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東方転犬録  作者: レティウス
幻想郷生活篇
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あいさつ回り―地底4

「うひゃひゃひゃ!」


 明らかに女という事実を捨て去ったような笑い方に引きつつも、鬼とは違った妖怪に興味のほうが勝り近づいていく。


「よぉ、隣いいか」


「いいじゃん、いいじゃん。席なんてあってないもんだし!うひゃひゃ!」


 何がそんなに楽しいのか笑いながら同席するのを許可してくれた。


「ん~?あんたここじゃ見ない顔だね」


「地上から来たから」


「ふ~ん。何?アンタも封印されたの?」


「いや、玲央……鬼神に御呼ばれしたからな」


 場に酔っているのか、俺と話しているときはあまり酔っている感じはしないな……酒臭いけど。


「あー!あんたが、鬼神のお気に入りか!まっさか、女だったとは」


「信じられんだろうが、俺は男だよ」


「うっそだ~」


「ま、信じないならそれでいいさ。それよりも呑もう」


「いよっしゃー!」


 酒の席でつまらん論争など論題だ。宴会の席は美味い酒をのみ、美味い飯をくい、楽しく喋るだけだ!


 月見酒やしっとりしているときは別だがな。


「ちっくしょー、頼政の奴めー!」


 酒を呑んでいると突如となりの少女が叫びだす。頼政とな?誰だったっけなぁ…


「そういや、お前さんの名前は?」


「ん?言ってなかったっけ?あたしの名前は封獣ぬえ!かつて都を騒がした鵺様とは私のことだ!」


 薄い胸を張りながら自己紹介してくるぬえという少女。しかも鵺とな?


「そうすると頼政って源頼政?」


「そうさ!ちょっと、天皇とか町の奴らを驚かせていただけなのにさ、あたしを退治しようとしやがって」


 ぶつぶつと文句を言うぬえ。ううむ、事実は小説より奇なりとはよく言ったもんだ。こんな少女が世間を騒がせていたとは。


「しかし、その姿でどうやって驚かせるんだ?」


 気になったので素直に尋ねてみる。


「なに?知りたい?知りたいの?」


 どや顔で言って来る。普段ならうざがるが、面白そうなので頷く。


「ふははは!だったら見せてあげるよ!」


 机の上にのって手を腰にあてるぬえ。回りもぬえが何かをやるのだろうと見物客が増えている。


「どうだ!」


 周りがなにやらひぃ!とかうわぁっ!とか騒いでいるが何をしているんだ?


「何しているんだ?」


「あ、あれ?あんた、なんで驚かないんだ?」


「何かやっているのか?」


 お互いに首を傾ける。


「おっかしいなぁ…あたしの能力の【正体を判らなくする程度の能力】がキチンと発動しているのは周りを見ても分かるし……」


「ああ、干渉系の能力か」


 ぬえの言葉に納得がいった。普段の俺は相手からの干渉を一切合財全てをシャットアウトするために能力で自分を被い、他人からの能力を効かなくしている。


 だから、ぬえの力が及ばずにそのまんまの格好だったというわけだ。ちなみに、紫がなにか俺を調べようとしているが、出来てないっぽいから俺の能力のが上と思われる。


「能力解除」


 殆ど無意識的に能力で被っているので、言葉にしないとキチンと解除できないので口にし能力を解除するとぬえの姿はどこにもなく、変な生物が目の前にいた。


「へぇ、色々と鵺のうわさは聞いていたがこんな格好だったのか」


「あ、能力効いた。効きにくい体質なんてあったかなぁ……」


 ぬえがまたぶつぶつと言っている。まぁ、あるんじゃないか?俺の場合は能力だけど。


「これなら人間が怖がるのも分かるな」


「でっしょー!もう、人間達が驚く顔が楽しくて楽しくて!」


 けらけらと笑いながら酒をあおるぬえ。まぁ、そんな能力なら確かに脅かすのは面白いな。


「そしたらさー、頼政やつが何か天皇たちに頼まれてやってきたんだよねー。あたしってそこそこに強いことは強いけど、あんな化け物に勝てるかってんだ!」


 机を叩きながら酒をあおるぬえ。そういや、源って名前がつくやつらってどいつもこいつも人外だったっけ?


 昔あった牛若丸とかも、鞍馬ちゃんあいてにいい感じで打ち合っていたし……今度鞍馬ちゃんに会いに行ってみるかな。


「そういや、あんたの名前は?」


 ふと、物思いに思っているとぬえが聞いてきた。そういや、こいつにさせて俺はしてなかったな。


「俺は風由真理。ちょっと長生きしている犬妖怪さ」


「ふ~ん」


「因みにお前さんの噂は聞いていたんだが、時間が合わずに見に行けなかったんだよなー」


「人を見せもんみたいに言うな!」


 仕方ないだろ。俺にとっちゃ大半のやつは見せもん扱いだよ。まぁ、基本的に気に入ったりするからなんかしてやったりすることが多いけど。


 甘くも無く辛くもないといったかんじか?


 気に入った奴にはとことん甘いらしいが。


「まぁいいや!呑もうよ!」


「とことん付き合ってやる」


 こうして、一日目(・・・)の宴会は無事に終了した。

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