい顔をしだしたぞ。確か元々こいつらが封印されたのって聖が妖怪を匿っていてそれの巻き添えみたいな感じだったろ?
「聖はここより更に深い場所……魔界ってところに封印されているんだ」
魔界とか……何でもありだな本当に。いやまぁ、地獄があったり何があったりで今更だが。
「あんた、魔界とかの行きかた知らない?」
「流石にしらないなぁ。俺自身は地上にずっといたし」
雲居の質問に素直に返す。そんなところの行きかた知っていたらとっくに行っているわ。
「そういや、あの船は村紗のか?」
「そだよー。伊達に船長じゃないよ」
まぁ、逆に他のやつのだったら似合わないことないがな。
「それにしてもお酒に強いわね。あんた昨日から飲んでいるんでしょ?」
「飲んでも飲まれるなってね。酒じゃあいにく酔ったことはないな」
逆に言えば、酔えない。まぁ、酔うからこそ酒だっていうのを前に誰かに言われて思わずなるほどと思ってしまったが。
「そんで、お前らはずっとここに?」
「聖や寅丸がいないからね。地上に出ても意味がないし、今更人間にあれこれってのもね」
俺の質問に村紗が答える。たしかにこいつらにとっちゃどうでもいいか。
「昔からよく分からない奴だったけど、鬼神と仲がいいって何よ」
「どいつもこいつも言って来るがそんなに変か?」
玲央と仲がいいって言うだけで回りはわりと引いたり信じられないと言った表情をするんだよなぁ。
「いい?鬼神はその名のとおり鬼にして神よ?更には強さにおいては他の追随を許さないと言われているわ」
「まぁ、玲央の力は凄まじいからな」
主に物理的とつくが。あいつは遠距離戦なんてちまちましているのは嫌いだし苦手だ。妖術なんてほとんど使えなかったんじゃなかったか?
「彼女の力はまさに天も地も砕くと言われ、更には他の妖怪からしても彼女は畏怖の対象よ」
「ふむ」
「彼女にあったら死を思えって言われているし、気に入られなければそれこそチリも残さずに消されるとも」
「噂の一人歩きしてないか?」
あいつってよっぽどじゃなければ自分から手を出さんぞ。俺相手だと遠慮なく手を出してくるが……特別扱いすぎて涙がでるね。
「兎に角!人にも妖怪にも恐れられているような鬼神に気に入られているってだけで正気の沙汰を疑うわよ」
「酷い言われ方だ。あいつと喋ればそんなの払拭されるぞ」
「怖くてできないわよ!」
雲居の言葉に同意なのか村紗たちも頷いている。
まぁ、恐怖の象徴として祭られてもいるからいいのかね。本人も気にしないだろうし。
兎にも角にも懐かしい奴とあった酒は中々に美味かった。願うことなら今度は聖も一緒に飲みたいねぇ。




